寄るべなき母子


子のなきがらを抱え

恋慕(れんぼ)日暮(ひぐれ)にたたずむ母よ

なくなく眠る我が子の耳にも

さめて及ばぬ子守唄(こもりうた)

涙ひとすじ 想えばこそと

枯れる乳房(ちぶさ)にむしゃぶりつくか

赤の娘子(むすめご)

その痩せさらばえた両の手を

生き血潮を 滔々(とうとう)と吸わせ

(たく)してまいったのだろうか



それにもよらず

いまや 都市喧騒へと(かす)みゆく

尊母(そんぼ)らのおもかげよ

子を(うれ)う母の心子知らずというが

されど

寄せて代われる者じゃなし



めぐる春秋(しゅんじゅう)

身籠って痛む親の恩よ

罪業がふかく墓穴(はかあな)をさすり

丸まっちまった思ひ出に腰かけさせる



ああ ああ という(いとま)もなく

(とき)はうつろ



浄玻璃(じょうはり)御鏡(おかがみ)ですら

もはや

情け無い (おのれ)の過ぎ(ざま)

ほくそ笑むばかりであろうよ



賽の河原の 砕石(さいせき)積みし

焦げる夜明けに

(こうべ)垂るるか 青柳(あおやなぎ)

輪廻に夢みる 畜生(ちくしょう)といえども

寄るべなき母子

寄るべなき母子

「子のなきがらを抱え 恋慕の日暮にたたずむ母よ ・・・・・・」

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-07

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