寄るべなき母子
子のなきがらを抱え
恋慕の日暮にたたずむ母よ
なくなく眠る我が子の耳にも
さめて及ばぬ子守唄
涙ひとすじ 想えばこそと
枯れる乳房にむしゃぶりつくか
赤の娘子へ
その痩せさらばえた両の手を
生き血潮を 滔々と吸わせ
託してまいったのだろうか
それにもよらず
いまや 都市喧騒へと霞みゆく
尊母らのおもかげよ
子を憂う母の心子知らずというが
されど
寄せて代われる者じゃなし
めぐる春秋
身籠って痛む親の恩よ
罪業がふかく墓穴をさすり
丸まっちまった思ひ出に腰かけさせる
ああ ああ という暇もなく
時はうつろ
浄玻璃の御鏡ですら
もはや
情け無い 己の過ぎ様を
ほくそ笑むばかりであろうよ
賽の河原の 砕石積みし
焦げる夜明けに
首垂るるか 青柳
輪廻に夢みる 畜生といえども
寄るべなき母子