ACE WITCHES 鋼鉄の翼

ACE WITCHES 鋼鉄の翼

主人公設定及び航空小隊設定

ロウファ・ローズベルト・コウジ 28歳 階級 エストバキア空軍大佐
出生国 エストバキア連邦
身長 178cm 体重 72Kg 
髪の色は黒色 瞳の色は緋色
コールサインはクロスボー1 TACネームはサジット クロスボー隊の隊長を務めている
特技はスクラップからなんでも(主に武器類)作り出すこと、料理が非常に上手く料理人泣かせとまで言われている
そのため料理を手伝うことはあっても一人で作ることは滅多にない
空戦の技術ではエーリカを凌ぎ、新米扱いしなおかつ501部隊を模擬戦で全機撃墜の記録保持者でもある
その上2番機のイーディスからは「模擬戦で後ろすら取らせてもらえなかったことが殆どだ」と言う程の技量を隠し持っていた
約90度近い角度で旋回し、10連続で高G及び超高G旋回を容易くやってのける。
また、空間の気圧変化を利用しつくした強襲を仕掛ける等人並み外れた能力の持ち主
女性が少し苦手だがゲルトさんが好みのタイプらしい

ジャック・シルバー・マーティン 28歳 階級 エストバキア空軍中佐
出生国 エストバキア連邦
身長 170cm 体重 68Kg
髪の色は濃い灰色 瞳の色は青(群青色)
コールサインはクロスボー2 TACネームはイーディス(盾を意味する) クロスボー隊の2番機兼副隊長を務める
性格はコウジと対照的だが技量はコウジに次ぐ腕前の持ち主であり片腕でもある

エストバキア空軍第3特殊戦術航空小隊「クロスボー隊」
コウジが隊長を務める航空隊
主な任務は迎撃任務、航空機開発等である
たった1つの問題は戦闘隊員2人、整備員8人の超最低人数であるということである
練度に関しては申し分のない程でシュトリゴン・ヴァンピールに次いでいた

friend or enemey?

昨年、祖国がエメリアに敗北し、降伏した。また多くの人の命が散っていった。人間とはやはり争うことを止めることはできないのだろうか。いや、その戦争を拡大させ、長引かせ金儲けに走る私利私欲な考え方で一体どれほどの尊い命が、罪のない人々が、それこそ小さな赤子の命までもが失われたのだろうか。そこまで考え、俺、ロウファ・ローズベルト・コウジは思考回路を止めた
昨年まで敵国として戦っていたエメリアのサンロマ市上空を(まぁ海側の上空なんだが)エメリア政府からの要請で哨戒任務にあたっていることを思いだしていた
「まったく、なんだって敵国だった俺たちに自分たちの町周辺の空域を哨戒任務なんてさせんだよ」
「そう言うなクロスボー2、エメリアだってかなりの人材を消費しちまったんだろ。ウチに比べりゃましだけどさ。ま、さっさと哨戒と報告済ませようぜ。そろそろ腹も減ったし飯でも食いに行こうぜ」
「お前の奢りでか?」
「な訳ねえだろ、この野郎 お前はどんな寄生虫みたいな思考回路持ってんのか知りたくなったよ。ワリカンだよ、ワリカン」
「チェッ、つまんね~の」
「うるせぇ文句があるなら来んな俺一人で行く」
「あ、こら抜け駆けしてんじゃねえよ。」
面倒な奴だな相変わらず
『こちらサン・ロマコントロール。クロスボー隊賑やかなのはいいがあんまり騒がんでくれ、こっちはこっちで書類仕事で大忙しなんだ。あんまり仕事を増やすのは勘弁だぜ(笑)』
おっといけないな任務に集中集中っと
ん?何だ?この反応は、少しの間の思考の末、俺の僚機であるクロスボー2ことイーディス、ジャック・シルバー・マーティン中佐への通信回路を開いた
「クロスボー1より2へレーダーに何か映ってないか?」
「2より1へこっちもレーダーで確認中・・・って何だこりゃ?こんなバカデカイのがいつの間に?」
どうやら俺だけでなく2番機も見えているようだ。そうなると・・やっぱりコントロールにも見えてるはずだが
『こちらサン・ロマコントロール。クロスボー1、2へ貴機の前方に何か見えるか?こちらのレーダーではアンノウンを捕捉した』
やっぱり見えているようだな。現状、付近の空域を飛んでいるのは俺達クロスボーのみだから俺達が行って『アンノウン』を確かめなくてはならない。
「クロスボー1よりサン・ロマコントロールへ当機はこれよりアンノウンへの接触を行う。アンノウンより攻撃を受けた場合こちらで撃破してもよろしいか?」
少し沈黙の後、返答がきた。やっぱり敵どうしだった奴が敵国の空を守るんだら本来なら俺達エストバキア側の人間じゃなく自国のエース達にやってもらうのがいいに決まってる。だがサン・ロマコントロールからの返答は予想とは違うものだった
『こちらサン・ロマコントロール、クロスボー、増援は要るか?今回に限って受け付けてやるよ。増援は出るか分からんがあまり期待しないでくれ、だがな』
「なんだ」
『必ず帰って来い』
「おしゃべりはそこまでにしようぜ」
そろそろ行かんとアンノウンが逃げるしな。このまま進んでノルデンナヴィクに向かわれでもしたら色々と面倒だし
ん?アンノウンがこっちに向かって来ているのか?そう思った瞬間、俺は2番機に回避を命じ、俺自身も悪寒を感じながら回避体制に入った。
しばらくするとさっきまで俺達が居た空間を禍々しいほどに赤い光が駆けぬけていった。
「おい、クロスボー2より1へ、何だあの攻撃は、アンノウンからなのか?」
2番機はあの光芒が信じられないといった感じだった。正直なところ俺だって信じられない。いや信じられる訳がなかった。あの光芒は間違いなくレーザー以外の何者でもなかった。何故ならレーザー兵器搭載の機体なんて環太平洋のときのラーズグリーズの中の1機が使っていたADF-01FALKENしか思い当たらなかったからだ。ただ、ラーズグリーズはどうなったかは知らないがFALKEN自体はオーシアの何処かに置いてあるんじゃないかと思う。
この間の約2秒間もアンノウンの攻撃は続いていたが、俺達は避けながらアンノウンへ接近していた。
「チッ 銃弾の雨ならぬレーザーの雨ってか!?威力の差が有りすぎだっての」
「まぁ、レーザーなら当たらなければ
どうとでもなるさ。それに誰が言ってたぞ当たらなければどうと言うことは無いって」
全くもってその通りだ。あれには当たりたくもないが、当たる気もない。死にたくないしな。
「クロスボー1よりサン・ロマコントロールへ、アンノウンより攻撃を受けている。繰り返す、アンノウンより攻撃を受けている」
一応サン・ロマコントロールへ通信を送っておいた。即行で返事がきた。
『こちらサン・ロマコントロール、本当か両機とも無傷だろうな?上層部からの伝達事項だ。アンノウンに接近し、データを送って欲しいとのことだ。データ送信が可能であっても不可能であっても撃墜命令に変更はない。あぁ、それと』
「なんだ」
『徹底的に叩き潰してして来いってさ。出来るか?』
「誰に言ってんだよ。誰に」
コントロールとの通信を終え、2番機と連絡を取る。
「1より2へ聞いていたな」
「2より1へ聞いてたよ。了解。叩き潰すとするか」
ようやくアンノウンを目視することのできる距離についていた。しかし俺達はアンノウンと示された物体もとい大型爆撃機B-2スピリットに似たような黒い物体に絶句した。
「何だありゃ」
「気味が悪いな」
データ収集をさくさく終わらせた後、送信を完了させた瞬間また俺はあの時の悪寒を感じ、回避機動をとった。
「っ!!」
「っ!!クロスボー1!!この野郎何しやがる!!」
クロスボー2が叫ぶ俺は無事を伝え、敵とみなしたアンノウンへの攻撃を開始した。
「クロスボー1より2へ交戦の許可はおりてんだ。いくぞ!!クロスボー1、エンゲージ!!」
「了解!!クロスボー2、エンゲージ、覚悟しやがれ!」
編隊を解き、お互いに交戦を開始。俺は回り込みながら”奴,,を観察する。
よく見たらB-2に似ていても上から見たらそれはキモイの一言しか言いたくなくなった。
何せ下側は禍々しい赤一色しかないからだ。
閑話休題。俺も攻撃ポジションへ着いたことだしそろそろ行くか。
スロットを最大に近い位置で止め、奴をロックし、攻撃を開始した
「クロスボー1、FOX3、FOX3」
中距離AAMを撃ったすぐ後に兵装切り替えスイッチを押し、
「FOX2、FOX2」
短射程AAMを撃つ。H・H(ヘッド・トゥ・ヘッド)からの攻撃のためすぐに回避起動へ。2番機がそれに続く
「イーディス!FOX3!FOX3!」
何故か俺がいつも先に中距離撃つのにイーディスの奴のが俺より先に当たっていることが多いのが少し不思議に思っていたが今回はそれが功を機した。イーディスが撃ったミサイルが当たり俺の中距離AAMが当たった時にある物がキラリと光っているのが見えた。しかも奴の胴内に。短射程AAMは奴がチャフらしき物をまきかわされたがレーダーは奴の中央に高熱源の反応があったことを俺に伝えていた。
「クロスボー1より2へ奴の内部に高熱源の反応があった。」
「本当か」
「ああ、俺が考えるに奴の弱点と見て間違いないだろう」
「なるほどな、要するにそこを狙えば奴は落ちると」
「そうだ」
もはやそれしかないと俺は確信した何故確信したかってそんなもんカンだ!カン
「了解、死んだら道連れだかんな」
「勘弁してくれよ。それより、お前が短射程AAMをノーロックで撃ってくれ弱点がどこにあるか探してそこにガンを叩き込む」
「アイ・サー。行くぜ」
2番機がノーロックで短射程AAM発射しかも2発も
「FOX2!FOX2!」
来た来た。2番機のミサイルは敵機の鼻っ面へ突っ込んだ。前が壊れて中が丸見えだ。例の赤い物体も。
「そこか!2行くぞ!」
「了解」
2番機と並走しながらA/Bを全開にした。
「インガンレンジ・ファイアー!!」
2人同時に叫んだ
見事に奴の破壊された部分から赤い物体を貫通しガラスが割れたような音をして砕け散った。
「よっしゃー終わった~」
イーディスの奴が歓声の声を上げるのを聞きながらサン・ロマコントロールへと俺は任務完了を伝えようとした。
「こちらクロスボー1、サン・ロマコントロールへアンノウンの排除に成功した。これより帰投・・・何だ?!」
今なんか衝撃が・・・。
『こちらサン・ロマコントロール、クロスボー1どうかしたのか?』
「いや、今機体に衝撃が走ったような気がしてな・・・。」
気のせいか・・?だが2番機からの通信がふと、気になって振り向いた。そして俺は今俺達が置かれている状況に気付き、俺の時間が止まった気がした。
「こちらクロスボー2、俺もそんな気がす・・・」
「おい。」
「どうした?」
「あいつ、あのデカブツ縮んでねえか?」
目を疑いたくなる光景だった。何せサン・ロマまで半分の距離と思っていたのに気付いたら奴に引き寄せられているんだから。
「ぬあぁぁぁぁっ!どういうことだ、どうなってんだ!?」
「知るか!俺が知りたいわ!」
「ヤバい吸い寄せられる!!うわぁぁぁっ!!」
「うわぁぁぁっ!」
俺はこの瞬間、意識を失った
『こちらサン・ロマコントロール!クロスボー1、2応答せよ!繰り返す!クロスボー1、2応答せよ!』
コントロールからの無線が2人に聞こえることはなかった・・・・・。

