路地裏
可憐なマッチ売りの少女らが
きょうも 優越を売り捌いている ようだ
潜水士が水底で 泡のような三面記事に
不具な めを 滾らせている
ビルディングには、荒唐無稽な慣用句が爛れ
ぶら下がった魑魅魍魎に 紅をさし 睫毛を縫い
春色の優越を売り捌いている ようだ
「マッチは いりませんか、」
「マッチは いりませんか、」
胸元に抱いた酒瓶が 空っ風に病んでいる
白痴を纏うゼントルマンらが うしろ指を刺している
錆びた古アパートの階段が恋しい、と
こつり こつり こつり
路地裏の おもいで
路地裏