私の名前はフィーネ・ワトソン。

私の名前はフィーネ・ワトソン。

私の大好きな人は時々変な喋り方をする。


大好きな人と形容した、彼女はクレア・ポシェットと呼ばれている。

実は彼女の本名はクレア・ポシェット・ホームズといって

普段は作家をしているのだが

どういうわけか、彼女は数奇な運命をたどる、という運命の中にいるようだ。

その証拠に私、シャーネ・ワトソンは彼女に出会ったのだろう。

とまあ、そんなことはどうでもいいのだが、

ある日、彼女のもとへと警察がやってきた。

いったい何事かと

聞いてみると、どうやら捜査の手伝いをお願いにきたそうだ。



―――― am10:02

クレア「・・・それで?」

ブロア警部「なんでも、その夫婦の旦那、いや元旦那なんだがな。ちょいと奇妙なことになっちまってな」

シャーネ「その旦那が奇妙なんですか?」

ブロア警部「あ、いや・・・そうじゃないんだ。奇妙なのは妻の、いや元妻なのだが」

クレア「・・・はなしが見えませんね。」

ブロア警部「いや、そこも含めて調べてほしいんだ。ほら、これが今回の資料だ。報酬はいつも通り先に振り込んである。好きにつかってくれて構わない。」

シャーネ「なっ、・・・勝手に。」

クレア「いいんだ、シャーネ。この無精髭の男は私が承諾することを、見越してここに来ているのよ」

シャーネ「え!?どうしてそんなことが・・・」

ブロア警部「私は未来を見通すことができるんだよ」

クレア「・・・ふん、タヌキめ」

ブロア警部が帰った後
資料に目を通していた、クレアにコーヒーをいれてあげると
いつのまにか彼女は新聞を開いていた。

シャーネ「え!?クレア、事件は?調べなくていいの?」

クレア「あら、シャーネ。コーヒー入れてくれたのかい?かわいい、シャーネは今日もかわいいな。」

私の愛人クレアは、事件を解決した後は興奮していつも変なしゃべりかたをする。

クレア「ああ、おいしい。シャーネのコーヒーは本当においしいな、シャーネ」

まるで甘えた子猫のようだ。
まんざらでもないこともないが、まあそれよりクレアがこうなったのは事件を解決したからであろう。

シャーネ「ねえ、クレア?今回も事件の謎が解けたんでしょう?」

クレア「ん?ああ、そりゃ解けるよ。謎だからね。謎は解けるようにできているものさ。特に今回は謎とは呼ぶことができないつまらないものさ。」

クレア「さて、じゃあ私はシャーネが入れてくれた美味しいコーヒーを飲まなければいけないのだから、シャーネ?あのタヌキのところにこの事件の紐をほどきに行ってくれないかい?ほどき方は今から説明するから、ね」

私はこの押しに弱い。
まったく、ねこというか
警部がタヌキならきっとクレアはキツネだ。
賢く、妖艶で、何もかもを見透かしたような瞳・・・

まあ、それも彼女の一部であって、彼女はとにかくいろいろな
姿をもっている。

感情に身を任せたり、はたまた無気力であったり、今回の様な
定期的であるが、めずらしい姿。

まあ、どれも私に言わせれば
愛らしい『私の』クレアなのだが。
さて、今日も彼女のわがままに付き合おう・・・
それが私のわがままなのだから


――――――――――――――am11:23 警察署内、とあるうすぐらい一室にて

その部屋は何度も入っているがいまだに慣れない
ほこりっぽい部屋にいくつもの分厚い本が積み重ねられた部屋
本当に署内なのだろうか、私室ではないのか?

ブロア警部「では、いつも通りきかせてもらおうか?」

シャーネ「・・・はい。今回の事件、容疑者夫婦被害者夫のたび重なる浮気が原因となります。」

ブロア警部「・・・それで?」

シャーネ「被害者の浮気証拠及び、記録についてはこちらの資料を。」

ブロア警部「うむ。」

シャーネ「被害者夫は妻がありながら浮気をし、狡猾にも役所をだまし第三者女との婚姻届を出しています。
しかしながら、被害者夫の死亡推定時刻はおそらく三日前。婚姻届をだしたのは昨日。つまり被害者夫は死にながらにして役所へと行き婚姻届を出しています。」

ブロア警部は静かに聞き、次の私の言葉を目で促した

シャーネ「この件につきまして役所の者に証言がありました。」
シャーネ「さらに、容疑者妻ですが、こちらは役所の記録が故意に改定されていました。」

ブロア警部「つまり・・・?」

シャーネ「・・・つまり、被害者夫と容疑者妻の間に婚姻関係は無く互いは赤の他人という関係にあるということです。」

ブロア警部「彼女は狂人と言いたいのか?」

シャーネ「・・・ここからは。」

ブロア警部「・・・ここからは?」

シャーネ「別料金だ。とのことです。」

ブロア警部「・・・ハ?」

シャーネ「では、仰せつかったことはこれで全部ですのでこれで失礼いたしますわ、警部」

唖然とした、警部を背に感じながら
私は帰りにクレアの好きな特売の安いコーヒーを買いにいくのだった。

雨があがり、みずたまりを避けながら歩く。
早く、クレアを感じてたいわ。

私の名前はフィーネ・ワトソン。

クレア「そうかい、そうかい。私もついていけばよかったかな。」
シャーネ「ええ、あの人の顔ったらおもしろいくらいにあごが落ちていたわ」

私の名前はフィーネ・ワトソン。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-13

CC BY
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