タイムカプセル

その日、25年ぶりに開いたタイムカプセルには・・・

~ タイムカプセル ~


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 元柔道部の佐久間が深々と掘り進んだ穴奥で、ショベルの先にコツンとぶつかる何かの感触があった。少々土の色の染み付いたそのステンレス製の容器は、僕の記憶にあったものよりも若干小さく感じたものの、全くあの頃のままの状態で、この二十五年の時を地面深くに留めていてくれた。
 早川先生がその容器の蓋を、力を込めて捻り開けると、周囲で見守っていた皆の歓声が一気に沸きあがった。そして事務室から拝借してきていた折りたたみテーブルの上へ、僕等が卒業の少し前に自分たちへ向けて書いた、その手紙の数々が、まるでポテトチップスを白い大皿へと流し落した時のように、無造作にばら撒かれていった。だが、その中に一つだけ、異質なものが混じっていた。そう、その封筒だけは、何故か奇妙なほど分厚く膨らんでいた。そして、その袋のような封筒を掴んだ早川先生が、僕を見て言った。
「斉藤、ほら、これはお前のだ」
 僕はその言葉に驚いた。だが仕方なく、奇妙な気分のままそれを受け取った。不思議な感じだった。僕には全く覚えが無かった。そんな変な物を、この僕がこのタイムカプセルに入れた筈が無い。確かに手紙を書いた覚えはある。その内容も、おぼろげにだが記憶している。だが、こんなもの、僕は決して入れてなどいないと、そう思った。
「あれ?斉藤君の、こっちにもあるわよ」
「あっ、ほんとだ。これも斉藤のだ!あれ~?お前、ずるして二つも入れたのか?あはは、悪い奴だな」
 今日、四半世紀ぶりに再会したばかりの山口と鈴木さんが、まるであの頃の、中学時代と全然変わらない感じで、そう言って笑った。
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 タイムカプセルの掘り出しが終わると、僕等は校舎の二階にある開き教室でささやかな宴会を開いた。缶ビール片手に、皆、昔を懐かしみながらがやがやと語り合っていた。
 無論、自分たちが嘗て書いた手紙を広げ、恥ずかしそうにその内容を披露し合う場面があった。僕も当然のように、自分の手紙の文章を皆の前で朗読した。
「二十五年後の俺へ、お前はきっと、今と変わらず間抜けだろうね。ちゃんと結婚できてるか?失業してないか?多分、俺のことだから、あんまりまともな人生なんか送れていないだろうな。でも、期待なんかしてないから、安心してください!(・・・・・等々)」
 僕が、この文章を読むと、皆がそろって爆笑した。そして、まだそれ程飲んでもいないだろうに、原田の奴は腹を抱えてのた打ち回った。
「あはは、なんだよそれ!お前らしいや、いや、ほんと、ちゃんと当たってる!あははははは!傑作!」
「ばか、お前は笑いすぎだよ」
 僕は、さすがに恥ずかしくなって、現在も度々付き合いのある原田の背中をポンと叩いた。
 ここへ来る前は、きっと退屈な集まりでしかないであろうと思っていた誘いだったが、いざこうして皆に会ってみると、その感触は全然違った。本当に嘘のように、皆が以前のように打ち解けた。楽しかったあの頃の中学時代に僕の心は帰っていた。
 そもそも、僕等は恵まれていたと思う。この早川先生は、本当にいい先生だった。普通中学生というのは非常に情緒不安定な時期であり、先生に対しても大人に対しても反抗的で、何かと問題ばかり起していて、余り楽しい思い出など作りにくいものだ。
 だが、僕等のクラスは校内でも例外的といえるほど、落ち着いていた。それはひとえに、この早川先生のお陰だと今は思う。
 現在は、以前よりも随分と落ち着いて、その趣も少し変わった感じがするが、あの頃の早川先生はいわゆる熱血タイプで、全身全霊を傾けて僕等生徒の一人一人に向き合ってくれていた気がする。そう、このタイムカプセルだって、当時受験を目前として常にピリピリしていた僕等を励ませようと先生が独りで企画したものだった。
 だから、今日の集まりにも、僕が事前に想像していたよりもずっと多くの仲間が参加していた。とはいえ、しかしながら、当然ここに来れたのは男子の方が断然多かった。
 やはり、女性というのは結婚などで地元を離れる率も多いし、連絡が付きにくい人も多くあるのだろう。そう、僕は何故だか馬鹿げているほどに、彼女の姿をこの集まりの中に求めていた。だが当然、そんな姿はありようも無かった。当たり前のことだった。
 しかし、そんなことをぼんやりと思っていたとき、ふと誰かが思い出したように呟いた。
「そういえば、あの、斉藤の変な封筒。あの中身は何だったの?」
「・・・ああ、そっか。まだ確認してなかった」
 僕はそう言って頷き、そして、その奇妙に膨らんだ封筒をポケットから取り出すと、無造作に包の封を開いた。だが、思わず大きく破りすぎてしまい、その袋からバラバラと中身が床にこぼれ落ちていってしまった。ふと皆の視線が、その細かな紙の破片に集中した。
 僕は慌てて、それ等を拾おうとしゃがみ込み、そして、その一つを摘んだ。ふと見ると、それは、絵柄も無く、ただ白いだけのジグソーパズルのピースだった。
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 その後、僕は原田たち数人と駅前の居酒屋で二次会を開き、飲んだくれ、あきれるほど笑い合った。もはや飲みすぎて、ふと気が付けば、明日は平日だというのに妻との約束の時刻を大きく過ぎていた。いや、いつものことではあるが。
 家へ到着すると、頼みもしないのに妻はまだ起きていて、僕への悪態と軽蔑の視線を投げかけた後「楽しかったみたいだね。やっぱり行って正解だったでしょ?」っと、嫌味っぽく言葉を残し、そして、ひとりでさっさと寝室へと向っていった。
 そう、妻が行けと言わなければ、もしかしたら僕は今日の集いには参加していなかったのかもしれない。そう、僕は心のどこかで、あの頃の自分をずっと嫌っていた気がする。どうしてなのか僕は、中学時代の自分を忘れたいという思いをいつも何処かに抱えていたのであった。・・・不思議だが、ずっと今までそうだった。
 僕は着ていた衣類を洗濯籠へ投げ捨てると、そそくさとシャワーの湯を全身に浴び、少し大目のシャンプー液で髪を掻きまわして酒に溺れた脳内を洗浄した。そして浴室を出ると同時に手早く寝巻きを着て、余り髪が乾かぬうちにドライヤーのコードを抜き、とっととダブルベットの布団の中へと己が身を沈めた。
 ただ、眠る前に一言、隣の人に「ありがとう」と呟いた。

