リバースゲーム#3

#3 アクムノイミ・アクマノミルユメ

 その日の晩、皆が眠り込んでいる頃、独りまたうなされている者、ゼインの姿が。どのような夢を見ているのか…。
その夢とは、一人の長い黒髪の若い女性でその者はとても優しそうな女性―ヒト―の様だ。そして景色は変わり、それは争いに満ちた世界だった。自分が見ていてとても嫌な感じがすると、その自分の前に、背を向けその目の前の男から守ろうとしている様子で、自分をかばっている様だった。この時自分は誰なのかそして何のために存在していたのか、解らなかった。その女性を連れて行った男はとても許せない者だった。だが刃向かうことはできなかった。恐怖を感じたからだった。翌日の朝、ゼインは早く起きてしまうのだった。
「一晩、うなされていた様子だったが?」そう言われその通りという表情を見せるゼイン。
「ライカ…、ここ最近ね、変なの。」そう言いゼインはライカに話すとライカは、声のみ聞こえていたが、実体を現す。
「変…か。それを最近お前が見ているのなら、余程意味があるのだろうとは思うが。」そう言われ、ゼインは不安な表情を見せる。
「無いと良いのだけれど、ね。」そう言い、ベッドから降りるのだった。ライカは口を開く。
「私の《弟子》に、お前と同じような立場の者がおった。」その一言にゼインは口を開く。
「その人は辛くないの?」とその問いかけにライカはクスリと笑う。
「無論だ。ただ、あれはそれに耐えている様だ…。本人は口には出さぬが、な。」そう言い答えるとゼインは口を開く。
「その人強いな…。」ライカは目を閉じ、もう一度開き口を開くのだった。
「強いものとは、あらゆることに耐え、立ち向かうことができるもののこと、それと逆に、弱いものとは、《己の真実》を知らず、欲に執念を抱き他の者を陥れ、人の苦を見て喜ぶ者のことを言う。」そう言い、ゼインはその意味を理解しようとしたのだった。
「ライカは、何故その言葉を?」そう言われたライカは、自分の師匠のことを思い出し、口を開くのだった。
「それが、私が師から教わった言葉だ。」と言いゼインの着替えを渡しながら答えるのだった。ゼインは着替えを受け取り着替え口を開く。
「ライカの先生、どんな人?」着替え終わると、そう問う。ライカは少々照れているのかゼインから少し目を逸らし口を開く。
「…、とてもよい師と言えば偽りとなる、が。真っ直ぐな女性―ひと―で、何者かもわからぬ私を村においてくれた。あの人は、苦しんでいる者や身内のいない者を放っとけない性格、だったのかもしれぬ。」そう言い、ゼインは口を開く。
「ライカは、その先生が大好き?」ゼインは更に問う。
「…、ああ、無論だ。」少し照れている様子でライカは、ドアの前で言うのだった。
「あれ?何処に行くの?」ライカは答える。
「長老に報告を、な。…!!」そう言い去って行く。その一言ライカが言った途端、ゼインはそのライカを不審に思ったゼインは何も言わずに見送るのだった。その一方で、ライカは周囲を見渡し、誰もいないことを確認すると何かを念じる。
「…、《貴女》は何をしておるのか…。」そう口を開くとそこへ少女の声が聞こえてくるのだった。その少女は答える。
「何をしているか、だと?その問い、私も問う…、ライカお前の使命とは。」そう問い返されライカは口を開く。
「レスル=ランスを…、《抹殺する》こと。」と答えるが、その少女の声は言う。
「何故それをすぐに《殺―や―らない》?お前ならこのぐらい簡単なことであろう?」そう問われたライカは冷静に答える。
「…、ですが気が進まぬ…、それに貴女は何故にゼインを突き放した?何故…。」その時少女の声は答える。
「ゼイン―アレハ―はもう必要ない。本来はお前も不要なのだが…。一応は私の《部下》。たまには《部下》にも慈悲をやらねばと思うてな。そうだ、お前に《これを》やってもらおう…、ライカ、これより《レスル=ランスの抹殺の継続》と《リクア遺跡》へ行き、《私を殺せ》。そうか…、私を殺すのは気が進まぬか。お前と私は《繋がっている》からな。殺しようにも《創造主》を殺せばお前も《死ぬ》ということになるのだから…、そうと言って、主に逆らうのも《死する》と同じこと…。それでも良いのならば、私自らゼインを処分し、お前とのリンクを外せばただの《人殺しの人形》。受けるか?それとも、拒否か?」問われたライカは答える。
