恋と傷

恋と傷

傷つきあう青春


これはどこにでもいる普通の学校生活を送っていた普通の人間の一つの恋の話。本作の主人公の名前は上山宗祐(かみやま そうすけ)周りからはそうちゃんと呼ばれている。身長は165cmと小さめのたくましい青年。そして彼の友達の名前は福島雄司(ふくしま ゆうじ)通称ゆうちゃん。身長は170cmの細身の青年。彼ら二人は見た目は真逆だけど、似た者同士。

話は唐突。それはとある夏の日のから始まる。いつものように学校も終わり、二人は遊ぶ。
「ゆうちゃんゆうちゃん。今日も暇でしょ?明日から夏休みになるし、家にきて泊まりでゲームして遊ぼうぜ~!!」
「いいねいいね~!今日は暇だったし、丁度良かったわ。またモンハンでもする?」
何気ないいつもと同じやり取り。でも今日は違った。
「あ、そうちゃん今日も福島君と遊ぶんだよね?あのさ、あたしも一緒に遊んじゃダメ?」一人の女性が声をかけてきたのだ。彼女の名前は小谷奈美(こたに なみ)。身長は174cmのスタイルのいい女性。二人とはただのクラスメイトであんまり話したことも無かったし、一緒に遊んだことなど一度も無かった。この時までは。
宗祐と雄司の高校は男子校だったため、彼女なんて一度も出来たことも無いし、そもそも女性との関わりも中学を卒業して以降ほとんど無かった。話しかけられた宗祐はただ自分たちと一緒に遊びたいだけならいいと思っていたし、家に来らもしかするとキスとか出来るかもと、そんな理由でOKしてしまった。
「普通に遊びにきなよ。人数は多い方がいいし、三人で一緒に出来るゲームもあるしさ。」
この遊びが原因でこの先三人の関係に修復不可能な傷が出来る事も知らずに.....。