 次の日、仕事から帰ると僕は真っ先にそこへ向った。リビングのテーブルだ。そこには先客がいた。ソファーで中二になるひとり息子が携帯型のテレビゲームに夢中だった。
 全然勉強に身の入らない奴である。でもいい。こうしてこの子が僕の側にいて、何の気兼ねなく、ただそうしてくつろいでいてくれる事を、僕は父親として誇らしく思っていた。
 僕は、常にそうだった。何を求めるでもない。幸せとは、きっとこんな何気ない日常にこそあるのだと、そう、不思議なほど実感していた。
 僕は例のジグソーパズルを小さなテーブルの机上に広げた。全てのピースを表に向けて、一つずつ整理するように並べ始めた。よく見ると、その白いだけで全くの無地であると思えていたピースには、何かが描かれていた。黒いマジックペンのようなもので何かのイラストのようなものが書かれているような感じがした。
「あら、あなた、あなに?それ」
 妻が僕の背後から覗き込むようにして呟いた。
「ああ、見ての通り、パズルだよ。昨日のタイムカプセルに入ってたんだ」
「へーっ、あなたも、昔は面白い事してたんだね。うふふ、なんか意外。うふふ、でも、中学生のころのあなたって、どんなだったんのかしら?うふふ」
 彼女はからかうようにそう言いつつ、また忙しそうに何処かへ去って行った。また息子も、少し興味深そうに僕のそのパズルを横目でしばらく眺めてはいたが、結局彼は何も言わなかった。最近のあいつはいつもそうだ。きっとそういうお年頃なのだろう。
 しかし、久しぶりに始めたジグソーパズルは意外に難敵だった。そう、こうしたパズルというのは絵柄が複雑な方が全然楽なのだ。殆ど白いチップばかりだと、どれがどの方向で繋がるのかを見極めるのは骨が折れる。なにせ無地でしかないものは、とにかく実際に合わせてみなければ何も分からないのだから。
 ということで僕はまず、そのマジックで書かれた線を頼ることにした。線と線の繋がりを推理して合わさりそうなピースを選んでいった。そして、そうした作業がその後延々と続いた。当然時間は、あっという間に過ぎていった。
 だが、いつまで経ってもパズルは完成に近づかなかった。家族の奇妙な物でも見るかのような視線だけが、僕の背中で光っていた。
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 あの日から、そのジグソーパズルは僕の日課になった。そして独り黙ってパズルに熱中する時間が、いつしかとても楽しみになっていた。そうなのだ。それは不思議と心安らぐ時間であった。しかし、妻の方は余り気を良くしていないようだ。この頃、徐々にいつものグチにトゲが多くなってきた気がする。
 ・・・いや、しかし良いだろう。もう、数日あればこのパズルも完成する筈だ。これが終わったら、また外食にでも行って、ご機嫌とりをすればいい。そう、いつものことだ。
 しかし不思議である。このパズルをしていると、僕は何故か彼女のことを思い出す。そう、それは僕が中学時代にずっと好きだった女の子のことだ。
 しかし、結局彼女には最後まで自分の想いを告げられづ、特に何も無かった単なる片思いの相手でしかなかった。たが、それでも何故か僕にとっては、彼女こそが自分の本物の初恋の人であったとの気持ちがあった。まあ、中学生のころの恋心など、皆そんなものなのかもしれないが。
 しかし、彼女はクラスでは少々特殊な存在だった。そう、余り教室に居なかったのだ。とはいえ、別に登校拒否をしていたわけではない。ただ単に身体が何処か悪かったらしい。折角朝から登校出来ても、殆どの時間保健室にいるなんて日もあったようだ。
