リバースゲーム#4
#4 リクア遺跡 そこにある戦人≪イクサビト≫
一人の男が静かに目を開けた時、男の眼は獣の眼をしているがとても穏和な者で、大剣を背負い右腕には腕輪を二つ着けている彼は獣人の様だ。そんな彼の見ている瞳には遠くの街が見えている。
「…、《00―Ⅰ》?」男は一人の少女が遠くからやってくるのを見るとその《00―Ⅰ》という少女の姿は蒼く長い髪に白い肌の様だ。少女は手を振る。
「《ファムクス》お帰り!」ファムクスに声を掛ける。
「ああ。ただいま。《アラルス》は、まだ廃墟の病院にでも籠っているのか?」そう聞かれると。00―Ⅰは頷き答える。
「うん。《何かのデータ》があーこうだどうの言ってファムクスが遠征行っている間ね、大騒ぎしていたよ。」ファムクスはようやく気持ちが落ち着き00―Ⅰと共に歩く。
「それは、《アラルス》も大変だな。そのデータ、何のデータか《アラルス》は何か言っていたか?」ゼインは問われたが首を振り答える。
「解らない…。あ、ねえ、ねえファムクス、《アラルス》に会ったら、一緒に遊ぼうよ。」ファムクスと手をつなぎ00―Ⅰは口を開くのだった。
「ああ。ま、どうせ、《アラルス》にお前の相手を頼まれそうだし。」そんなやり取りをしながら《アラルス》と言う人物のいるところに向かうのだった。そして辿り着いた場所、そこは廃墟の建物が立ち並ぶ二人は更に奥の方へ進む。とその道中。
「あ、《アラルス》!!ただいまー。ファムクス帰ってきたよ。」急にファムクスから《アラルス》のもとへと走って行く。そんな00―Ⅰについて行くファムクスなのであった。その《アラルス》という人物は長い黒髪の美しく緑色の透き通った瞳をしている女性。
「00―Ⅰにファムクスお帰り。」アラルスがそう言った後で00―Ⅰがアラルスを見上げて口を開く。
「アラルス、コンピュータの方は?」と。アラルスは少し微笑を浮かべる。
「正直、まだだよ。」そう答えるアラルス。
「えー。まだなの?」00―Ⅰは少し残念という表情をするとアラルスは00―Ⅰを抱き上げて口を開く。
「済まないな。思う以上に、長いものの様なのだ。」と。
「その代り、ファムクスと遊んでくる。ファムクス、早くー。」そう言いファムクスをせかす。アラルスは申し訳なさそうな顔をして口を開く。
「済まないな…。ずっとあの子は一人で何とかしてきた。お前も、ずっと戦場に出ていたのだ。ファムクス遊んでやってくれないか?」と。ファムクスは頷き答える。
「ああ、そう来ると思ったよ。戦場に行っていたのと同じくらい00―Ⅰの相手をするよ。アラルスも《何か》をいつもやっているけれど、たまには休めよ。」そう言い残し00―Ⅰの方へ向かおうとしたとき。
「ファムクス早く!」そう言われ、ファムクスは走って行くのだった。そしてファムクス達が行った後、アラルスは奇妙な気配に気づいたのか口を開く。
「立ち聞きとはあまり感心しないな。《セカンド》。」そうセカンドと呼ばれた者は姿を現すのだった。セカンドは笑いながら答える。
「そう硬いこと言うなよ。今日も戦場から無事帰還…か。あのお嬢ちゃんはどうだ、その後は?」セカンドに問いかけられアラルスは、少し尺に来たのか眼が少々座っている。セカンドは思うのだった。
― ……や、ヤバ…、言っちゃまずかったかな…。 ―と内心そうは思ったが、アラルスは口を開く。
「…、その後は無い。あれは、《余計なものを入れ過ぎた》と思っていてもいい。」とアラルスはコンピュータを動かし、答えるのだった。
「…、《余計なものを入れ過ぎた》…か。全く、《愛玩用だった》筈なのに何の気まぐれ、か…。そうは思わないけど、俺は。」
「…。」アラルスはその後黙ったまま作業をするのだった。セカンドは更に口を開く。
「最近、この《リクア帝国》内で、行方不明者が出ているらしい。」その時、アラルスは作業を止め、セカンドの情報に驚く。
「…、あ、《あの夢の通り》…だ。」アラルスがそう呟いた途端セカンドはその言葉に不審に思うのだった。とアラルスはその廃墟の病院を出ようするのをセカンドは呼び止める。
「おい、アラルス何処行くつもりだ?」セカンドはそんなアラルスに問いかけると、アラルスはほんの少し間を置き答える。
「軍の施設へ行ってくる…。」
「ちょっと待て、まさか、《最高情報責任者》に会いに行く気か!?」問われアラルスは静かに首を縦に振るのだった。そしてアラルスは走って行ってしまう。その一方、そのアラルス達の言う《最高情報責任者》のいる軍内部では忙しそうに働く者達は、一人の男を中心に働いている様子。
「この資料と報告書保管しておいてくれ。この資料は上層にまわしてくれ。」その男は、部下に指示を出すと、少々考えている様子なのだった。その中の部下の一人が口を開く。
「…、クリスト殿、やはり、《例の件》ですか?」そのクリストは頷く。