第1話「出会い」

1944年4月7日 ブリタニア ウィッチーズ基地内16:10
 突然の警報が基地中に鳴り響いた。たまたま私、坂本美緒は格納庫の側を歩いていたので、すぐにストライカーユニットを起動させていた。
「お前達早くしろ。ネウロイは待ってくれ無いぞ。」
「「「「「「「「了解。」」」」」」」」
 素早い動きで皆が離陸していく。いつも通りにやれば倒せる。私はいつもそう信じている。急がなくてはならない。夕刻を過ぎれば暗闇での戦闘になる。これだけは極力避けなくてはサーニャ1人に負担を掛ける訳にもいかない。だからこそ皆が急いでネウロイを迎え撃つ為に現場へ向かう。
『坂本少佐、聞こえる?ネウロイはそのまま真っ直ぐ行った海上に此方へ向かってくる大型のネウロイが2つよ。』
「分かった。全員聞いていたな。大型2機。それ以外は居ないらしい。私と宮藤で大型を攪乱する。他の者は隙を突いて仕留めるんだ。分かったな?」
「了解。しかし大型とはいえ、たったの2機だと?我々を舐めているのか、ネウロイの奴らは。」
 確かに妙な感じだが、私は違和感を感じていた。
「いい的になるね~。」
そんな会話の後、暫く飛ぶとネウロイが見えてきた。
「全員、攻撃開始!ネウロイを撃墜しろ!」
私の掛け声と共に全員がネウロイに攻撃を始める。そんなに時間も掛からず、1機を撃墜。
「これでも喰らえっ!」
 バルクホルンが怪力で強化したMG42の銃床をネウロイに叩き付けるが、装甲が硬いのか叩いた部分の半分はヒビが入り、もう半分は割れて内部のコアが割れ目から少し覗いた感じになっていた。
「リーネ、あそこを狙え!!」
「はいっ!」
 リーネの対装甲ライフル“ボーイズMK.1”の弾丸にコアを撃ち抜かれネウロイは白いモノに姿を変え四散した。
「ミーナ全ての大型ネウロイを撃墜した。これより...?どうしたミーナ、何かあったのか?」
『少佐、大変よ。その空域に先程よりも大型のネウロイが1機現れたの。それと、ガリア方面から出現した中型のネウロイ約24機程がそちらに向かっています。尚、超大型はその空域に突然現れたの。気を付けて。』
 突然の通信に当然皆疲れた感を出す。出さない者もいるが...
「分かった。皆聞いて...「アァァ■■■Aaa--A■-アァァア!!」何だこの音は!!」
 意味不明な音が周辺に響き渡り、音が止んだと思った瞬間だった。眼前で凄まじい程に眩い閃光がほとばしったのだ。皆ネウロイの攻撃かと一瞬怯んだが、閃光が消えた後彼女らの目の前に現れたのは、余りにも巨大なネウロイだった。
「な、なんて大きさだ。」
「うえぇ~まだ来るの~」
「そう言うなってルッキーニ。さっさと終わらせて帰ろうぜ。」
「お前にしては珍しく意見が合うなリベリアン。早く終わらせて帰るぞ。」
「よし、ネウロイへ攻撃するぞ。」
 彼女達は攻撃に移ろうとしたが、突如ネウロイは彼女らの後方にレーザーを打ち始めた。彼女達は不思議に思いレーザーの行く先を見ながら攻撃していた。この時、超大型ネウロイは501のウィッチ達など眼中に無くウィッチーズの攻撃など無視し、別世界に飛ばされてしまった同胞を殺した相手を見据えていた。
『WANING!WANING!PULL UP! PULL UP!』
機体からの警報が耳に五月蠅く響いたことにより俺は意識を取り戻した。
「んぁ?ってうぉぉっ。高度下がり過ぎだろうがこれぇ!」
危ねぇ危ねぇ。危うく魚のエサになるとこだった。
『ここどこだ?!』
「うぉっ生きてた!」
『生きてるよっ!』
 死んだのかとと思っ...
『余計なこと考えてんじゃねーだろーな、サジット。』
「!?なんで分かった!」
『何年お前と空にいると思ってんだよ。てか考えてたのかよ。』
「しかし、何処なんだここは。」
 行く当てが無いまま飛び続けるのは危険だ。だが、レーダーには反応が無い。おかしい、YFA-45 Alterのレーダー性能はAWACS並みとまではいかないが普通の戦闘機より高い性能のレーダーユニットを積んでいる筈だぞ。
 彼等は10分程飛行を続けてようやくレーダーにポツポツと反応が捉えられるようになっていた。
-ようやくか。にしても何だ?レーダー上の光点の大小の反応の差が激しすぎる。大きいので20m以上か?小さいのは、全てが2m程度だった。2m程度って事は無人機か?-
 そこまで考え俺は2番機に接近して確認しようと提案し、2番機もOKの合図を送ってくれた。タリホー、そう言っても良いくらいの距離になり俺は見えたものに驚いた。何せあのデカブツとそれを攻撃して動く小さなもの-恐らくあれは人だ。しかも生身だ。-が銃弾を叩き込んでいるんだから。デカブツの方は俺達に気付いたらしくレーザーを雨霰と降らせてきた。
『おっと。』
「よっと。」
 互いに攻撃を避け、此方も攻撃態勢に入る。
「クロスボー1より2へさっさと落とすぞ。北西の方位より約24機程がこっちへ接近中だ。」
『2、了解。』
「全兵装の使用を許可する。セーフティロックを解除。」
 俺達は全兵装のセーフティロックを解除し接近する。LASMの射程圏内にはデカブツを捉えてはいるが、電波妨害でも受けているのかロックオン出来ない。仕方ない、HADを睨み付けながらノーロックで発射レリーズを押し込みLASM発射。続けて2番機も発射。
「クロスボー1LASM発射。」
『クロスボー2LASM発射。』
 デカブツの中心目指して真っ直ぐに加速していくLASM。10秒後、着弾を確認。続けてイーディスのLASMが着弾。中央部の高熱源の反応も消えた。内部の熱源を破壊したらしくデカブツは白く砕け散った。
「ENEMEY SHOT DOWN!」
『っしゃあ!』
 デカブツを落とした俺達は即座に気持ちを切り替え、次を...探す必要は無いようだ。それは向こうから此方に来たからだ。機数は約...24機かやってやるさ。
「クロスボー1より2へADMMを使うぞ。」
『ADMMか?了解した、起動させる。』
 早速俺は機体に搭載されているADMMを起動させるべく兵装切り替え用の選択ボタンし押し、ADMMを選択。機体上部とエンジンの間に搭載されたADMMを起動させた。3ヶ所でシャッターが開き内部から本来はイージス艦に積まれているようなVLSランチャーがせり出す。まるで、ようやく出れたと言わんばかりにHMDには既に“あのデカブツ”より小さめの目標が全て映し出されていた。そして俺は、発射コードと共に発射レリーズを押し込む。
「クロスボー1、ドライブ」
『クロスボー2、ドライブ』
 VLSランチャーから12発×2、合計24発の火球が解き放たれ、目標へ向かって加速開始。敵は回避しようとするが、-もう遅い。-そう呟いた。
 ADMMは全弾が命中し周辺に敵が居ない事を確認し、先程銃撃をしていた少女達(少女が戦っている事に驚いたが)へ接近し通信回路を開いた瞬間、
『そこの所属不明機に告ぐ、国籍と所属を明らかにしろ。さもなくば撃墜するぞ。』
と、いきなり言ってきた。
(坂本サイド)
 何だ?大型は私達ウィッチの攻撃など意に介さない感じで我々ではなく、別の方向へ攻撃していた。何故だ?あちらには何も...?この音は...?私は音がする方向を見て、驚愕した。何故なら技術大国と言われたカールスラントですら開発が難航していると言うジェットエンジンを2基も積んだ機体(恐らく戦闘機だろう)が2機、此方へ向かっていたからだ。その2機は、私が辛うじて見える距離であるため他の者は気が付かないか見えないかだった。
「何か聞こえる...。これはジェットサウンド?」
「何だとハルトマ...!これは!?」
 カールスラントの二人組みには聞こえたようだ。“それ”を見ていた私は“それ”から何か白い煙が1つずつ出たのが見えた。一体何だあれは?あの白い煙のようなモノはロケット弾の類だろうか?煙が見えたのか他の者から、
「何ですのあれは?」
「ありゃロケット弾か?」
「多分ロケットだと思うけどなぁ?」
などとそんな声が聞こえた。ロケットのようなモノは真っ直ぐにネウロイに向けて飛翔し、ネウロイに命中した。凄まじい爆音と共にネウロイはコアを破壊され悲鳴に似た音を上げ同時に起こった爆炎と言う名の業火に飲まれ、白く砕け散った。
「何!あんなものでネウロイが...」
「凄い威力だね。ウルスラが見たら喜びそう。」
「なあ、あれ何だ?」
 シャーリーが指差したモノは紛れも無くジェット戦闘機だった。2機のジェット機は私達に近づいた時、何やら箱状の物体が飛び出した。そこから多数の火球が放たれ轟然と中型ネウロイへ向けて飛んで行き全てを撃墜した。皆が唖然となり何も言うことが無かった。私自身も狙われるのではと考えたが、勇気を振り絞って戦闘機に無線で警告を発した。
「そこの所属不明機に告ぐ、国籍と所属を明らかにしろ。さもなくば撃墜するぞ。」

