Super Lemon Haze

木口裕次郎

合法じゃなくて脱法です。ちまちま書きます

「I'am Angel」

 「私は天使です」
端正な顔立ちで髪は肩にかかるかかからないか、胸はあまりない。
 「私は大天使ガブリエル様の使いの天使です」
どちらかというと胸は大きい方がいい、髪型もショートカットの方が好きだ、うなじが見えるくらいのね。
 「大天使ガブリエル様の使いで今日はこちらに参りました、あなた様を混沌とした闇から助けよ、との命です」
好みじゃないんだけど、据え膳を食わねば男が廃る。
 「あの、私の体になにかついていらっしゃいますでしょうか」
 「いや別に、で、なんだっけ、こんな早朝にデリヘル頼んだ覚えはないんですけど」
 「大天使ガブリエル様の――」
 「ああ、はいはい、家間違えちゃったんですね、お店の番号は? 今度指名してあげるから今日は帰ってもらえます?」
据え膳に毒が盛られている場合は喰らわなくても男は廃らないだろう。
 「デリヘル? とはなんですか、お店からきたのではありません、大天使ガブ」
 「あー、わかったから、もうお家に帰ってください」
 「そういうわけにはいきません、あなた様をお救いになれとガブリエル様に……」
いつもはドアの鍵なんて掛けないのだが、今日は特別にドアチェーンも掛ける。睡眠を妨害されたら面倒なのでインターホンも電源を引っこ抜いておく、完璧だ。
時計を見ると、まだ針は3と4の間を指していた。
女じゃなかったら二、三発ぶん殴ってやったんだが、中途半端に覚醒してしまったもんだ、から先日届いたハーブでも試してみようか。
 
 部屋がオレンジ色に染まっている。時計の針は3と4の間を指していた。ちょうど12時間、机の上には細かい葉っぱとアルミホイルが散らばっていた。
 無性に喉が渇いていた、冷蔵庫の中身は練りワサビと何時買ったかわからない卵だけだ。
「コンビニ、行くか」
年季の入った便所サンダルをつっかけて、三重の封印を解く、が、ドアは開かない。
厳密にいうと少しは開くのだがドアの前になにか重たいものがつっかえている。
 「勘弁してくれよ……」
体重をかけてドアを押しのけ、つっかえている『それ』を見据えた。
 「おはようございます」
 「はぁ……、おはようございます」

 「コンビニに行きますけど、ついてきます?」
 「是非ともおお供させていただきます」
背後から後方30センチの間隔を保ちつつ、ついてくる彼女はいったい何者なのだろうか。
天使だとかなんとか言ってたような気がするが、遂に葉っぱのやりすぎで現実と幻覚の区別もつかなくなったのだろうか。
 「あのう、コンビニとはなんでしょう?」
 「コンビニはコンビニですけど、強いて説明するならばコンビーニエンスストアーです」
 「こんびーにえんすすとあーですか」
 「そうです、コンビーニエンスストアーです」
発音に注意をしなくてはいけませんね、ビじゃなくてヴィですね。
 徒歩5分でコンビニがある立地条件だけは、あのボロアパートの利点だ。
ひとまず飲み物コーナーの前に突っ立たのだがさてどれにしたものか。
なし水の気分でもあるが、炭酸を飲みたい様な気がする。
 「あ、なにか飲みます?」
 「よいのですか?」
 「ええ、どうぞお好きなのを」
彼女はホットコーヒーを籠にそっと置いた。

 「熱くないんですか?」
 「とてもおいしいですよ」
 「さいですか」
どうやら彼女はこの真夏の中でもホットコーヒーをおいしく飲める奇特な人種のようだ。
そういえば天使だったか。

Super Lemon Haze

Super Lemon Haze

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-21

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  1. 「I'am Angel」
  2. 2