この遊びは宗祐の思い通りの結果となった。お酒も入り深夜テンションもあって三人でゲームをやって罰ゲームという形ではあったが、宗祐も雄司も奈美とキスをすることになる。二人共ファーストキスだったため恥ずかしながらも嬉しがっていた。
そしてこの遊びがきっかけでよく三人で買い物に行ったり、家でゲームをして泊まって次の日に帰る生活が常になってきていた。そんな中宗祐の心には奈美に対する淡い恋心を抱くようになる。
しかし、それは雄司も同じであった。二人は奈美に恋をしてしまったのだ。これがキッカケで楽しかった日常に少しずつ、確実に溝が出来始めた。
三人で遊ぶ時はいいものの、奈美がどちらかの家に二人だけで泊まったりすれば嫉妬して悪口を言って互を傷つけ合ってしまうことが多くなった。まるでどちらが奈美と付き合えるのか勝負しているかのようだった。奈美の気持ちも知らないで。
それからしばらくして宗祐はある変化に気づく。自分に対する奈美の態度が少しおかしい。
自分と二人で遊ぶことも減ったし、雄司と一緒にいるときの方が楽しそうでもあり、幸せそうだった。
奈美は雄司に恋していたのである。宗祐はその事実に気づいてしまったのだ。
でも奈美を思う気持ちは止まらなかった。どうやったら雄司に勝てるのか。どうやったら振り向いてくれるのか。そんなことばかり考えていた。思いついたことは全てやってみた。でも結果は変わらない。何をやっても変わることは無かった。そして悩んだ末に宗祐は自分の気持ちを伝えれば何かが変わるかもしれない。もしかすると振り向いてくれるかもしれないと。明日呼び出して遊んだ後に告白しようと決意したのである。
次の日その告白の返事は思いもよらない形でかえって来ることになる。
その日宗祐はぎこちなかった。奈美から何を言われてもちゃんと受け答え出来ず、いつもは得意なゲームも凡ミスばかりで心配されたりもした。夜、いよいよ帰るとなった時に宗祐は意を決して告げる。
「あのさ、話があるんだけどいいかな?」
「なに?なに?お姉さんになんでも話してごらん?」
「あ、あの...俺さ、三人で遊ぶときは楽しい。でも、奈美といるときの方がもっと楽しい。俺じゃダメかな?雄司じゃなくて、奈美の側にいるのって俺じゃダメかな?だからさ...えっと...俺奈美の事が大好きです!俺と付き合ってください!」
勇気を出した初めての告白。返事は残酷なものだった。
「私ね、雄司の事が好きなの。そうちゃんは確かにいい人だし友達だけど、それだけ。あのね、私ずっと黙ってたんだけど、あの日そうちゃんに一緒に遊びたいって言ったのは実は雄司に近づくためだったの。」
宗祐は唖然とする。
「......。つまりそれって......」
「そう。利用させてもらったの。雄司と二人は緊張するからね。ごめんねそうちゃん。初めはそうちゃんのこと邪魔だと思ってたけど、今ではいい友達だと思ってるから。あ、もう終電来ちゃうから帰るね。バイバイ。」
そう言って奈美は帰っていった。宗祐はその場に膝をついて崩れた。絶望だった。あれだけ楽しそうに遊んでいたのも、今までのことも全ては雄司と仲良くなるために自分が利用されていたことに。
宗祐は泣いた。声を上げて泣いた。声が枯れるまで泣いて彼は思った。こんな自分のことしか考えず、人を当然のように利用する奴と雄司を付き合わせてはいけないと。彼に真実を伝えようと。
次の日宗祐と雄司は駅近くのカフェにいた。宗祐は目を腫らし掠れた声で全てを伝えて
「あんな奴とは絶対付き合わない方がいい。フラレたから言ってるんじゃなくて、お前の事を思って言ってるんだ。お前は大切な親友だから。」と言った。
雄司は「ああ。わかった。お前の事だから嘘じゃ無いことはわかってるし、その忠告は受け取っておくよ」と言いつつも、恋の病は怖いもので内心(フラレたからって嘘付いてんのかな?)と思っていた。全てを伝え納得してくれた事を確認した宗祐は安心したのか急に寒気と疲労感が襲ってきて、雄司と別れ家に着くなり眠ってしまった。それから一週間風邪をひいて寝込んでしまった。
ようやく風邪も治り夏休みも後一日を残すところとなった。そんな日の朝、彼は携帯の着信音に起こされる。宛名を確認すると雄司からであった。メールの内容はこうだった。
『宗祐風邪大丈夫か?心配してるぞ。実はお前に言わなきゃいけないことがあるんだ。.........俺さ、やっぱ奈美と付き合うことにしたわ。お前からの忠告もあって悩んだけど、やっぱ気持ち変わらなかった。ごめんな。』
宗祐は唖然とした。あの時は付き合わないって言ったのに。あの最低な女の彼氏にはならないって言ってくれたのに.......。
彼は雄司に電話をかけた。
「雄司。お前本気で付き合うのか?」
「ああ。奈美と付き合うさ。」
「じゃあもしお前がその女と付き合うならお前との縁を切るって言っても、それでも付き合うのか?」
「....。お前と縁を切るのは確かに辛い。でも、折角両思いになれたんだ。初めての彼女なんだ。お前も大事だけど、俺は奈美をとる。」
「............。そうかわかった。まさかお前とこんな形で縁切りするとは思ってなかったよ.....。さよならだな。もうお前と話すことも会うこともないだろう。」
「本気で縁を切るんだな....。わかった。今までありがとな。お前と友達でよかったと思ってるよ。.....さよなら.......。」
「ああ。こちらこそ今までありがとな。サヨナラ.....。」
宗祐は電話を切ると、アドレス帳から雄司を削除した.......。

夏休みも開けて雄司は学校に行っていた。いつもと同じ学校。隣には奈美がいる。奈美がいれば幸せなはずだった。でも素直に幸せにはなれなかった。彼の隣には親友の姿は無かった。
あれから電話もメールも繋がらないし、家に行っても引っ越した後で、さらに担任から宗祐は学校を辞めたと聞かされた。大切なものは失ってから気づく。しかし気づいてからでは遅かった。彼も心に深い傷を負ってしまった.......。

あの日宗祐は学校に退学届けを出し、携帯も新しくして、引越しをしていた。
今彼はアルバイトで生活をしていた。そんな中、彼の元に知らせが届く。付き合って一ヶ月した頃に、奈美は雄司の友達と付き合ったと言う。雄司は利用されてしまったのだ。彼は初めて同じ痛みを味わった。そしてもう一度宗祐と友達に戻りたいと言っていると。
その連絡を受けても宗祐は友達に戻ることは無かった。彼の心はボロボロだった。利用される事の辛さ、信じていた人に、好きな人に裏切られた痛みを知った彼は、もう二度と恋することも友達を作ることもないだろう........。

こうして宗祐の恋は幕を下ろす。一生消えない傷を、二度と癒える事のない傷を負ったまま.....。

恋と傷

はじめまして。これは最近私の周りで起きたことと、その時に感じた気持ちを元に作りました。私は別にこんな別れ方を経験したことなんかありません。今自分自身が経験している人生のifの話を書きました。仮にパラレルワールドが存在したら、もしかするとこんなふうになっていたのでは?と妄想しながら(笑)最後まで読んでくださってありがとうございました。

恋と傷

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-21

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