第2話 「二つの世界と背負うもの」

 俺たちは2人してさっきの通信に驚くしかなかった。まだ20歳にも満たない女性が飛んでいるのを見て如何なものと考えていたが返信をしないといけない事に気が付いて少し慌てて通信を返す。
「こちらはエストバキア連邦空軍第3特殊戦術航空小隊クロスボー隊所属クロスボー1だ。」
『エストバキア?何を言ってるのだ?そんな国は存在しないぞ。』
『そんなバカな!ならあんたらが知っている国を全て言ってくれ。知ってる国が無きゃ1に丸投げするぞ。』
何で丸投げするんだよ俺に。ん~まあ良いか。
 話して貰った国は、扶桑、リベリオン、カールスラント、ガリア、ブリタニア、オラーシャ、スオムス、ロマーニャなど全く持って分からない国名ばかりだった。
「悪いが聞いた事の無い国名ばかりだ。それと一応名乗っておこうか。俺はロウファ・ローズベルト・コウジ、階級は大佐だ。それでもう1人は…」
『ジャック・シルバー・マーティン、階級は中佐だ。』
『私は坂本美緒。扶桑皇国海軍遣欧艦隊第24航空戦隊288航空隊、階級は少佐だ。』
「了解坂本少佐。頼み事があるのだが宜しいか?」
『構わないが。』
「助かる。どこかに降りられそうな所は無いか?当ても無くこのまま飛び続けるのは危険と考えているが。」
『分かった。私達の基地が近くにある。そこでも構わないか?』
『少佐本気か!こいつらはネウロイかもしれないんだぞ!!』
 ん?ネウロイ?もしかしてあの黒い奴の事か?
『大丈夫だ。魔眼でコアを探したが内部には一切見当たらなかった。それにもう日が沈む。これ以上ここに居るのは危険だ。』
『しかし...』
 何か訳アリのようだな。
『ミーナ聞こえるか、私だ。これより帰投する。それと...戦闘機が2機基地に来るが大丈夫か?』
『分かりました。その戦闘機はネウロイではないのね?レーダーに映っていないから。』
『ああ、ネウロイでは無い。本当かミーナ、本当にレーダーに映っていないのか?』
『ええ。』
色々言ってるが、今は気にしない。暫く飛ぶと中世ヨーロッパ時代にあったような城が見えてきた。あちこちに高角砲やボフォース4連装機銃とかが見えるな。確実に侵入者扱いだこれは。さあて、鬼が出るか、蛇が出るかだな。どっちも遠慮したいが。
「少佐、その戦闘機の形状と色は分かりますか?」
『そうだな、機首が突き出した感じの流線型の機体に三角翼が付いていて機首のすぐ後ろに細長い補助翼が4つ付いている。色は隊長機らしいのは漆黒に、少し不気味だが返り血を浴びたようなペイントが施されている。それと2番機らしいのは黒にグレーのラインが入っている。2機とも同じ形状でジェットエンジンを2基ずつ積んでいるようだな。』
「レシプロでは無いのね?」
一応再確認しておく。
『ああ。影も形も無い』
「武装の類は?」
『主翼と思われる場所に2箇所外側に小さいロケット弾状の物と内側に外側のより大きい物を左右にぶら下げている。後の武装の類と固定武器に関しては全く見られない。』
「了解。では『待ってくれミーナ。』?」
『戦闘中に中型があっという間にレーダーから消えなかったか?』
「ええ、ほとんど一瞬だったわ。」
『そうか。実はな、中型を全滅させたのは今私達と飛んでいる戦闘機達がやったんだ。』
「!どうやってか分かりますか?」
『ああ、正直信じられんが戦闘機から上下合わせて3基の箱状の物体が出てきたと思ったら中型と同じ数の小さな誘導弾を撃ち出して中型をあっという間に破壊したんだ。』
「そう…分かりました。すぐに帰投して下さい。」
『了解した。』
 それだけ話すと私、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケは双眼鏡で外を見ていた。美緒やトゥルーデ達に引っ付くような形で少し高い位置に報告のあった戦闘機が2機。後ろの戦闘機は兎も角、前の戦闘機は異彩を放っている。形状等は似ているが非常に認識しにくかった。うっすらと闇に浮かぶ赤いペイントだけはよく見えた。あれだとネウロイに間違えられて撃たれてそうね。甲高く、それでいて腹に響くようなジェットノイズ。それを聴きながら私は警備隊の詰め所へ電話をした。

 見えてきた城に彼女らは降りていくからにはここが彼女らの基地なのか。こちらも降下体勢を取ると準備に入るがここまで来て問題が発生した。とにかく滑走路が短いのだ。離陸する分には離陸時の加速度を通常より早めれば離陸できるが着陸に関してはVTOLを備えている機体なのでそれを使えば何とか着陸は出来るからさしたる問題では無いが。
「クロスボー1より2へ。そろそろ降りるぞ降下準備はいいか?」
『2、OKだ。』
 俺達は彼女らが降りた滑走路へ接近したとき通信が入った。
『こちらウィッチーズ基地管制塔。上空の戦闘機、着陸を許可します。尚、着陸後はエンジンを切り両手を上げて降りてきなさい。』
 早速蛇が来たか。こんな訳のわからない所で死んでたまるか。1度着陸を安定させる為に基地上空をフライパスし降下体勢をとる。感圧式タッチパネルの『VTOL MODE』を選択、エンジンノズルが下方45度に稼動しカナードの少し後ろと後輪基部の間近に装備されたVTOL補佐用スラスターが起動し着陸を安定させるために炎を吐き出す。それに伴い自動でギアダウンし降下開始。基地の滑走路にギアが接地し垂直着陸をした俺達はエンジンを切り、ヘルメットとマスクを取る。そして感圧式タッチパネルに触れ、機体に積まれている自爆システムを起爆決定画面までセットし自身の超小型携帯端末にデータを送り起爆用意を整える。キャノピーを開け機体から降り両手を上げる。すると、基地の中から1台のジープが憲兵達を乗せて走ってきた。
-ん?おいおい、ありゃ1940年代のジープじゃないか。-
憲兵達は俺達を取り囲み、ボディチェックをしながら口々に
「こいつら宇宙人か?」
「宇宙人なわけ無いだろこいつ等は人型のネウロイに違い無いさ。」
などと色々言われたが俺は気にしなかったがチラリと盗み見た相棒のイーディスは若干イラついた顔だった。
-アイツこういう好き勝手に色々言われるのが嫌いだったな。-
俺は護身用の愛銃であり今は亡き父の形見のDE50AEを憲兵に取り上げられそうになり、咄嗟に、
「これは持って行かないでくれ、親父の形見で肌身離さずに持っていたいんだ。」
そう言うと憲兵達は、仕方ないと言う表情で
「なら代わりの物は無いのか?」
と、聞いてきたので、
「分かった。代わりの物だがこいつを渡しておこう。」
代わりに軍から支給されてからDE50AEと並んで未だに使い続けているグロック18Cを渡した。俺とイーディスは憲兵と警備兵達に囲まれて基地内のどこかの部屋に連れて行かれ(恐らく営倉)、
「暫くしたら呼びに来ます。」
そう言って二等兵らしき青年は営倉を出て行った。
「どうなんのかねぇ、俺等は。」
ボヤキを言ったのはイーディスだった。
「さあな、だが言えるのは俺達が何故か別の世界へ来てしまった事、それとこの世界は兵器や服装を見る限り1940年代と見て間違いない事。そして俺達の世界との技術の差が70年もの差がある俺達とAlterがこの世界にとって危険と言う事だ。」
「……」
「恐らく俺達はこの世界で都合の良い強大な力を持った駒としか見られないだろうな。」
そう言うと、
「なあロウファ、俺達は政治に振り回されるのか?そんな事のために俺達はこの世界に跳ばされたのか?」
と、俺達が嫌う事を言ってきたので、
「そんな事で振り回されるのは御免だが、何か訳があってこの世界へ跳ばされたのならその役目を果たすべきだと俺は思うがな。」
そこまで話すと突然ノックが聞こえたので咄嗟に身構える。扉が開き、赤い髪の毛の女性と数名の憲兵が入って来て俺を指差し、来いと言うので俺一人だけ執務室らしき所へ入室を促された。

