ライダーあああ

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 真新しいエンジン音を放つ、250ccのオートバイ。それにまたがり、真夜中の国道を疾走する男・大木貴照(23)。大木はつい先日、この黒光りする新車のオートバイを一括で購入したのだ。彼は今、ウキウキ、ウキウキウキウキなのだ。

 進入する交差点の信号が黄色に変わり、さらに赤へ変わった。大木は素直に信号に従う。停車中のエンジン音も、今の大木にとっては脳細胞の一つ一つに浸透していくようだ。信号が青に変わる。一速、二速と大木はスピードを上げいき、時速90kmに達したときはもうトランス状態に近い感覚に陥っていた。
『今の俺は音速だ!いや……光速だ!』と心の中で叫んだ大木。「わーはっはっはっはっは!」高揚感は抑えられず、つい笑い叫んでしまった。このとき、大木が笑っている約500m先にカナブンが彼に向かって飛んでいた。その瞬間、


カッ!


神のいたずらとはこの事なのだろう。
大木が心の中で叫んだ『今の俺は音速だ!いや……光速だ!』を神は見逃さなかった。(心の中とは言え)言霊とは恐ろしいものである。大木は本当に光速(厳密には亜光速)で走行するようになったのだ。「ヌピピピピピピピ」当然、生身の人間の体が亜光速に耐えれるわけがない。
 さらに神のいたずらは続く。なんとカナブンも亜光速に達していたのだ。そして、亜光速同士が国道で衝突する!

キーーーーーン。ズゴゴゴゴブゴォォォォォォォ。ドォォォォォォォ。

大木の断末魔は「ニュペッ」だったがあっという間に周りに飲み込まれ、彼の体は素粒子レヴェルまで崩壊した。この地域一帯にえげつない衝撃が走り、半径4000kmはキレイに吹っ飛んだ。これにより、地球の地軸にも影響し、重力異常も発生した。これが後に言われる「ジャッジインパクト」である。

カナブンはと言う、無傷だった。神のいたずら、もうここまでくると神のいやがらせである。このカナブンは、人間との亜光速衝突に競り勝ったのだ。これが最強のカナブンの誕生秘話である。わーっしょい。わーっしょい。

ライダーあああ

ライダーあああ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-16

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