そんなことよりあたしの声を聴け!

そんなことよりあたしの声を聴け!

私にはクレア・ポシェットという名の彼女がいる。

初めに言っておくが、私は女だ。

彼女とは、駅のホームで出会った。

5年間付き合った、彼に結婚はできないと、突き離され

自暴自棄に陥っていた私は駅で自殺をしようとしていて、

・・・それで彼女に助けてもらった。

彼女は手を握り締めて、
力強く私を殴った。

あれは、いたかったな。

それで、クレアったら駅のひとたちに取り押さえられちゃったの。

私はあわてて誤解を解こうとしたんだけど、
いろんなことがいっぺんにおきちゃったものだから、
私のしゃべることひとつひとつがみんなを混乱させちゃったのね。

結局、その場は丸く収まって、私はクレアに連れて行かれて彼女の家までいったの。

あー、もちろん私が自殺しようとしていたことは
クレアがごまかしてくれたのよ。

そして、クレアの家で私は聞かれたわ。
なんであんなことしたのか、って。

そのときのクレアの顔ったらこわかったわ。

それで・・・つい、嘘ついちゃったの。
立ちくらみしちゃって、とかなんとか。

そしたら、クレアは何も言わずに

じっと私をみて、急に抱きしめてきたの

彼女、なにも言わなかったけど

すごく嬉しかった。

それで、何も言わずこの家に置いてくれたの。
きっとわかったんでしょうね。
私には帰る場所なんか無いってことを。

それからは楽しかったわ。
ふたりで歩いたり、一緒にご飯作ったり
キスしたり・・・

今まで当たり前だったあの日常が
一瞬で鮮やかな日々に変わったわ。

たぶん、きっとあの人に染められたんだわ。

クレア色に・・・!

え?ええ、そうよ。この話はあんたたち二匹が来る前の話よ?


―――――――――――へえ?自殺するきだったの、アンタ。


ッ!?ク、クレア!?
あ、あらあら聞いてたの!?


―――あんた驚かそうと思ってゆっくり来てみれば・・・

あ、あの、その、えっと・・・
ご、ごめんなさい


―――ま、いいさ。
あんたがどんな過去を背負っていようが
構わないさ。
あたしはあんたの、・・・今のあんたに惚れてんだからよ。
あんたも好きなだけあたしに惚れな
まあ、それはいつもベッドの中で聞いてんだけど


―――どんなつらいことだろうが、
塗り替えて見せるさ
だから、あたしのことだけを
あたしの声だけを聴いていな


そういうクレアの声はとても、とても優しかった。

そんなことよりあたしの声を聴け!

そんなことよりあたしの声を聴け!

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-10

CC BY
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