「…御意…。」ライカは、その少女の声に応じるのだった。否、応じる他になかったのだった。その少女の声はこう語る。
「そうだろうな、お前はゼインと会ってから状況が掴めた様子。お前の持つ《感情》がまた一つ増えたことだろう。良いのならばその使命を果たしたのと後に、ゼイン―アレ―は自由にしてやろう。」そう言い少女の声は消え、その後は何も聞こえない。ライカはその少女の言葉を思い出し、考えるのだった。その少女の声は何故、そのような台詞を発したのかと。そう、ライカは思うのだった。その一方、そこは邪悪な死神の集まる者達の暮らす魔帝国でのこと。その者はいら立ちの表情を見せる女。どうやら待機中の様だ。
「…、まだなのか!!?アルテは地上で一体何をしておるのだ!!!?」そう言い叫ぶ。
「落ち着きなさいな。ミィティア。」その女の声に振り向くそのミィティアは口を開く。
「これが、落ち着いていられる状況なのですか!?これはきっとアルテ=クレメールミストは《遊んでいる》!!ガラヌス様、この私にやらせてもらえないだろうか!!?」ガラヌスは答える。
「どうせ、貴女はアルテを見つけ、単独行動をするじゃないの。駄目よ、まだここにいなさい。」とミィティアは反論する。
「ですがガラヌス様、アルテは地上に出て十日。いつもあの者は一日や三日で終える者の筈であるのに、何故今回の任務、戻っては来ません。これをいかがなものかと。」そう言いガラヌスはそんなミィティアに口を開く。
「放っておきなさい。あの子、一応は死神と言う種族の《ひと》。ゆっくり他種族の観察でもしていると想うわよ。」そう言い、ミィティアは口を開く。
「ですが…。」そして、ガラヌスは口を開く。
「いいから、上司の命令は聞きなさい。」と言われたミィティアは観念した様子だったが。
「了解、しました…。」そう言い了承。ガラヌスはその場を立ち去り、そこに、一人の少女がミィティアのいる場所に来ると口を開く。
「ミィティア、ねえねえ。聞いたよ。このままいるの?」そう問われたミィティアは答える。少々気に食わない表情で。
「決まっている。行くぞ、レルラ。」とその少女はミィティアについて行く。そのレルラと言う少女は口を開き、生意気な言葉で言うのだった。
「いいのかい?お前がもしも、無断で地上へと降りたら僕も、君も、罰が下されてしまうと思うよ。」と。そう言われミィティアは恐ろしい表情で言うのだった。
「やかましい!!お前の様な悪魔は、契約した主の言うことは絶対だ。いいな!!!?」その言葉にレルラは口を開く。
「フフフ…、でも、《君も》そうでしょう?《魔帝の主》の命令が最優先なのだから。」と。ミィティアはそんなレルラを放っておこうと決断したのか。
「もういい!好きにしろ!!」そう言い何処かへと行ってしまう。
「しーらない、っと。ミィティアは悪い子だなぁ。」そう言いその場を去って行く。その一方、赤褐色の髪色に、機械を着けた少女、それはアルテである。アルテのいる場所は遺跡の内部の様なところだった。何処かの街の様な場所を通り、周りを見渡す、そこは、争いによるものと思われる壊れた瓦礫や建物がいくつもある。
「私は…、ここで《現在》のようにゼインを突き離した、のか。《この立場》にいる今はそれが正答であろうな。」そう呟き周りを見渡す。とその時、人の気配を感じるのだった。
「お、気付いた?」その男の声を聞くとアルテはそれに聞き覚えがあるのか振り向き答えるのだった。
「…、《ナノロイド》か。私は、《現在》は《魔王=アラルス》ではないぞ?」その男は口を開き答える。
「あれ、まだ《完全ではない》のか?忘れちゃったの?」と。アルテは口を開く。
「《完全にもどったよ》。ただ余計なことを思い出さないと私は誓ったからな。だからお前のことは覚えてはいない。」そう答えたアルテにその《ナノロイド》と言う男は少し間を置き口を開く。
「昔の名前で呼んでよ。《セカンド》ってさ。」そう言い、アルテは答える。
「…。それで、何故、《現在》に出てきた?」そう問われたセカンドは答える。
