己の中に神を飼え
ある遊覧船に乗った時の話だ。
外が見える個室に、私は座っている。
前に座った初老の男はこう言った。
「神を超えたいか?」
―――ハア。変なのにつかまった。
「まあ、いいじゃないか。聞いていけ」
「おまえが神を超えたいのならまず神を知る必要がある」
―――神を知る?そんなこと言って、神様なんかいるわけないじゃないか。
「そうだな、確かに神はいないが、飼うことはできる」
―――ハア?どこぞのペットなんかじゃないだからよ、実験に使う猫みたいにうろうろ歩いてるわけないじゃないか。
「ハッハッハ!あの学者のことかね・・・、あいつは実に愉快なやつだったよ」
「まあいい。・・・話は変わるが」
―――神を飼うことができるって話かい?
「ああ、そうだ。そいつをてめえんなかに飼って、まずは指針にすんのさ」
「そしてそいつを飼い馴らすのさ、そうすりゃてめえは神を超えるだろうよ」
―――どうするんだよ、そりゃ
男はいなくなっていた。
そして、それから私は神を飼い始めた。
己の中に神を飼え