「ああ。これで五十件目、か…。」その時、クリストが窓の外を見るとある人物に気が付くのだった。その窓の外にいた者とは、その姿は、女性でそのなびく長い黒髪に透き通った緑の瞳は真っ直ぐクリストのいる階を見上げている。クリストにとってはとても面倒なことになったと思うと何か脅迫されそうな気もするのだった。席を立つと少し急ぎ足でそこへと向かうのだった。そして下の階まで到着、少々嫌な予感を感じるのだった。
「ここは、相応しくない…、私に着いてこい。」そう言いアラルスは行ってしまうのだった。クリストはしぶしぶついて行くことに。やがて森の中へと入って行くとアラルスは急に止まってしまう。
「一体何なのだ?」クリストはアラルスに尋ねるのだった。アラルスは一息つき口を開く。
「…、最近、この《リクア帝国》で行方不明者が多数いる…。」その台詞にクリストは驚きの表情を見せる。
「な、何故、そのことを?」アラルスは口を開く。
「とある者からの情報でね。その行方不明者が増えている《原因は何か》は軍部内部でも知らないだろう…。」
「貴女は、《その原因》とやらを知っているのか?」アラルスはクリストの台詞からして、《その原因》を知らないと想うとアラルスは口を開き答える。
「おそらく、魔帝の仕業だと考えられる。」とアラルスは答える。
「では、その魔帝がリクアの民を連れ去りどうするのだ、一体誰が?」そう言ったアラルスに疑問に感じ、問い掛けるのだった。
「大死神の命令でそこの研究員が実験や、兵器の開発をするため…。大死神は《究極の兵器》を造ろうとしている。」クリストはそのアラルスの言う台詞に何故わかるのか、半信半疑に思うのだった。
「…、貴女の申されていることは本当のことである、と信じていいのか…。貴女は一体何者なのかが解らぬ今、貴女を信じるわけにはいきません。」
「……。いいでしょう…、私が何者なのか…。貴方も疑問に感じていた筈です。……御話致しましょう。…、あれは数か月前のこと、私は魔帝にいました。」アラルスは、間を置きつつも話すのだった。
「!!」クリストは、そのアラルスの台詞に驚く表情を見せつつも冷静に対応すると、更にアラルスは口を開く。
「…、《実兄》の《エーシル》は他の国を破壊し、支配していった。私は《兄》と共に破壊し、侵略をも繰り返した、私はやがてそれを《恐れ》と感じた。私は魔帝国から逃げ出した。私は追手と交戦しつつ、逃走。やがて力尽き、今現在、この《リクア帝国》に逃げてきたのです。」クリストは頷きアラルスの方へ顔を向けて口を開く。
「解りました…、貴女は元、魔帝の者とお見受けしてもよろしいという、ことか…。」
「はい…。私は、魔帝で多くの犠牲を出し、研究と開発を繰り返してきた、兄が怖かったから…。」そう恐れた表情をし、話すのだった。クリストはふと頷き口を開く。
「貴女が何者であるか、理解できました。」クリストは納得がいったのかそう答えるとアラルスは後ろを向くと静かに目をつむる。アラルスはふと気配を感じると、再びクリストの方向き。
「…、何者だ…?」アラルスにそう言われた者は樹木の間から静かに人影が浮かび上がり出てきたのは、一人の女性だった。
「アラルス、私よ。」その女性はアラルスを知っている様子で答えるとアラルスは少し安心し、口を開くのだった。
「シスター=クレナティア、久しぶりだな…、私が魔帝国にいたときの仲間だ。」そう言い少しだけ嬉しく思いクリストに言うのだった。
「貴女は、この森の教会に居たシスターか…、アラルスのお知り合いでしたか…。」そう言いクリストもクレナティアのことを知っているのか気軽に話かけれていたのだった。
「クリストさん、お仕事ご苦労様です。アラルス、また貴女の悪い癖ね。こんなに長い時間、お仕事の時間を割いてはいけませんよ。」そう言い、アラルスを叱るのだった。アラルスは、何となく。
「ご、御免なさい…。」と言ってしまうアラルスなのだった。
「いえ、御構い無く。これもまた情報収集という仕事ですから。」クリストはそのわきで答えるのだった。クレナティアは本当に申し訳ないように一礼するのだった。
「…って、私の《お母さん》か!?」とアラルスはそうクレナティアに突っ込むのだった。クレナティアはそれにもお構いなし。
「お話はクリストさんだけでは無いのでしょう?」クレナティアの言った台詞にアラルスはそのことを思い出すのだった。
「あぁ!そうだった、その為にクレナティアを呼んだんだった。」ふとアラルスは何やら思い出し急に声を上げると自分のポケットから何かを取り出すとクレナティアに差し出すのだった。
「忙しいのに御免なさい、アラルス。」クレナティアにアラルスが渡した物、それはカードが一枚とメモリー端子が一つ。クレナティアはそれらを受け取る。
「日は沢山あるのだからこれぐらいは平気だ。」そのアラルスがクレナティアに渡したものを見てクリストは何やら気になりだし、そして思わず。
