アベ様
現在の福島問題についてのSFです。
福島の皆様には、怒りを感じるかもしれませんが、私も怒りを感じながら書きました。
これからの未来を良いものにしたいと思います。
「ねえねえ、おじいちゃん。こーんなに綺麗な星空の下に生まれて僕たち幸せだね。」
「そうじゃね。本当に綺麗じゃなあ。食べ物も美味しいし、空気は綺麗じゃしのう」
「こんな時代に生まれて幸せだね」
「ませたことを言うねえ。でもそうかもしれんのう」
「だってこんなに広々として気持ちがいいんだもん」
「じゃが昔は人間が世界中に犇めきあい、ゴミゴミして住み辛い世の中じゃったんじゃよ。こんないい時代になったのは、銅像になってるアベ様のおかげなんじゃよ」
「アベ様は知ってる。でも何をした人?」
「それはね、昔ニホンという所で1億人以上も人間が住んでいたんじゃよ。少ない資源の中で贅沢な暮らしをしておったんじゃ。贅沢といっても、物の贅沢じゃがな。今みたいな贅沢な時間は持てなかったじゃろうがな。別に食べる必要もないものを食べて太るのを気にしたり、ゆっくりと旅をすればいいものを少しでも早く着くように競ったり、他人よりもいい乗り物を欲しがったり、より大きくて便利な家に住みたがっていたらしいのう」
「いい乗り物って何?」
「ああ、車と言って鉱物をエネルギーにして人間を乗せて走っていたそうじゃ」
「フーン。どんなものだろう?」
「皆が欲しがるんじゃから、かっこ良かったんじゃろうのう」
「乗ってみたかったなあ」
「ははは、そうやって人間はものすごいエネルギーを消費していったんじゃ。そしてその便利なもので人間と人間が殺しあったり、人間同士でモノを奪い合ったり、はたまた人を笑ったり足を引っ張ったりしておったんじゃよ」
「どうしてそんなことばっかりしてたんだろう。楽しくないのにね」
「どうしてかなあ。皆ぎすぎすしてんじゃな。そしてエネルギーが足りなくなって核エネルギーを使って電気を作っておったらしいんじゃ」
「電気ってなあに?」
「電気っていうのはね、夜明るくしたり、暑さ寒さを調整する機械を動かす元になるものじゃよ。便利な機械を動かす元じゃよ。エネルギーと言ってもあまりよくわからんかな…」
「わかんない」
「その電気を沢山必要として、核エネルギーを使った原子力発電所というものを沢山、沢山作ったんじゃ。自分たちが絶滅してしまうとも知らずにな」
「人間ってバカみたいだね」
「今となっては良かったんじゃがのう」
「どうして絶滅したの?」
「人間は核兵器を沢山作って、世界各地にばら撒いておいたんじゃ。核兵器というものはものすごい威力のある爆弾じゃよ。それを大量に作っていろいろな国で脅かしあっていたんじゃな」
「沢山てどのくらい?」
「それはそれは沢山作って、この地球が何回も粉々になってしまうくらいだったそうじゃ」
「えーすごく変!だってこの地球が無くなっちゃうんでしょ」
「そうだよ。しかも何回もね。またエネルギーを得るために、原子力発電所を作ったんじゃよ。いろいろな国で作って、人間が住めなくなるような事故を起こしたりしても絶対安全じゃと言っていたる所に作ったんじゃよ。同じ核を使うんじゃがのう。」
「へー、なんで安全って思ったのかな?普通わかるよね」
「そうじゃね。人間っていうのもすごい文明を築きながら、頭は悪かったんじゃのう。絶対安全と言いながら原発事故というのが3回起きたんじゃ。3回目はニホンという島国で起こったんじゃ。原因は津波だったということじゃ。津波で沢山の人間が死んだらしいのう。それから放射能がいっぱい漏れたらしいんじゃ」
「よかったね。それで住みやすくなったんだ」
「そうじゃよ。でもまだまだ漏れ方は少なかったんじゃが、人間にとっては大変なことだったらしい。一部の平民たちは反対したらしいんじゃが、自分たちの利権を優先する政治家が反対するふりをして容認したらしいのう」
「それでこんな綺麗で素晴らしい世界が出来上がったんだね」
「そうじゃのう。そのおかげで我々がおるんじゃからのう。その時原子力を封印していたら我々は生まれてこなかったかもしれんからのう。結局その時放っておいたおかげで世界で事故が多発して今の世の中になったからのう。その時放っておいた最高責任者である”アベ様”を我々は創造主として崇めておるんじゃよ」
「へー偉い人なんだね」
「これこれ、裂け目に気を付けるんじゃよ」
もう、話に飽きた孫は何もない荒野を、六本の足で走って行った。胸に埋もれている顔を笑顔にして孫を見守った。
草木の生えない、高濃度の放射能の世界を・
アベ様