いばら道を這ってゆこうか

たったひとりの戦争よ

いくたの逆巻(さかま)く交差点へ

そぞろ雨が

消灯かたぶく信号機が

おぶる老婆に立つ背もなしと

無情にも 沈黙を()いてゆく



地図なき園を

身に余る道具の手立ても知らず

まえへ うしろへ

歩陣(ほじん)の寂しさよ

ときに朦朧(もうろう)と片腕をくみ

夢みがちな足取りへ油も注しつつ



「わたしは、書くべき責すら見誤りました」



とかく河原の道々へ 言い訳を吐き捨てれば

旅の止まり木

(つや)やかな黒毛(くろげ)に首をおとす

道守(みちもり)の鴉



「おまえに、何の責務があろうものか」と



とかくカアカア 晴れ渡る西の天竺(てんじく)



わたしは一人

ねんねこ(まと)い うずまる老婆が一つ

やがて重たくなり申して

(かげ)をのこすか

曇り空のキャンバス



墨絵に刻まれた

砂利音の空しさを聴け



少年心よ

彷徨(さまよ)いたもうな

「いばら道を這ってゆこうか たったひとりの戦争よ ・・・・・・」

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted