雪風の昔語
寒い、雪の森。
森に住む少女と、森に迷い込んだ者の話。
拙い文章ですみません、感想、ご指摘などあれば是非。
雪風の昔語
……ここは…、
ここは、何処だろう
何も見えない、真っ暗闇
どこからか、冷たい風が吹いていた
「…ねえ、大丈夫?
…ねえってば!! 起きて!」
体を揺さぶられ、自分が目を開いていなかったことに気付く
開かれた視界に映ったのは一人の女の子だった。
「起きた!良かったー、ずっと寝てるんだもん!凍え死んじゃうよ?」
女の子は楽しそうに笑った
「私、ルカーって言うの
あなたはこの世界に迷い込んじゃったみたいね、
私が元の世界に戻れる所まで案内してあげるよ!」
ルカーと名乗るその子はそれだけ言うと
さっさと歩いて行ってしまった
私は慌ててあとを追いかけた
しばらく進むと草花に覆われた小屋にたどり着いた。
「ここは、私の家! 少し温まろう!」
案内され中に入る、最初に目に入ったのは
たくさん並ぶ小さな植木鉢。
よく見ると、…何かが刺さっていた
「………ああ、それは……レプリカだよ、本物そっくりでびっくりした?ふふ」
異様な物の前に立ち尽くす私に、ルカーは無邪気に笑いかけた
「私、それが好きでね! …型取りして、コレクションしてるの
…あなたのも欲しいなあ、なーんてね! はい!」
手渡されたコップの中は暖かいココアで満たされていた
一口飲んで気を落ち着かせる
「あなた、結構怖がりなんだね…?
……あ、ココア、おいしいでしょ! この世界で一番有名なお店のココアなんだよ!」
言われて、もう一口飲んでみる
とても、優しい味がした
沈黙。
「あのね、聞いて、……私ね、この世界で一人ぼっちなの
ねえ、もう少しここに居てくれない? 人と話すの久しぶりで…
お願い! …いっぱいお話したいよ」
今にも泣きそうな顔での懇願
私はこの世界への興味もあり、了承することにした。
「!! ありがとう…嬉しい!」
頬を紅潮させ本当に嬉しそうに笑う
よく笑う子だな、と思った
それからしばらく、少女の話に耳を傾けた
少女の話は少し不思議で、おもしろい話ばかりだった…
「…そろそろ行こっか」
外に出る。 小屋で温まった体がすぐに冷えてしまうほど、寒かった
「あはは、あなた、凍えちゃってるね
うーん、どうしてそんな薄着でこの世界へ来たのかしら」
自分でもわからない。 苦笑いを返すしかできなかった
「ふふ、なんだか可哀想だから、このマフラー貸してあげるよ
…ちょっとしゃがんで?」
そう言って、私の首にマフラーをかけようとする
とても有難かった
…暖かさにほっとしたのも束の間、次の瞬間
思いもよらない強さで首を引っ張られた 気がした
「ふふふ、寒いもんね! しっかり、絞めないとね……」
楽しそうに、無邪気に笑う声が聞こえた
抵抗する間も無く、地面に倒れる
「これであなたも、ずっと一緒に居られるね」
朦朧とする意識の中、なんとか身をよじり少女をみる
少女の目は、深い、黒い色をしていた
「………お話、 聞いてくれてありがとう」
雪風の昔語
謎が残る、不思議な世界を感じて貰えたら幸いです。