私は自分の執務室で例の戦闘機隊の隊長と思われる人物を尋問していた。
「あなたの出身国と所属、名前、階級を言って下さい。」
「エストバキア連邦国出身、エストバキア空軍第3特殊戦術航空小隊[クロスボー隊]所属クロスボー隊1番機、コールサインはクロスボー1、TACネームはサジット、本名はロウファ・ローズベルト・コウジ。階級は空軍大佐だ。」
「私はミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ。階級は中佐です。そして、501統合航空団、通称[ストライク・ウィッチーズ]の隊長とこのウィッチーズ基地の司令官を務めています。」
私の予想通り彼は隊長だったようだ。だけど彼は淡々としか喋っていないわね。
「誰でも知らない世界の知らない基地の部屋の中で尋問されたら話す気も失せるさ。」
もしかして私の心を読んだのかしら彼は?それはさておき、別の質問に切り替え問い掛ける。
「何故ここにいるか分かりますか?」
「俺達の世界に突然現れた黒い生物の様な奴を倒したと思ったら、吸い込まれて気が付いたらこの世界に着いたんだ。」
「黒い生物…ネウロイね。」
「ネウロイ?それがあの黒い奴の名前か。」
「ええ。」
彼はネウロイの事を知らない感じだったので私達の戦う相手、ネウロイに関することとそれに伴い世界が互いに協力し合っている事を簡単に話した。彼は私の話を聞いている間、目を瞑っていたが話を聞き終わると顔を少し羨ましそうに私を見た。不思議に思っていたが彼は話を続けようと言い今度は彼らが乗ってきた戦闘機について聞いてみた。
「あなた方の機体、やはりジェットエンジンを積んでいるのですか?」
「ああ。超長期間の対空警戒任務用に燃料制限をほとんど無いように開発したエンジンだ。」
「超長期間、ですか?」
「まあ、な…。」
そんなエンジンがあるとは…。いや、彼等の世界で開発されたものなのだろう。少し信じられなかったが更に別の質問を投げかける。
「レーダーにはあなた方の反応が全く無かったのは一体どういうことなんですか?それとあの機体は見た限りでは、武装が主翼に付いている物体以外固定武装も含めほとんど見られませんが報告では多数のネウロイに対し同じ数の誘導弾を使って撃墜したと聞いていますが。」
そう、彼等の機体はこの基地のレーダーどころかペベンシーのレーダー基地ですら反応しなかったと聞いたのだ。機体はあんなに大きいのに、だ。
「ステルスの意味を知っているか?」
「ステルス、ですか?」
聞き覚えの無い言葉に私は首を傾げた。
「この世界のこの時代にはまだ存在しない技術だが、俺達の世界ではレーダーに映らないで敵に忍び寄り損害を与えることが目的で開発された技術だ。その時に武装が外に出ていてはレーダーに引っかかって奇襲の意味が無い。だから機体の内部に仕舞い込んでいるのさ、機体の形状を変えるだけでなく武器を仕舞うのもステルス性を高めるために必要なのさ。」
私はこの時、彼等と私達の世界と時代には科学技術や考え方に大きな差があるのだと教えられたような気分になった。
「で、そんな強力な力を持った俺達は行く当てが無い。だがどうするかはまだ決めていないが暫くの間でいい。この基地に俺達を仮配備してくれないか?技術提供は出来る範囲で俺達が行うし、ジェットエンジンとジェット機の整備の仕方をこの基地の整備兵に教えてやりたいからな。」
いきなり居場所を提供してくれ代わりに技術提供をするからと言えるくらい彼らには余裕があるらしい。
「あとこの基地においてくれるならあんたらの期待以上に動くつもりだ。」
そう言ってきたので私は、
「少し考えさせて下さい。上層部にもこの事を「この世界の上層部には相談したり、あまり話をしないほうが良いぞ。」?何故ですか?相談すべき事は相談するべきだと思いますが…。」
何がいけないのだろう?
「この時代の政治家や軍の上層部は自分達より優れた存在は自分が上へ上へとのし上がっていく時に邪魔になるから叩かれる格好の的にしかならない。ここに居る俺達の力がその対象になるんだよ。」
「……。」
私が黙ってしまったのには訳があったからだ。連合軍といっても上っ面なだけの事で内部では牽制しあったり足を引っ張ったりとまともでは無いからだった。そこへドアがノックされ、
「ミーナ少しいいか?」
とドアをノックした者がいたが美緒だと分かった。
「どうぞ。」
ドアを開けて坂本美緒少佐が執務室に入ってくる。
「失礼する。大佐で呼ばせてもらいますがそれでもよろしいでしょうか?」
「ああ、どちらかと言うとあまり堅苦しい挨拶とかは苦手でな、気楽にどう呼んでくれても構わない。それにウチの部隊じゃ敬語は数えるくらいしか使わなかったし基本的に友達口調で結構だ少佐に中佐。」
美緒は既に空で大佐とある程度会話をしているんだったわね。私は美緒に大佐達をどうすべきか相談したところ、
「大佐達には私達と一緒にネウロイからブリタニアを、いや世界の空を守るために飛んでもらうのが良いと私は思うがミーナはどうなんだ?」
と彼等をあっさりと受け入れる姿勢でいる。
「そんなにあっさり信用していいのかしら?」
「大丈夫だ。彼等にも彼等の戦闘機にもネウロイのコアは見当たらなかった。それに戦闘機で無くとも飛行機には基地や整備が必要になってくるんだ。彼等の力は非常に強力だからもし、私達の手に負えないネウロイが現れたとしたら代わりに戦ってくれる心強い味方になる。ちょうど良いじゃないか。」
そう言う美緒に私は少し安心していた。これで私も少しは彼等を信用できる気がしていた。そこへ、
「話してる最中に悪いんだが、俺ともう一人の機体の整備と自爆システムの解除が済んでいないから格納庫へ行って良いか?」
え、今大佐は何て言ったの?自爆?自爆って言ったわよねこの人。
「じ、自爆?本当に自爆するんですか?もしそうなった場合はどうなるんですか?」
「う~ん。多分だがこの基地が半分以上吹き飛んで無くなるな。」
私と美緒は固まっていた。いや固まるしかなかった。
「自爆させるだけ勿体無いから解除に行きたいんだが格納庫まで行って良いか?」
「は、はあ。美緒、大佐達を格納庫まで案内してあげてくれる?」
「あ、ああ分かった。」
何か頭が痛いわ…

-ウィッチーズ基地格納庫内-
 ウィッチーズ基地の格納庫に納められた2機の異形の飛行物体の周りに数名のウィッチ達が集まっていた。
「これは戦闘機なのか?それにしては変な形だな。いやに角張っているが。」
「おっきいね~」
「これにジェットエンジンが積まれてるんだよな。」
「そうらしいな。我がカールスラントでも実戦配備には少し遠い状態だと聞いている。」
「ウルスラにこれ見せたら喜ぶかな。」
彼女たちの目の前にある飛行物体はこの世界には存在しない形状をしている上にカラーリングが際立って目立っていた。何せ光すら反射せず、闇に溶け込むような黒いカラーリングは昼間では確実に見つかるし夜間に飛ぶような色合いだからだ。
「この色は夜間に飛ぶ用か?」
「ネウロイみたいだね。」
「ワザと目立って自分の位置を知らせて攻撃を引き付けるためのカラーリングかもな。」
「それはあるかもね~こんなに目立つ色だし。」
彼女たちはそんな事を言っていたが70年も先の技術やパイロットの意向でそんな形状や色合いになっているとは分かるわけが無かった。

