軟らかき腕で眠る児等

蒼き天河のせせらぎが子守唄。


黄泉の河に流されし蛭児の見る夢は、父と母への慕情の記憶と、
四肢満足の弟妹たちへの嫉妬の念。

蒼き天河のせせらぎが子守唄。
母がくれなかった私への愛。

我は混沌の初。
混沌ゆえに打ち捨てられた児。

骨もなく、ただぐにゃぐにゃとした役立たずと廃棄され河を逝く。

捨てられし者たちよ、来たれ。
我は混沌、そして海。


与えられなかった愛を、優しさを、この軟き肉塊の懐で良いのであらば
我が与えよう。

銀河の果て大海にて神になり、我は海で君等を待つ。

黄泉の河に流されし水子の見る夢は、父の母への慕情の記憶と、
廃棄せし父母たちへの怒りの檄。

我のせせらぎを訊け水子。此れが子守唄。
親のくれぬ愛を代理できぬと解っていても、
我は理解せしめよう。

骨もなく、軟体の片輪として打ち捨てられた原初の捨子たる我は
お前ら水子の涙も消えた肉体をも包み込もう。

黄泉の河に身を投げし傷心の子の見る夢は、父と母への慕情の記憶と、
虐げ、聞く耳を持たぬ父母達への絶望の虚。

我の蒼き天河に揺らげ子共らよ。此れが子守唄。
親のくれぬ愛を代理できぬと解っていても、
我は理解せしめよう。


我等世界より打ち捨てられし混沌の児らよ。
世界の果てにて、我の腕にてその涙を拾おう。

おいで、混沌の海へ。
そして永久に、我とともに愛を謳おう。奏でよう。
仲間たちの為に。共に。

軟らかき腕で眠る児等

軟らかき腕で眠る児等

「愛すべき混沌」という単語をテーマに書いた詩です。

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-07

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