 だが、そんな状況にあっても、彼女を悪く言うクラスメートは殆どいなかった。確かに早川先生の指導の成果もあったのだろうが、それ以上に彼女は立派であったと思う。
 いつも普通に皆に溶け込んでいたのだ。彼女は教室に居るとき、いつも笑っていた。素敵な笑顔だった。周囲を明るくしてくれる人だった。
 しかし、一度こんなことがあったのだ。ある日、彼女が授業中、突然座っていた椅子から転げ落ちた。皆驚いて、教室が騒然とした。酷い熱が出ていたらしい。
 だが、そんなことになるなんて、それまで誰も気付かなかった。僕もまたそうだった。僕は少し離れた斜め後ろの席にいたというのに、僕は間抜けなほど彼女を眺めていたのに、全然そんな異変に、その瞬間まで気付かなかったんだ。僕はずっと彼女は、普段どおり楽しそうに微笑んでいるとしか思わないでいたんだ。
 そうなんだ。そういう人だった。皆に迷惑を掛けまいと、酷く体調を崩しているにも係わらず、必死で気丈に頑張っていたらしい。自分の辛さを決して人には見せない人だった。本当は辛くても、平気な顔して笑っていた。むしろ自分のことなど二の次で、クラスメートの心配をしている。そんな人だった。
 ・・・けれど、僕はそんな彼女が心配で、いつも遠くで彼女を見詰めていた。放って置けない人だった。大好きな女の子だったのだ。
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 しかし、これもまた今に思えば少々不思議な気がするが、僕はそんな彼女と何故か多くの瞬間、一緒にいた気がする。ある意味、当時余り女子との会話を好まなかった僕にとっては、一番親しく話をしていた女の子だったような思いがある。いや、これは僕の勝手な思い込みかもしれないが。
 そう、思えば彼女はこんな僕によく話しかけてくれた気がする。自分で描いたイラストをそっと見せてくれたこともあった。そのスケッチブックには少女漫画に出てくるような男の子の絵があった。どうやら漫画を描くのが趣味らしかった。
 写真を見せてくれたこともあった。よく覚えてはいないが、少し黒っぽいポメラニアンみたいな小型犬が写っていた。そう、僕が独りでふてくされるように窓の外を眺めていると、そっと近づいて来て、ふと声を掛けてくれた。そんな女の子だった。
 体育祭ではどういう訳か彼女と二人三脚をしたことがあった。ほとんどの競技に不参加だったはずの彼女がいつの間にか僕の横にいて、とても驚いた。
 けれどあの時の僕は、実に馬鹿げた態度をとってしまった。彼女が自分の身体に密着しているのが恥ずかしすぎて、競技が終わると同時に大慌てで足を繋いでいた紐を解いて、まるで逃げるようにその場を離れてしまった。その時の彼女のビックリした顔が今も脳裏に焼きついている。
 思えば、僕は自分の本心とは裏腹に、まるで彼女を避けているような行動をいつも取っていた気がする。だからきっとこんな僕の気持ちなど、彼女は全然知らなかったに違いない。
 でも、そういえば、文化祭の終わりに、少し変なことがあった。
 文化祭で使い終わった廃材木を燃やして作ったファイヤーの周りを回って、皆でフォークダンスをした時のこと。参加者は男女に別れ、次々相手を変わりながら踊っていた。そして、そんな中に彼女もいた。ほんのわずかな時間だが、僕は彼女と踊ることが出来た。だが、その後だった。次に当たった女子にポツリと言われた。
「みつきちゃんじゃなくてごめんね」