-ウィッチーズ基地付近17:50-
 1台の車がウィッチーズ基地に向けてアスファルトで舗装された道路を走っていた。その車の後部座席で、アドルフィーネ・ガランド少将はあることを考えていた。ネウロイの殲滅に関して足並みすらまともに揃わずに互いを牽制し合っていてどうやって祖国が取り戻せるのか。それについて論議を交わすのは私を含めごく僅かの人間だけである。オラーシャのクレイオ准将はまだ私の話が分かる人物である程度意見を言い合うほどではあるが、一応信用してはいる。そんな足並み揃わぬ連合軍上層部にイラついていたが、その考えは突如上空で鳴り響き始めた轟音によって掻き消された。
-この音はまさかジェットか!だがあれは我がカールスラントが去年ようやく飛行段階まで漕ぎ着けた機体であり、この上を飛んでいる筈が無い。それにジェットにしてはMe262より甲高く、そして鋭く響くジェットサウンド。Me262はもっと鈍い感じだった筈だ。-
「ガ、ガランド少将あれを!」
運転手が指差したところにソレは居た。
-間違いなくあれはジェット機だ。しかし何故501の基地の方角に?-
「悪いが急いでくれ。」
「はい。」
 私は車の天板を外しスナイパーライフルを構え、スコープ越しにじっくりと観察し始めた。
-ウィッチーズ基地周辺空域17:10-
 自爆システム解除後、お互いの各機動面に異常が無いか確認したかったのでヴィルケ中佐に飛行許可を求めたところ、許可は出来ないと言ってきたので無理矢理ゴリ押しで頼み込んだら渋々ながらも許可をくれたのでありがたく飛んでいるというわけだ。
「さあ始めるとしようか。」
『2、了解。』
性能テストはいつか分からないのであまり機体に余分な負荷は掛けられない。VTOLを使って離陸し基地から50km程距離を取って訓練開始。イーディスの後ろへ付き、イーディスの動きに合わせてスプリットSから右急旋回。追従機動の確認のためお互いに連絡を取りながら確認していく。
『クロスボー2より1へ機動確認はどうだ?』
「クロスボー1より2へ機動は良好だ。問題は無い。」
『2、了解。次の機動訓練に移行しよう。』
 各機動訓練の途中、道を走る車を確認したのでその上をフライパスし次の各種訓練を終え基地へ向けて進路を取る。雑談などを話しながら帰ったので予定より少し遅い帰還となった。
 格納庫に機体を納め出ようとした時、何故かヴィルケ中佐が格納庫の扉の前に居た。
「どうしたんですかヴィルケ中佐。俺等の出迎えって訳では無いでしょう?」
「え?ええ、まあ少し格納庫の方に用があって。」
中佐の後ろに誰か居る。勘じゃなくとも気配で解かった。まるで獲物を見つけたような気配がヴィルケ中佐の後ろから出ていた。
「ヴィルケ中佐の後ろに居るのは分かっているんだ。出て来たらどうだ?」
声のトーンを1つ下げて後ろの気配に話しかけた。すると気配の主は姿を見せた。凛とした雰囲気の女性だった。ヴィルケ中佐、随分緊張しているが大丈夫か?相当高い階級の人物と俺は判断した。
「君達がジェット機のパイロットみたいだね。先程私が乗っている車の上を通り過ぎた時は驚いたよ。何せ私の祖国のカールスラントですら開発してからやっと一部の戦線で実戦飛行段階までしか到達していないんだからね。だけど私達のジェット機には色々と問題があってね。それに比べて君達のジェット機は素晴らしい性能だね。特にスピード、機動性が桁違いだね。」
YFA-45 Alterの事を絶賛する相手の口調で、何かを感じた俺は自身の背後に愛機を庇う形で立っていた。
「そうか、だったら俺達しがないパイロットに何の用件だ。さっさと言って欲しいんだが。」
要は何を企んでいるんだ。と俺は言いたかった。こんな口調で話しかけられた時は大方の予想が付く。
「話が早くて助かるよ。早速その機体を調べさせてくれないか?」
 やはりな。この時代はジェット機の開発があったのを軍の歴史の授業で習ったのを覚えている。俺の世界でも1940年代にベルカがジェットを作ったとか言ってたな。だが、ある事が分かっているから、
「悪いがそれは断る。その前にまず名乗りな、そうでなくちゃ教えてやる事も教えられん。俺はロウファ・ローズベルト・コウジ空軍大佐だ。あんたは?」
「そうか、私はアドルフィーネ・ガランド少将だ。伝わり方が少し悪かったな。その機体を貸せ、我々に協力しろ。」
おっと、少将だったか。ってこの人かなりの殺気のようなものが出てきたな。コモナ防空戦の時に比べれば人1人の殺気なんて怯みはしないしどうって事は無い。
「何度でも言わせて頂くがな、断る。」
 仕方ないが、少将殿より濃密な殺気を撒き散らすとするか。もはや格納庫内は殺気が充満していた。長いような短いような殺気のぶつかり合いはガランド少将が諦めたことにより決着がついた。デカい戦争を3度も生き抜いてきたからな。
「はぁ。そこまで言うなら私の負けだね。場所を変えて話しをしようか。」
イーディスに後の片付けを任せてヴィルケ中佐の執務室に3人で移動した。
「何故断ったのか教えてくれないか、君も軍人だろう?あの技術があればネウロイを殲滅し祖国を取り戻すことができる日が近づくんだ。」
なるほどね…。祖国解放、か。大陸戦争とエ・エ戦争がそうだったな。
「確かに俺は軍人だ。正規兵だがその前には傭兵として2つ、正規兵として1つ合計3つの戦争を生き延びてきた。」
「その話と私の話には関係が…。」
「確かに関係ないように見えるが意外なことに関係あるんだよなこれが。俺が経験した3つの戦争の内、1つ目の戦争はたった1つの星が俺達の国の空を砕いた。それと同時に発生した大量の難民の押し付け合いに耐えられなくなった大国が中立の国に攻め込んで戦争に発展し終戦までに軍民合わせて死者が20万人を超える戦争だった。2つ目は空が砕かれる前にあった戦争で負けた国が逆恨みを起こして裏から2つの大国を操って戦争を起こしたがその逆恨みはお伽話の英雄が止めてくれた。3つ目は1つ目の星からこぼれた欠片がある国に沢山落ちた。これが俺の国だった。その国は混乱の坩堝に叩き落とされて同朋同士が殺し合う内戦が起こった。長い長い内戦の末に統治されたのにそれまでずっと援助してくれていた隣の国に攻め込んだんだ。そして最後は押し返されて最後の切り札だったシャンデリアも破壊されて俺の祖国エストバキアは負けた。こんな俺だが3回も戦争を生き延び、戦争の表と裏、最初から最後まで見てきたて、戦争で沢山大切なモノを失ったからこそあんたの話を断ったんだ。」
「君の世界の戦争にネウロイはいたのか?」
「ネウロイとやらはいなかったが人間の敵は人間と言う言葉通りに人間同士での戦争、醜い、本当に醜い戦争だった。毎日毎日見知った人が普通に消えていく日常。昨日元気に笑っていた奴が次の日の任務で物言わぬ亡骸になって帰ってくる。共に飛んでいた味方は戦闘が終わった後に後ろを向いて無事か確認して見れば後ろにいない。ああ、撃墜されたのか。もう会うことが出来ないのか。そんな思いを何度も味わい続けたよ。」
 そう言った時、少将と中佐の顔がはっきりと分かるくらいの曇り顔になった。
「俄かには信じ難いが本当に人同士の戦争なのか?」
「そうだ。人間同士の戦争さ。」
「何故人同士の戦争が起きているんですか?」
「宗教の間での考え方・世界の情勢・個人の私利私欲・存在意義・利権を巡っての争い、その他色々な理由が戦争を引き起こす引き金だ。」

 彼に自分の元居た世界の戦争とは人間同士の戦争で多くの人間の命が失われる酷く愚かしく醜い争いの事だと言われた時に私はふと彼の撃墜数(スコア)が聞きたくなったので、
「あえて聞くがスコアは?」
そこまで少なくは無いだろう。3つも戦争を生き抜いているのだから。そう思っていた私の思いは期待は見事に外れていた。
「航空機689機、地上戦闘車両899台、艦船60隻撃沈している。」
私は正直驚いていた。航空機とはいえ彼の機体は戦闘機だ。爆撃機や雷撃機とは違う能力を持つ機体だが、彼らの機体はその全てを担うことができるようだ。
「それだけ戦果を挙げてエースだのなんだの言われても結局のところ俺は殺人者となんら変わりない。」
「どういうことだ?」
「俺は2人に教えたとおりの戦果を残したが、その分だけ人を殺し、乗っていた人間をミンチにして黒焦げの死体に早変わりさせてきた。まあそんなところまで登り詰めてしまうまでに凄く大事なモノを失ってしまったけどな…。そんな俺が言えた義理ではないが、戦争が引き起こす悲劇はもう二度と見たくないし、繰り返したくないんだ。」
彼が言ったことは私の心の中で酷く印象に残った言葉だった。私達の世界もネウロイがいなければ互いに殺し合う戦争が起こっていただろう。私は窓の外に空で互いに傷つけあうウィッチ達の幻を見たような気がした。
「私はそうならないように努力しているつもりだ。それに本当に君の言う人同士の戦争があったことを証明するのは君達とあの機体だけだろう?」
「確かにそうだがこの世界の上層部の奴らに言えば喉から手が出るほどあの機体の情報(データ)が欲しくなってくる。そしてソレをどんな汚い手を使っても自分の所に取り込もうとする。自分の国を解放するためにデータを欲するか、世界のイニシアチブを握るための駒としてデータを欲するのか2つに分かれる。誰しもが好き好んで彼女たちを戦場に送り込んでいるわけではないんだろう?少将、あなたは少なくとも前者だということが確認できた。そこでだ、少しだがジェットエンジンの技術を少将に渡そうと思うんだがどうする?」
 まさか彼の口からそんな言葉がでるとは思わなかった。無論私はこの話に飛び付いた。
「本当か!」
「ああ、男に二言は無いから約束させて貰うが、カールスラントだけで独占するのは駄目だし技術は俺が指定する国にだけ技術を提供をしてくれるか?」
「流石に独占はしないさ。しかし何故提供する国を指定するんだい?」
「技術的に発展していて尚且つ有効活用でき開発に難航してもそれを補うだけの予算を持っている国、この世界で例えればリベリオンとかオラーシャとかな。」
流石にエンジン技術を発展途上国のような国に持って行って新たに維持・開発をするだけの予算が足りるのか?果たして答えはNOだ。大国のオーシアすらF-15Eを維持・開発するのに苦労していると聞いたことがある。途上国に無理をさせるよりも経済力・軍備・開発・維持の4つが揃った国にやってもらい途上国は予算で許す範囲で先進国から購入してもらうのが望ましいが条件としてある規約に同意しないとネウロイ以外との戦闘は出来ないようにしてしまえばなんとかできるはずだ。あくまでも表面上しか効果は無いが裏取引きみたいな感じで国と国の間を輸出入されたら元も子もない。
「そうか私はそれでも良いが、あの機体は何と言う機種と名前なんだい?それと武装に関してもいろいろと聞きたいんだ。そうでなくては本当の意味で君達を信用できないからね。」
「分かった。あの機体は試作型特殊戦略戦闘攻撃機 YFA-45 Alter エストバキア連邦、この世界で言うならスオムスあたりが開発したステルス艦上戦闘攻撃機だ。スピード、機動力、搭載量に原型機より大幅な改良を施した機体だ。武装は固定武装として30mmGAU-8航空機関砲4基、射出型の武装として短射程空対空ミサイル、その他特殊兵装等で戦況が危うくなった場合に押し戻すために作られた正真正銘の戦略戦闘攻撃機だ。」
「戦略戦闘機か…そんな戦闘機が開発されていたのだな君の世界では。」
 ガランド少将とミーナ中佐の顔はまだ少し暗い感じだ。だが言わねばならない。
「補足として言うが、Alterの機動力は少々クセがあって扱いにくいうえに下手な機動をすればベテランのパイロットですら簡単に殺すことが出来てしまう程のピーキーな機動性だ。」
「そんなに高い機動力なんですか?と言う事は必然的に扱う人も選ばれるのでは?」
ミーナ中佐の言うことは尤もだ。確かに原型機のCFA-44よりも少し機動性を高くしただけだが相変わらず「ベテラン殺しのピーキー機動」と言われ、乗れるパイロットも非常に限られているが逆を言えば、「乗りこなせるのであれば機体本来の性能を発揮し格闘戦において高いアドバンテージを得ることが出来る」と言えるのだ。
「まあそのピーキーさも合わさって着陸時以外の安定性が非常に悪いんだ。流石に何かを両立されようとすると相応の代価を払う必要性が出てくる。スピードと機動力と搭載量を追い求めた結果、耐久性と安定性が著しく低下する原因にもなってしまってある意味でイロモノの欠陥機になっているがもう仕方ないことさ。」
 俺はそう言って苦笑した。

私は彼の言った事を頭に叩き込んでいたがどれだけ時間が経ったのか、ふと壁にかかっていた時計を見ると19:50になっていた。
「ああ、いかんな。つい話し込んでしまったようだ。そろそろ戻らなくてはいけないな、今度またジェットの事を時間が空き次第君に聞きに来るつもりでいるからね。では私はこれで。」
 私はそう言うとミーナの執務室を出ようとし立ち止まって彼へ振り返り、
「できれば君を我がカールスラント軍に欲しいものだ。生憎、連合軍やカールスラント軍には君のような戦争の愚かさと醜い面を良く知る人物が不足していてね。君が入隊したければ何時でも連絡をくれ。色よい返事を期待している。では失礼する。」