「何となく、ね。(俺は《ファムクス》とゼインまあ当時は《00―Ⅰ》をお前さんが魔帝に連れ戻されてからその後、観ていた。ゼイン当時の《00―Ⅰ》はアラルスと暮らしていた廃墟の医療施設ではなく、当時動いていた軍本部、あの先にある塔内部の研究施設で封印され、一人ぼっちでこの《リクア遺跡》となった《リクア帝国》の奥で眠り続けた。ただ、《アラルス》―お前―を待ち続けて。《ファムクス》はその(00―Ⅰをゼイン)と言う名を与え最初のうちは一緒だった。しかし、ゼインの存在と、能力及び、お前がひそかに入れたデータの存在を知った軍内部と帝国を収めていた政府の奴らがゼインを《ファムクス》から引き離した。)」セカンドの話す言葉にアルテは、最初から知っているかのように、口を開く。
「そうとは踏んでいた。それでよかったのだと私は考えた。」セカンドはそのアルテの一言で、さらに口を開く。
「お前さんのやったことは、間違っていたと思うよ。何故、《大死神―エーシル―》に逆らわなかった?」そう言い、アルテは答える。
「《兄さん》には《逆らえない》からだ。お前も、《主》である《大死神》の恐ろしさを知っているだろう?」
「…。」そう問いかけられたセカンドは少し黙る。アルテは口を開くのだった。
「そうであろう。私は《大死神》の《能力―チカラ―だけではないことも知っている筈だ、セカンド。」セカンドは口を開き言うのだった。
「解っているよ。《あの人》が何をしたか。かつて《兄であった大死神》のお袋さんや、親父さんが亡くなってから変わっちまったって、あんたは言っていた。」アルテは、口を開く。
「…、《大死神》は再びこの世界へと甦る。今度の《器》は《シャルアス》…。私の《現在の兄》。運命というものとは恐ろしいこともするものだ。」と。アルテは自分の実兄の名を口にした途端、機械に顔を覆っているため、セカンドは判らないが、きっと内心表情を曇らせてしまっているのだと想うと。
「!!!《前回も》、兄貴だったのが、今回も《身内》なのか!?」セカンドはその言葉を聞くと驚きの表情を見せ言い叫ぶのだった。
「…、私も、信じたくはないものだ…。じきに、私はシャルアスと再会するだろう。レスル=ランスが記憶を取り戻したのと同時に、私のことに気づき、この顔を覆っている機械を外してしまうだろうな。」そう言うアルテの台詞に気が付き、セカンドは口を開く。
「お前ひょっとして、兄弟に《会いたい》のか?」そう言われ、少し笑った様子でアルテは答える。
「機会で制御されているとはいえ、感情は存在していると考えると、そうであるかもしれぬ。無駄な感情は控えるように取り付けているのだが、な。」そう答えるアルテはその機械を取り付けた状態でセカンドはそれをわかっているのか、表情が変わったのを感じると口を開く。
「そう、か。私は、あの時から兄とは思わぬと、兄弟とは思わぬと誓った。お前も、記憶が戻った頃から知っていたのだろう?」セカンドは、その後何も言わずに消えてしまう。アルテはその後、とある場所へと向かうことに。
『ねえ、ファムクスいつ帰ってくるの?』その記憶はアルテのものだった。否、アルテが別の人物の頃、か。
『私にもわからない。あの者は、いつも長い間戦場で《この帝国》を守っているからな。場合によっては長引くかもしれないって言っていた。』その一人の女性だった頃の自分が答える。その頃だった自分に向かって問いかけてきた少女は現在のゼインにうり二つであった。ゼインは目を見開き言うのだった。アルテはその機械を着けたまま考え込むのだった。一方その頃、ガイ、レスル達の一行、《リクア遺跡》近辺の樹海へと飛空艇が降り立つ。
「よし、総員待機。俺とガイと…。」
「俺もいくでぇ。」そこへシャルアスが声を掛ける。
「よろしく頼む。あとは、ライカと…。」
「私も行く。」ゼインが声を掛ける。レスルは、気が進まないという気がしたのだった。
「ゼイン、駄目だ。相手は遺跡、何が起きるかわからないんだぞ?」ゼインは、口を開き反論する。
「いいの。私は…。」そう言い、走り去って行くのだった。
「あ、ゼイン!!」レスルはゼインを止めることができずその一方でゼインは、飛空艇の外へ出て行く。それを遠くで見ていたライカは、何処かへと消え去って行く。その一方でレスル達は、《リクア遺跡》へと向かう準備をしている時、ライカが現れ、口を開く。
「レスル=ランス。ゼインはどうやら《リクア遺跡》へ向かったようだ。」
「急ごう。」そう言い少々焦っている様だった。その一方のゼインは、急ぎその先を急ぐ。そこに、いきなり怪物が襲い掛かる。