 その少し嫌味のこもった言葉に、僕はびっくりしたものだ。まさか、僕の心がバレているとは思わなかったのだ。そう、僕は彼女への想いなど誰にも話したことがなかった。むしろ、気付かれないないようにと、密かに心の奥へと隠しているつもりでいたのだ。
 だが、外からはバレバレだったのかもしれない。妻もそうだが、やはり女の眼は騙せないらしい。
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 このジグソーパズルを組み立てていて、一つだけ気になるピースがあった。他の物は何も書かれていない白い無地か、黒いペンのラインが走っていただけにすぎなかったが、その一つだけが違っていたのだ。そう、そのピースだけは何故だか色が付いていた。赤いマジックペンで、いわゆるペケ印が付いていた。
 僕はこれを見つけて以来、ずっとその意味が気になっていた。これはきっと、何か大事なものを示しているのだろうと直感していたのである。だから、僕はそのピースだけをその他のものとは別にして、こっそり財布の中に忍ばせて今日まで常に持ち歩いていた。
 いや、だからと言って誰かに見せびらかしたかったのではない。無論、僕独りの秘密だった。
 しかし、ようやくそのピースを使う時が、この日来た。殆ど全て完成したそのジグソーパズルには、一箇所だけ穴が開いていた。僕はその虫食いのように開いた最後の穴に、その赤いしるしの付いた紙の破片を押し込んだ。
 僕は、ようやく完成したそのパズルを誇らしく眺めながら、そのイラストの意味を考えた。いや、実はこれはイラストとは少し違った。確かに可愛らしい造形の線画がいたる所に散りばめられてはいたが、これは漫画ではない。そう、きっと、これは宝の地図だ!絶対そうに違いなかった。
 そして僕にはその絵の意味する場所が次第に判ってきた。そう、そこは僕の卒業した中学校周辺を意味していた。そして、その赤のペケマークの付いた場所がどこかも、すぐに判った。
 そうだ。ここは彼女が登校の前に必ずと言っていいほど立ち寄っていた、あの小さな祠を指してる。
 ・・・そうだ、そうだったんだ!このパズルは、彼女の作ったものだったんだ!
 僕は、ようやくこの事実に気が付き、その意味に確信を持った。すると、もはや、いてもたっても堪らなくなった。もう、明日の朝まで待つことなど出来なかった。僕は懐中電灯を探し出し、園芸用の小さなスコップを手にすると、妻にも事情を告げぬまま、急ぎ真っ暗な夜の道へと飛び出した。
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 いざ辿り着いてみると、その祠の前には街灯があって、思う以上に明るかった。僕は家にて撮影してきたスマホの写真画面を確認しながら、地図にか書かれた端書きなどをヒントにその場所を探した。そして、ここだと確信した一点を見つけ出し、必死になってその場所を深く掘り進めた。すると程無く、三十センチほどの深さの穴の先にそれがあった。
 タバコケースのようなステンレス製の小さな箱だった。しっかりと幅広のビニールテープで補強されていて、完全に防水してあった。
 僕はぐるぐるに巻かれたその分厚いテープをバリバリと剥がしていった。さすがに月日が経ち風化が進んでいて、テープはすぐに切れて剥がしにくかったが、そんなことは余り気にならなかった。不思議なほど僕の手は勝手にその動きを淡々と続けていた。
 そしてようやくそのケースの蓋を開けた。見ると、そこには一通の手紙が入っていた。
『 斉藤浩一様へ     結城みつきより』
 封筒にはそうあった。彼女の字だった。可愛らしい女の子の筆跡だった。