 あのガランド少将が嬉しそうに話すなんて…、彼は一体何者なのだろう。そう思って私は彼に問い掛けた。
「大佐…でよろしかったでしょうか?よろしければあなたの過去の話を聞かせてもらえないでしょうか?」
 しばしの沈黙。やっぱり聞いてはいけなかったのだろうか。
「俺の世界では人同士の戦争があるといっただろう。3つの戦争であまりにもたくさんの人が、それこそ軍民問わずに死んでいくのを見てきた。その中に俺が何としてでも守りたかったモノも含まれていた。」
「何としてでも守りたかったモノ、ですか?」
「ああ。要するに家族だ。いくらエースになれた俺だって家族はいたさ。」
彼は笑ってはいたが目は笑っていなかった。それだけ辛かったのだろうと思う。彼は服の胸元から小さなペンダントを取り出していた。が、その時私は見えてしまった。彼の首に所々赤い色が付き歪んだ形の指輪がぶら下げられているのが。
「あ、あの大佐、その指輪は?」
「ああこれか?これは俺とある約束をした女性が持っていたものだ。もうこの世にはいないんだが時が流れるのは早いものでな。あいつが逝ってからもう8年も経ってしまった。」
大佐はそう言ってペンダントを開けて中を見ていた。
「1999年4月、俺は今でも覚えている。あの日起こったことを。満天の夜空から流れ星がたくさん降ってきたのを覚えている。それが祖国にも降り注ぎあちこちの町が一夜にして地図上から消え去った。俺が町に生まれ育った故郷の人々も巻き添えにして、俺の親も仲間も奪い去った。だけど正直アレで死んでしまったほうがまだマシだったと思う。その後にあった内戦を見なくて良かったからな。」
「内戦ですか?」
「ああ、俺は内戦が起こる少し前にユージアと言う大陸にマーティンと一緒に移動して初めてそこで戦争を経験したのさ16歳でな。」
 16歳で戦場に立つのは私としては少し遅いように感じるが彼らの世界では二十歳以上の男性からが戦争に引き込まれていくのだそうだ。
「2つの戦争を2人で潜り抜けて祖国に帰っても内戦はまだやっていた。早速残った家族の妹とアイツに連絡は取れたんだが空港を出てからは音沙汰なしだった。嫌な予感を感じて仮住まいの家に帰れば家中穴だらけで家の中に2人の死体があった。守ってやれなかったんだ。妹と婚約者を。その事を引き摺りながら俺は3つ目の戦争に参加した。マーティンの奴と共に飛んでいた。3つ目の戦争も終わって思い出した事が6年間で家族、たくさんの友人や戦友を失ったことだった。敵の超長距離対空砲で、鉄の雨の弾道ミサイルで、敵のエースにバタバタ墜とされていく味方達を俺達は只々見ているしか出来ずに逃げることしか出来なかった事が今でも忘れられないまま脳裏に焼き付いているんだ。」
「随分辛い思いをされたんですね。」
彼は話している間は無表情でずっと虚空を見詰めながら話していた。
「まあな。俺とマーティンの所属していた第3航空大隊は内戦とエ・エ戦争で殆ど壊滅したからな。それを立て直すために分けられた部隊なんだよ。クロスボーはその第3航空大隊が元になっているんだ。」
「すいません余計なことを言わせてしまって。」
彼にだって思い出したくない事だってあるはずなのに言わせてしまった事を詫びるが大佐は静かに首を横に振り、
「構わないさ、聞かなくてもヴィルケ中佐の心中は察した。何も言わなくてもいい。俺自身、他人の傷を穿り返すのは嫌な方だから。」
確かに私はカレーからの撤退時にクルトを失っている。
「こんな辛気臭い話はここまでにして、中佐は俺達クロスボーに501と一緒に飛んで欲しいと言いたいんだろ?」
「その通りです。あなた方には501統合航空団の一員として戦ってくれませんか?」
 私は手を差し出した。しかし彼は私の手を握ろうとしなかった。
「どうかされたんですか?」
「いや、別に問題無い。了解したヴィルケ中佐、501の一員としてネウロイの殲滅及び撃退に助力させてもらう。」
そう言って彼は私と握手してくれた。これで彼らは新たなメンバーとして501に加わった。

第3話 「501とクロスボー」

 ヴィルケ中佐との話を終えた俺は憲兵達に連れられ営倉に戻りマーティンに全てを話すと
「そうか分かった。要するに場所は提供するが代わりにこの基地の一員としてあの黒いのを倒せとそういうことだな?」
と言ってきたがそれ以外は何も聞いて来なかった。それが俺にとっては楽だった。お互いに言いたいことは長い間空にいて大概の意思疎通で分かるようになったからであり、よく理解しあっているからだ。翌日俺はある事に気付いた、
「今日は501の隊員たちと顔合わせだそうだ。」
「ほおー。んで、機体のテストはいつだっけ?」
そう、こいつはスケジュールの把握が苦手だという事を。
「はぁ、朝っぱらから飛ぶってこと忘れてないか?まあ飛ぶといっても同じ機体性能だから俺だけなんだがな。んで昼からは顔合わせらしい。」
そこまで言った時、ドアがノックされ、ヴィルケ中佐が入って来た。
「お2人とも準備は宜しいですか?そろそろ格納庫に行ってテストの準備をお願いします。ガランド少将が待ちきれない感じなので。」
おおっとそれは急がないとな。
「大丈夫だ。今出る。」
そう言って俺達は部屋を出て俺はハンガーにある自分の愛機の元へとマーティンはヴィルケ中佐と共に滑走路脇まで移動していった。

 管制塔に上がった私は格納庫から大佐の機体が出てくるのを見ていた。管制塔から見える彼の機体は大柄でありながらもスマートな流線型のシルエットを描き出し遠目ながらも美しく見える。カラーリングさえ除けば、だが。
「こちら管制塔、ロウファ大佐聞こえるかしら?」
『ああ聞こえるよ。透き通るように綺麗な音色がね。で、上がったらどうするんだ?観測機くらいは出てるよな?』
「上空にはエイラさんとサーニャさんが待機しているので離陸後は彼女たちと合流して下さい。」
『了解。こちらクロスボー1。管制塔、誘導路への進入許可を願う。』
「分かりました。誘導路に入り滑走路まで移動してください。」
『クロスボー1了解。』
そう言って一旦通信を切り大佐が上がるのを待つ。この後彼の機体の性能に驚かされるとも知らずに。

-その頃の地上-
「テストっていってもこの前の機体を飛ばすだけなんだよね?リーネちゃん。」
「うん。なんだかそうみたい。」
「どんなのか楽しみだね~」
「あまり期待しすぎなのではないんですの?宮藤さんにリネットさん。」
「そうでしょうか?あれ?エイラさんにサーニャちゃんは?それにシャーリーさんもいませんよね。」
「エイラさんとサーニャちゃんは空でテストの観測をするんだって。」
「シャーリーならあの機体が音速の壁を超えられるのか自分で確かめたいって言って上がっちゃったよ?」
「リベリアン…ミーナに報告だな。」
「見せてもらおうか。大佐の機体が見せてもらったデータの通りなのかどうかね。」
「私はそんなに期待するだけ無駄だと思うのですが…」
「そんな事言っちゃって~トゥルーデだって興味があるとか言ってたじゃん。」
「そんな事を言った覚えは無い!大体お前は緊張感が無さすぎるんだ!」
「2人ともそこまでにしろ。ほら来たぞ。」
 坂本少佐がそう言って皆が既に扉の開いた格納庫を見るとそこから甲高いエンジン音と共に今回テストを行う機体が出てきた。
「なんであんな色なんだろうね?」
「ネウロイに間違えられてやられないと良いのだがな。」
確かにバルクホルンの言うとおりネウロイに間違えられても可笑しくは無いなとガランドは考えていた。何せ黒いカラーは光すら反射しない色でその上から赤いペイントで返り血を浴びたように彩られているのだから。さあ大佐、君の腕で見せてくれその機体の性能を。その眼はコクピットの中にいるロウファをしっかりと見据えていた。