「失礼ですが、それらは?」クリストは問う。
「これは、教会のデータです。これを、シスター=サナラに私は、友人にこういうことが得意な人がいると話したところ。シスター=サナラに頼まれたのです。」クレナティアは答えるのだった。
「全く…。余計なことを言ってくれたものだ…。」呆れながらもアラルスは口を開くのだった。クレナティアは微笑む。
「それでは、これから《集会》がありますので、これで失礼いたします。それでは、アラルス、またお会いできると良いですね。それではクリストさんも。」そう言いクレナティアは別れを告げるのだった。クリストにアラルスは話を続ける。
「今でも魔帝の偵察者や、敵兵がこの帝国に潜入している。そのうち、お前やファムクスにまで襲撃されるでしょう。」そう言い告げたアラルス、クリストはその話の内容を整理してみるのだった。
「…。では、貴女の知りたいことを御教え致しましょう…。私はこれまでの事実や事件の情報、これはおそらく、貴女の言うとおり、魔帝の仕業と噂がたっております。」アラルスは、やはり、自分が予感していたことが的中したことを認識するアラルス。
「…、やはり、私がこの最近で、感じていた《嫌な予感》、そのしつこい理由が解りました…。この情報を、何故外部に提供したのです?」アラルスは、クリストに問うとクリストは口を開くのだった。
「この《リクア帝国》の民のため…、人々の混乱を回避するため。そして、不安を与えぬように…、軍部と帝国の決めたことなのですよ。そろそろ、仕事に戻らせてはくれませんかな?」と答え、今度はアラルスへと問い返すのだった。
「…、はい、構いません。感謝いたします。」そう言い残し、アラルスはその場を去って行くのだった。その一方では、ファムクスと00―Ⅰの姿があった。00―Ⅰはとても楽しそうに歩く、ファムクスもその姿を見ると、今まであった緊張感がほぐれていたのだった。00―Ⅰは歩きながらふとファムクスの方を向き言うのだった。
「ねえねえ、ファムクスこの先のお店に寄っていい?」と00―Ⅰの指した先はファムクスがこの《リクア帝国》の場所を知っているのだった。
「ここ、路地裏だぞ?」と、00―Ⅰはその路地裏へと続く道に入ろうとしつつも振り返るのだった。
「ファムクス、早く、早く!」と口を開き呼びかける。そしてさっと行ってしまう。ファムクスは00―Ⅰを追いかけるのだった。ファムクスにはこの先の路地裏が《どういう場所なのか》知っているのだった。
「おい、00―Ⅰその先は、ゴロツキの縄張りだぞ。」そう言いながら00―Ⅰを呼ぶのだった。それでも00―Ⅰはお構いなしに進んでいく。
「平気だよ。毎日ここを通ったけれど、そんな人たちは見なかったよ。大丈夫だよ。」と言う00―Ⅰは先を進んでいくのだった。その後、路地裏へと出る二人。前にいた00―Ⅰは、珍しい光景を目のあたりにするのだった。そこはゴロツキらしき者らの巣窟だった。そして、その者らは00―Ⅰがそれをそのまま進もうとしたが一人の者が行く手を阻む。
「退いてくれませんか?」00―Ⅰはその者達に問う。
「ここは、俺たちの縄張りだよ、お嬢ちゃんが通れる場所じゃないのだけれどなぁ?」とその者は00―Ⅰに答える。ファムクスは冷静にそこへ入るのだった。
「お前達、ここはお前らの道じゃねえんだよ。皆の道なんだよ!!」ゴロツキ達はファムクスの周りを囲む。
「なんだぁ、軍人さんよう!?」ゴロツキは反抗するとファムクスは冷静に口を開く。
「全く、女の子一人に突っかかるな。」そう言い冷静に答えると。突然ゴロツキ達はナイフらしき武器を取る。ファムクスはその背中に背負っている大剣を抜かずに構える。そしてゴロツキの一人は00―Ⅰの様子に気づくと首を傾げ髪を掴む。
「何言ってやがるんだぁ!?」そしてその途端、地面から水が溢れ出すのだった。ゴロツキ達はその水の押す勢いで宙に吹き飛んで行ってしまうのだった。
「《屑共が、図に乗るな。人質にする相手を私にしたのが間違いであったな…。》」その虫の息となったゴロツキ達を踏み台にしてそれらを見ると、00―Ⅰはまるで別人の様にその言葉を発するのだった。その様子を見ていたファムクスはその00―Ⅰを見ると思わず口を開くのだった。
「00―Ⅰ…!?」と声を掛けると00―Ⅰはファムクスの方を向く。
「なあに、ファムクス?」と何事も無かったかの様に答えるのだった。
「アラルスのところへ戻ろうか。」と、声を掛けるのだった。00―Ⅰはつまらないといわんばかりの表情に変えてしまうのだった。
「えー、これから行くのに?」とそう反論をしながら。応えるのだった。ファムクスは、何とか00―Ⅰを説得させてアラルスのところへと向かうことに。
#4 End
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