カマキリの昼寝

洗濯物を干そうと、窓から外の様子を眺めたら、

カマキリが庭先をのこのこと歩いていた。

掃き出し窓を開け、サンダルをつっかけて庭にでると、

カマキリは気がついたのか立ち止まり、右に左に小首をかしげる。

様子を伺っているみたい。

私もしゃがんで睨めっこしてみる。

目玉の黒い点がキョロキョロ動いてる。

目を回さないのかと思うほどよく動く、それがとってもひょうきんな顔。

危険がないのを確かめたのか、再びのこのこと歩き出した。

傍らを指でトントンと叩いても知らんぷり。

陽当たりのよい場所にかかると、カマキリは再び立ち止まり、

まるで猫の毛繕いのように手足を手入れしている。

次には腰を伸ばすお爺さんみたいに伸びをして、

凝った筋をほぐすみたいに身体を左右に動かした。

顔を近づけて覗き込むと、また目玉の黒い点がギョロリとこちらを見る。

でも、やっぱり知らんぷり。

そして、釜の手を揃えて枕にするように頭をうずめ、

そのまま眠ってしまったみたいな。

昆虫も日向ぼっこしながら居眠りするものなのかなと、ちょっと驚いた。

それとも、この季節だから余命いくばくもなく力尽きたのかと、

傍らを、またトントンと叩いてみた。

頭の二本の飾りが微かに動く。

大丈夫みたいだ。

しかし、こんなところで堂々と。

そこは物干しの真下、だけど空から見晴らしのよい場所。

人がいれば鳥が飛んできても近づけず掴まらないと悟ったのか。

足元で寝入っている(らしい)カマキリを踏んでしまわないようにと気づかいつつ、

そそくさと洗濯物を干した秋の日の日曜の遅い朝の一こま。

カマキリの昼寝

カマキリの昼寝

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-09-02

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