「!!」怪物はとても巨大な体で吠える。それは耳の鼓膜が破れるほどの大きさだった。そこに刃物が当たる音がするのを聞くと、ゼインは目をゆっくり開けると、レスルの姿が。レスルは大剣を構えながら言うのだった。
「馬鹿!!勝手に急ぐんじゃねえ!!!ったく、このお転婆娘!!」そう言い、その巨大な怪物を切る。
「ゼイン、大丈夫かい?」ガイにそう言われると、ゼインは頷く。
「ごめんなさい…。」そう謝罪すると、ゼインはレスルが攻撃している怪物とレスルの剣を見てふと気が付く。
「立てるか?」シャルアスはゼインに向かって問いかける。
「はい。」そう言い、ゼインは答えると、立ち上がり、武器を取る。
「こいつ、相当体が硬いぞ!」そう言うレスルにゼインが何かを唱える。
「ソノ鎧をマトイシ者ニ腐敗ヲ、ソナタ二壁ヲ…。」と。レスルはその言葉に聞き覚えがあるのか、驚きの表情を見せている。
「腐敗魔法と、支援を同時に!?やとぉ!!あの嬢ちゃん何者や!?」シャルアスも驚き言い叫ぶのだった。
「…、レスル、攻撃聞く筈だよ!レスルにも支援を施しておいたよ。」そう言い叫ぶと、レスルはそれに応じる。
「お、確かに…。解った!サンキュ。」そう言い、剣を振り挙げ、巨大な怪物は二つに切れてしまうのだった。
「急ごう。早くしないと政府の奴らが到着してしまう。」ガイはそう呼びかけ、一行は急ぐのだった。
『あの女性―ヒト―は…。………、ゼ…イン…!?』それはレスルの心の中の記憶の様だ。それは樹海の中を歩く最中のこと。その様子を見たガイ。
「レスル?おーい。」そう呼ぶガイに反応し、口を開く。
「あ、何か用か?」と。
「どうしたぼーっとして?」ガイは応じ問い掛ける。
「え、ああ。ちょっとある人のことを思い出したものでな。」そう答えたレスルは、先を急ぐのだった。ガイは疑問に思うのだった。そんなレスルを同じく見ていたシャルアスは口を開く。
「ほうほう…。つまりは、《恋》やな。」ガイはそんなシャルアスに呆れ。
「否、そうじゃないと思うよ。」そう言われたシャルアスは口を開く。
「だって、《ある女性―ヒト―》ってことは、《昔の女》。《リクア遺跡》にいるかもしれないと思うているのかもしれんな。」
「否、俺は《彼女》いないから。」と言い叫ぶレスル。どうやらレスルには二人の会話が聞こえていたようだ。
「なんちゅう、地獄耳や!」と言い叫び、レスルを追いかけるのだった。そして、《リクア遺跡》へと到着する一行その《リクア帝国》を見て言うのだった。
「なんか、近代的な都市だな。」とライカが口を開く。その言葉にレスルは口を開く。
「かつて、人々で栄えた。その後紛争が勃発。《魔帝》からの侵略から守るべく《俺たち》はこの帝国を守り続けた。他の国も《魔帝》から侵略を受けて難民としてこの帝国へと住んでいた。あの先にある塔に《00―Ⅰ》が封印されていたのだが…。気配は感じない。もう既に回収されていた様だ。」そう言うレスルにガイは声を掛ける。
「おい、レスル!?」と呼びかけられたレスルは、どうやら正気に戻った様だ。
「!急ごう。あそこに見える塔へ。」そう言いさっさと行ってしまうのだった。《リクア遺跡》を進む最中のこと、ガイ達はそのリクアの塔へと向かうこと。
「おい、待てよ!レスル!!」ガイはレスルの焦る様子に声を掛ける。レスルはそのまますすんで行ってしまうのだった。ガイとシャルアス、ライカとゼインそしてフルランとフルアはそんなレスルについて行く。
「…。」ライカはそのレスルを追いかけるため、走る速度を上げていくのだった。その時。
「疾風ノナカノ住人ヨ、我ト共ニ地ヲキレ…。」その時、ゼインの走る速さは先程よりはるかに速くなりそして、レスルのもとへと辿り着くのだった。その途端空間が歪みやがて光に包まれるのだった。

                                                                                                         #3 End

リバースゲーム#3

リバースゲーム#3

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-16

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