己の中に神を飼え

己の中に神を飼え

ある遊覧船に乗った時の話だ。


外が見える個室に、私は座っている。

前に座った初老の男はこう言った。

「神を超えたいか?」


―――ハア。変なのにつかまった。

「まあ、いいじゃないか。聞いていけ」

「おまえが神を超えたいのならまず神を知る必要がある」

―――神を知る?そんなこと言って、神様なんかいるわけないじゃないか。

「そうだな、確かに神はいないが、飼うことはできる」

―――ハア?どこぞのペットなんかじゃないだからよ、実験に使う猫みたいにうろうろ歩いてるわけないじゃないか。

「ハッハッハ!あの学者のことかね・・・、あいつは実に愉快なやつだったよ」

「まあいい。・・・話は変わるが」

―――神を飼うことができるって話かい?

「ああ、そうだ。そいつをてめえんなかに飼って、まずは指針にすんのさ」

「そしてそいつを飼い馴らすのさ、そうすりゃてめえは神を超えるだろうよ」

―――どうするんだよ、そりゃ

男はいなくなっていた。

そして、それから私は神を飼い始めた。

己の中に神を飼え

己の中に神を飼え

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-06

CC BY
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