[ 斉藤君へ、きっともう、二十五年後にわたしはいないと思うから、そのかわりに、あなたに手紙を書きました。・・・でも、みんなの前でこんな手紙を読まれたら、ちょっと恥ずかしいので、すこしいたずらをしました。ごめんなさい。でも、斉藤君なら、きっと許してくれるよね。

 きっと、あなたのことだから、今は、きれいな奥さんと結婚して、すてきなお父さんになっていることでしょうね。きっと、毎日、立派にお仕事を頑張っていることでしょうね。きっと、いっぱいの夢を叶えていることでしょうね。でも、沢山の苦労を重ねて、沢山の重い試練を一生懸命乗り越えて、きっと、すてきな毎日を送っているのでしょうね。
 わたしは、いつも、陰ながら応援しています。

 わたしはきっと、何も言えないと思うけれど、教室にいつもあなたがいてくれて、いつも、あなたが、わたしを見て微笑んでくれて、だから毎日がとっても楽しかった。
 あなたが、そこにいてくれたから、わたしは自分を励ませた。すてきな中学生活を送ることが出来ました。いつも明るく微笑んでいられました。

 ありがとう。あなたに出会えて、しあわせでした ]

 ・・・そう、彼女はずっと昔に亡くなっている。風のうわさで聞いていた。重い病を抱えていて、成人式を迎えることさえ出来なかったらしい。
 ・・・でも実は、僕は、その事実を、ずっと以前に知っていた。

 彼女があるとき、ポツリと言った。これは誰にも話したことがない。あなたに初めて言う。だから皆には内緒にしてくれと、そう前置きした上で。
「・・・わたし、きっともう、あんまり長くは生きられないみたいなんだぁ」
 彼女はそう言って、笑った。素敵な笑顔だった。美しい瞳だった。

 だが僕は、結局何も言えなかった。そんな彼女の気持ちに、まるで寄り添えなかった。ただ、遠くで見ていることしかできなかった。余りにも駄目な男だった。

 大好きだった。心の底から愛していた。・・・だけど、何も出来ない自分だった。

 ・・・けれど僕は、あの美しい彼女の微笑を、決して忘れはしない。

タイムカプセル

タイムカプセル

25年が経ち、中学時代に埋めたタイムカプセルが掘り出された。だが、そこには一つだけ、奇妙な封筒が入っていた。 ・・・時を越え、あのころの秘めた想いが、そのパズルを通して、いま蘇える。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-20

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