 格納庫では既に扉が開けられ、俺の機体が待機していた。整備兵たちに軽く挨拶をし素早く機体に乗り込む。コクピットの各種点検、コンソールチェック、エンジン異常なし。全動翼異常なし。油圧系統異常なし。燃料はエンジンがアレだから問題なし。兵装チェックOK。全て異常なし。オールグリーン。
「今からエンジン始動に入るから全整備兵は直ちに当機から離れてくれ。」
 そこまで言ってからエンジン始動開始。エンジンに火が入り甲高いエキゾスートがハンガーに響き渡る。俺はこちらに敬礼をしている整備兵たちにラフな敬礼をしてスロットルレバーを動かし速度を6kmに固定しハンガーから出る。滑走路脇を見ると空で会った少女達とガランド少将が居るのが見えた。ハンガーから完全に出たのを確認しスロットルレバーをもう少し前に動かして速度を8kmに上げ誘導路の手前で機体を止め、管制塔を見る。ちょうど良いタイミングでヴィルケ中佐から通信が来た。
『こちら管制塔、ロウファ大佐聞こえるかしら?』
「ああ聞こえるよ。透き通るように綺麗な音色がね。で、上がったらどうするんだ?観測機くらいは出てるよな?」
『上空にはエイラさんとサーニャさんが待機しているので離陸後は彼女たちと合流して下さい。』
「了解。こちらクロスボー1。管制塔、誘導路への進入許可を願う。」
『分かりました。誘導路に入り滑走路まで移動してください。』
「クロスボー1了解。」
 スロットルレバーを10kmまで上げて固定し誘導路を進む。滑走路に入り機体を止め、再度管制塔に通信を入れる。
「こちらクロスボー1離陸位置に到着。離陸の許可を。」
『こちら管制塔。大佐、離陸を許可します。』
「俺にはクロスボー1と言うコールサインがあるんだ。上がったりする時はコールサインで呼んでくれ。」
『分かりました。では離陸を開始して下さい。』
「了解。クロスボー1離陸開始。」
スロットルレバーを最大まで押し込む。ごうっと言う音と共にアフターバーナーが点火し離陸を開始。スピードと加速と燃料消費高効率に特化したエンジンが唸りを上げアフターバーナーの炎を吹き出しながらスピードメーターがコマ送りで上昇していく。滑走路が短いのでいつもより早めにコクピットの右側に据え付けられたコントロールスティックをHMDに表示される上昇角15度まで手前に引いた。
『ええ!?もう離陸!?』
「離陸完了、これより上空のウィッチ達と合流する。」
『あ、りょ、了解。』
 慌てているヴィルケ中佐との通信を切りレーダーを見ると反応が3つ。ん?ヴィルケ中佐からは2人だと聞いたが何で1人多いんだ。
「こちらはクロスボー隊隊長コールサインはクロスボー1、TACネームはサジット。名前はロウファ・ローズベルト・コウジだ。階級は大佐だ。宜しく頼む。」
『エイラ・イルマタル・ユーティライネンダ。階級は少尉。エイラでいいゾ』
『サーニャ・Ⅴ・リトビャク中尉です。宜しくお願いします。』
『シャーロット・E・イェーガー大尉だ。なあその機体ホントに音速を超えれるのか?』
「ちょっと待てイェーガー大尉。君は当初の観測要員としては聞いていないぞ。まさか飛び入り参加か?」
一発目から音速を超えられるか聞いてきたところを考えるとイェーガー大尉は相当なスピード狂だろうな。まあ来てしまった以上追い返すのは無粋だ。この際だ混ぜてしまえば問題無いだろ。
『何で大尉がいるんだヨ』
『この私が目の前に音速の壁を軽々と超える戦闘機がある以上見逃す手は無いだろ。』
『あの、そろそろテストをしたいのですが良いでしょうか?それと…魔導針が微弱にしか反応しないのですが何故でしょうか?』
 良いタイミングでリトビャク中尉が入って来てくれた。
「こちらはいつでもOKだ。そうか反応が無いか…それはまた後で教えるとしてまず何から測るんだ?」
『まずは最大上昇可能高度です。』
『せめてもの3万フィートは超えろヨ。』
「クロスボー1了解。上昇開始。」
 コントロールスティックを手前に引きピッチ角を90度近くへセットし上昇開始。高度計がコマ送りで急上昇していく事を教えてくれる。
『現在の高度3万5000フィート…。』
『私らよりも高いんダナ。』
「限界高度の、4万9500フィートに、到達!」
上昇開始から1分で最大高度の4万9500フィートに到達する。
-地上-
「離陸も上昇もあっという間だな。」
「あれだけの速度がMe262で得られないだろうか。」
「1分であれだけ登るのか未来の戦闘機は。」
「出来ない事も無いと思うがそれはアイツ次第だな。」
「あんまり時間掛かってないね~」

最高高度4万9500フィートからの景色は格別でつい見惚れてしまった。
『どうしたんだ大佐?もう降りてきていいんだぞ?』
「ああ分かってる。景色なんて滅多に見なかったからなこの位置からの絶景は。」
『そうなのかあとでどんなだったかきかせろよ。』
「はいはい分かったよ。ん、東に見える黒い雲は何だ?随分と嫌な雰囲気をしているが。」
『それはネウロイの巣ダ。危ないから近づくなヨ。』
「ネウロイってあの黒い奴か。そうかいずれはあそこまでの偵察任務が回って来そうだな。さて次段階へ移行するとしよう。」
『次は最高速度です。』
『出し惜しみすんなヨ。』
「出し惜しみなんてしないさ。これよりアクセラレーションテストを開始する。」
高度を6000mまで下げて機体を安定させスロットルレバーを少しずつ前に押し込んでいく。徐々に加速する速度。既にマッハ1を超えマッハ2.5に達していた。
『現在速度マッハ2.5を超えました。速度、更に上昇しています。』
『やっぱり私の考えは間違いじゃなかった!』

-地上-
「え!もう見えなくなっちゃった!」
「なんてスピードですの。」
「15kmをたった30秒で飛行か。(魔眼)」
「ふむ良い性能だな。」
「速いね~」
「速すぎて見えなかった…」
「うじゅ!シャーリー絶対喜んでそう!」
「あのような航空機が我々の世界でも作れるようになるのだろうか。」

 正直なところそろそろ俺の意識が悲鳴を上げていた。いくら俺自身のG耐性が強いとはいえ、よく持って50Gまでしか耐えられない。この数値は高速戦闘時に耐えられるGだ。通常の高機動戦でのG耐性は100Gまでだ。それに今の速度はマッハ3.2。この機体の安全最高速度であり限界速度だ。それ以上は流石に空中分解を起こしかねないという判断の元この速度になっている。尤も更に速度と耐久性の向上を計った機体があったのだが自分たちが元いた世界に置いて来てしまった。
「ここらでもう良いだろう。充分なデータの記録ができただろうしな。」
そう言って俺は機首を基地に向けこの機体自慢の垂直着陸で基地に降り格納庫に機体を納めヴィルケ中佐の執務室でガランド少将と少し話したあと少将は帰って行ったがそこで昼食となり顔合わせのため、ヴィルケ中佐に案内してもらいながら食堂に向かっていた。今は昼食の準備中らしいが501のメンバーはもう全員が集まっているとのこと。

 大佐達はフライトジャケットという服をこれまたフライトスーツの上から着こんでいる。
「何故ジャケットを来ているんですか?暑くはないんですか?」
「ん?ああこれは夏用の薄手のフライトジャケットなんだ。勿論冬服もあるけどあっちのほうがモコモコして結構暖かいんだ。」
「便利な服ですね。」
などと言っている内に食堂に着いた。すると、
「顔合わせって言っても全員が女だろ?まだ女の園には行きたくないな。」
そんなことを言い出したので大佐が、
「ハーレムでも作る気かお前は。止めとけ止めとけ。大体お前、自分の女房の尻に敷かれてただろうが。そうなるのが見え見えだ。」
 うっと言って言葉に詰まるマーティンを横目に食堂のドアノブに手をかける私に、
「あれは放って置いて構わないんだが顔合わせで言うことは自己紹介だけで良いのか?」
とロウファ大佐が聞いてきたので、
「マーティン中佐はそうだけどロウファ大佐には自己紹介のあと質問の受け答えをして下さいね。」
と、頼みながら食堂のドアを開けた。

 結構大きな音を立てて開いたドアに食堂内に居た者の視線が一斉にこちらを向いた。こちらを見ながら近くの者とヒソヒソ話す者、不思議そうに珍しいモノを見るような視線でこちらを見ていた。昼食の準備中とは聞いていたがそんな風には見えなかった。
「ミーナ彼らの処遇についてはどうなっているんだ?」
 坂本少佐がヴィルケ中佐に話しかける。
「ええ彼らは本日付けをもって501統合航空団の一員として私達の仲間に加わる事になった戦闘機パイロットです。では大佐、自己紹介をお願いします。」
「了解。」
 本当にしなくてはならないとは…。仕方ない、面倒だがやるだけやるさ。
「エストバキア空軍第3特殊戦術航空小隊クロスボー隊隊長ロウファ・ローズベルト・コウジだ。階級は大佐。コールサインはクロスボー1、TACネームはサジットだ。出身国はこの世界で言うオラーシャ西部で尚且つスオムスとの国境線に近い辺りの地域の出身だ。まあ訳あって君たちと一緒に飛ばせてもらうことになった。宜しく頼む。」
「えすとばきあってどこの国なの?」
さっそく質問が来たか。
「エストバキアは俺とこれから紹介する俺の僚機の故郷だ。この世界ではオラーシャ西部に位置しているな。つい最近まで隣国と戦争をやっていて負けたのさ。」
「TACネームとはなんだ?」
「まあパイロット個人で決められるパイロット自身の渾名みたいなものさ。」
「コールサインとは?」
「部隊の内外でのパイロットの正式な呼ばれ方だ。ま、今からもう一人を紹介するから質問はその後と言う事で。」
そこで俺はマーティンに紹介の場を譲った。
「ロウファと同じ所属でクロスボー隊2番機のジャック・シルバー・マーティンだ。階級は中佐。コールサインはクロスボー2、TACネームはイーディスだ。ロウファ大佐共々宜しくな。」
「他に質問があれば受け付けよう。」
先程、祖国について聞いてきた黒髪の少女の横に居る赤い服の少女が手を上げて聞いて来た。確かイェーガー大尉だったな。
「なあ、あんた等の機体は音速を超えられるんだろ?あたしを乗せてくれないか?あの機体見たところまだ乗れるスペースがあるみたいだしさ。」
乗せてやりたい気持ちはこちらとて分かっているがどうしても乗せられない理由がある。
「確かに今日のテストで見てもらったデータどおりの性能であの機体は複座型だ。イェーガー大尉には悪いがまだ君を乗せる事は出来ないんだ。」
「でもまだってことは乗れるんだろ。乗れるんだったら乗せてくれてもいいじゃないか。」
「あの機体の機動力特化と言うスペック上非常に強いGが発生するしレシプロとジェットではGが全く違う以上君にはGへの耐性を付けてもらわなくてはならない。ストライカーとやらで出せる限界まで速度を上げてその状態でのGに耐性を付けた上でまた俺の所に来てくれ。そこで俺が良しと判断したなら搭乗の許可を出そう。」
 こういう手合いの奴はああ言っておけば大概やってみせるし機体整備の邪魔をされないで済む。
「ほんとか!その課題をクリアしたら乗せてくれるんだな!」
「ああ約束しよう。」
彼女が喜んでいるのを見ているとマーティンが、
「勝手に乗せても良いのか?仮にもあれは軍事機密だろ。」
小声で言ってきた。俺は、
「軍事機密であっても無くても秘密なんて直ぐにバレちまうもんだろうが。」
と、言ってやると、
「そんなもんかねぇ。」
と言う感じに答えてきた。
「あの機体は未来から来たと聞きましたが。」
「そうだな、確かネウロイとか言う黒いヤツとの戦いに勝って帰ろうとしたらヤツに吸い込まれて気が付いたらこの世界にいた。」
「技術の差に至っては私達の世界とは70年の差があったの。」
ヴィルケ中佐が補足してくれたようだ。まあ、正確には72年差だがな。
「ん?もう昼か。」
少し時間が気になり腕時計を見るともうすぐ正午を示そうとしていた。
「もうすぐお昼になりますから。では質問は一旦ここまでにして食事の時間にしましょうか。食事当番の宮藤さんにリネットさん準備してくださいね。」
その合図で食事当番の2人以外が一斉に手隙になるが俺達はその手隙の者たちに質問され答えられる範囲で答えた。勿論撃墜数は答えてはいない。余計な混乱を招きたくないし知りたければヴィルケ中佐に聞いて欲しかった。

 俺達に渡された昼食は栄養重視で味は度外視と言ったあのクソ不味いレーションではなく彼女たちが作った人の想いが籠ったおいしいカレーだった。
「おお!うまいな。何杯でもいけそうだ。」
そんな事を言うマーティンに、
「いくらうまいからって1人で完食しようとするなよ。」
と言って釘を刺しておく。
「分かってるよ。というかお前は俺の保護者か!」
露骨に反撃してくる辺り本気で完食しようとしていたのか。そういえば随分長い間料理を作っていないな。どうやらこの基地の食事は当番制らしく皆が順番に交代で料理をするとの事。ならば必然的に俺達にもその役目は周ってくるが面倒な事に誰と一緒に作るかはランダムに決まるらしい。ちなみに俺が居る前の座席にヴィルケ中佐、その右に坂本少佐だ。俺の左側にはマーティンが居て俺の右側には昔のベルカ空軍服写真集にあったような前が長い飛行ブラウスを着た少女が居る。見た感じ堅物だ。俺も人の事は言えないが。
「大佐。」
「何だ?」
「私はゲルトルート・バルクホルン大尉だ。この基地と空に居る間はくれぐれも我々の邪魔だけはするなよ。」
ほらやっぱり堅物だ。こういう奴はからかうと面白いがあとで厄介事になるのでからかいはしない。大体邪魔する理由もつもり無いんだが。根は素直なんだろうけどな。
「邪魔はしないさ。君達の後ろに付いて後方支援でもやってるさ。ま、せいぜい死なない程度に攻勢に転じてみたりするよ。」
「そんな時は来ないと思うがな。」
こいつ…。階級が軍曹か二等兵辺りだったら容赦なく殴っていたかもしれない。少しイラッときたがそれは置いておくとしよう。
「もし逆に俺達が君達を邪魔だと思ったらこちらの判断で排除させてもらうよ。人を狙い撃つのには少々自信があってね。」
「……」
流石に反論しなくなった代わりに凄い勢いで睨まれた。
「後の質問はマーティンに任せるからな。」
「ち、ちょっと待て!お前、俺を置いてく気か!?」
「単に機体整備に行くだけだよ。有事に備えるのはいつもの事だろ。そのうち模擬戦もあるだろうからついでにお前の機体も診ておくから。」
 そう言って席を立つ。
「くっ!やっぱり置いてかれるのか俺は。」
と、相棒に全てを押し付けて俺は格納庫へ向かった。

 なんだあの態度は。あれでは私たちが大佐達に劣っているとでも言うような態度ではないか。
「マーティン中佐だったか?大佐はいつもあんな感じなのか?」
「ん~ あいつはお前さんが言った類の言葉には反応しないか睨んで黙らせてることが多いぞ。」
 そういう中佐は私が話している事にさりとて気にもせずに食事を続けている。
「軍人ならば言うべきことはしっかりと言うべきだ。まああのような態度では実力もたかが知れているのだろう。」
「あいつを甘く見ない事だな。その言葉もあいつの前で言わない方が身のためだとあえて忠告しとくぜ。」
「どういう事だ。」
まるで逆に私が大した事が無いように言われているではないか。
「俺はあいつといろんな戦場を駆け抜けてきたからこそロウファの奴がどれだけ強いか良く分かるんだ。実際、模擬戦では1回だけ引き分けになっただけであとは全部俺が負けてる。」
中佐の顔が青褪めているところを見ると相当なトラウマらしいな…
「1回だけ引き分け?中佐の方が強そうに見えるのだが…」
「そりゃ光栄だがあいつの強さは尋常じゃないからな。」
 そんなに強いのならば何故その強さを隠すのだろうか?私ならば隠さずに誇りに思うが…
「あいつは俺の機体が損傷してて上がれない時に近くの基地から敵機に侵攻を受けたという救援要請に応じてただ一人救援に向かったんだ。」
「たった一人でか?無謀にも程があるぞ。」
「ああ確かにそのときは俺も無謀な事はやめろと言ったんだがあの野郎、『それがどうした?今助けに行くのが常識だ。』とか言って周りの制止を振り切って飛んで行ってちゃんと無事に帰ってきたんだ。」
 そう言った中佐は苦笑していたがなんだかそれを誇りに思っているようだった。彼を、大佐を心の底から信頼しているという顔だった。

ACE WITCHES 鋼鉄の翼 第3・5話 機体解説

 本作品での主人公達のオリジナル戦闘機2機です。
試作型戦略戦闘攻撃機YFA-45 Alter
・全長22m
・全高8.5m
・全翼18m
・最高巡航速度:M3.2
・通常巡航速度:M1.25
 使用推進エンジン:フラップアンドホイットニーF200X
武装:固定武装:GAU-8アヴェンジャー30mmガトリング砲×2
   誘導兵器:短射程ミサイル:AAM-9L×2
長距離空対空ミサイル:AAM-120X×8
長距離対艦ミサイル:LASM×2
高機能全方位多目的ミサイルシステム:ADMM×7
戦闘機搭載型電磁ランチャー:EML×2
中距離空対地ミサイル:XAGM×4
UAV×24機
艦上運用:可能
ロウファ達クロスボー隊の主力機として、CFA-44 Nosfertsuをベースとし開発された複座型戦闘攻撃機。CFA-44の優秀性を引き継いでいるがハイG旋回が長く続き失速しやすい癖は残っている。速度性と機動性を維持し搭載量の増加を図ったためウェポンベイ、半埋め込み式翼下パイロンの増加に伴い機体重量も増加したが引き継がれた機動力と新規製造された特殊エンジンが生み出す高い推進力により癖を気にせず戦闘を行なう事が出来るようになっている。しかしその高い推力と機動力によって発生する強烈なGに耐えられるパイロットの選出が非常に難しい。
武装面に関しては非常に優秀であり3種類の兵装のADMM、EML、ECMPは引き継がれているがECMPは機体後部に突き出ている後方警戒レーダーに内蔵されジャミングとESMを担っている。元々対空兵装が優れているため、各種対地対艦ミサイルをはじめ機関砲の追加・増設を行ない対地攻撃能力を向上させている。ADMM、EMLを使用する場合は専用ウェポンベイに搭載するが増設を行なったため、上4、下3の合計7つのスロットが設けられている。以前は排他的装備だったADMMとEMLの同時搭載が可能になっている。EMLをコクピット付近の上部ベイ2つを使用しADMMを残りの上部ベイ4つ下部ベイ3つに搭載できるようになっている。UAVとしてマーレボルジェを最大24機運用可能となっている。
本機はある機体のテストのための予算と時間の都合上2機しか製造されなかったが優秀な推力と機動力、対地攻撃能力を備えた事実上の試作型戦闘攻撃機に仕上がっている。

主な搭乗者(複座時追加搭乗者):ロウファ・ローズベルト・コウジ、ジャック・シルバー・マーティン(坂本美緒、ゲルトルート・バルクホルン、シャーロット・E・イェーガー、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ、サーニャ・V・リトビャク、エイラ・イルマタル・ユーティライネン)
特殊戦術制圧戦闘機CFA-46 ZERO
・全長:24.5m
・全高:9.5m
・全翼:22m
・最高巡航速度M4.2
・通常巡航速度M1.85
使用推進エンジン:フラップアンドホイットニーF200X2
武装:固定武装:GAU-8アヴェンジャー30mmガトリング砲×4
   誘導兵器:短射程ミサイル:AAM-9L×2
長距離空対空ミサイル:AAM-120X×8
広域殲滅散弾ミサイル:MPBM×2
高機能全方位多目的ミサイルシステム:ADMM×7
戦闘機搭載型電磁ランチャー:EML×2
中距離空対地ミサイル:XAGM×4
ウィッチ専用弾薬補給ユニット×3(上面部のみ)
UAV×42
艦上運用:可
 クロスボー隊最後の切り札と言える単座型戦闘機。CFA-44をベースにYFA-45を引っ付け可変翼を取り付けた機体。機動試験においてYFA-45よりも高い機動力を持つことが実証され、実戦投入へ向けての調整がシャンデリア近くのクロスボー隊が駐留するソーン島辺境基地で行なわれていたがシャンデリア陥落の報とともに基地の制圧に来たエメリア軍に接収されたがロウファが戦後のエストバキア残党軍掃討とエメリアの平和のために使用する旨をエメリア政府に告げUAV管制システムを搭載し完成目前まで迫っていたがクロスボー隊がアンノウンとの交戦においてMIA(戦闘中行方不明)認定を受け放置されていたが何者かの手によってウィッチーズの世界に持ち込まれた。
 武装については殆んどYFA-45と同様なため一部割愛するが純粋な制空戦闘機故に対地兵装がXAGMしか積めなくなっている。その他にウィッチが戦場での弾薬欠乏による戦線離脱を可能な限り抑制するためウィッチ専用の空中弾薬補給ユニットを搭載できるようになっている。
YFA-45同様、UAV管制が可能だが新型UAV管制システム:ERI(イーア)を搭載している。ERIはAIとして周囲の状況を瞬時に判断しUAVに適切な指示を与え、侵攻や迎撃、援護といった行動をとらせパイロットの死角を極力減らしている。
主な搭乗者:ロウファ・ローズベルト・コウジ

 本当は最初の設定集に入れる予定でしたが大幅にズレてしまいました。CFA-46は物語の中盤以降の話からちらほら出す予定です。いろいろと難しかったり分かりにくい所もあると思いますがこの後更新予定の本編の方もお楽しみ頂けたら嬉しく思います。

ACE WITCHES 鋼鉄の翼

ACE WITCHES 鋼鉄の翼

  • 小説
  • 短編
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-10

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 主人公設定及び航空小隊設定
  2. friend or enemey?
  3. 第1話「出会い」
  4. 第2話 「二つの世界と背負うもの」
  5. 第3話 「501とクロスボー」
  6. ACE WITCHES 鋼鉄の翼 第3・5話 機体解説