戯言

 こんにちは、見知らぬお方。
ここで会ったのも何かの縁でしょう。一つ、お話をしましょうか。

 これは世界で一番綺麗なお話です。

 ある宇宙、ある時代、とても、それはとても綺麗な星がありました。
その星にはたくさんの生き物が住んでいました。
あるものは空を飛び、またあるものは海を泳いで生きていました。
その生き物の中に「ひと」と言う生き物がいました。ひとはこの世界の綺麗さがわかる、唯一の生き物でした。
 あるときひとは、この世界を支配しているのは自分たちだと思うようになりました。だってひとは他のどの生き物よりも頭が良くて、何でもできてしまうのです。ひとはどんどん木を切って、自分たちの支配を広めました。ひとは気づきませんでした。どんどん星を削りました。全部自分のものだから、何でもしていいのだと思っていました。でもあるとき、ある一人のひとが言いました。「あの綺麗な森はどこに行ってしまったのだろう」ひとはそこでやっと気づきました。この星は綺麗だったのだと。ひとは頭がいいのにこの星の綺麗さに気づいていなかったのでした。
 気づいたとき、それはもう手遅れでした。荒れ果てた星は何も残っておらず、何もできないまま、ひとはたった一人になってしまいました。
 「これからどうしよう」そのひとは考えました。でももう死に行く運命は変えられません。彼は何を思ったのか、星の表面にへばりついた黒いものを剥がして土を耕し始めました。彼はずっと、ずっと、死ぬまでそれを続けました。何を思ってそうしたのか私にはわかりません。彼が死んでしまうと彼の体は腐り、土に溶けました。綺麗に消えて、なくなりました。

 そうして何年が過ぎた頃でしょうか、
ふとそこから一つの草の芽が
綺麗な緑の葉を広げ、生まれて来たのです。
それはとても強く輝いていました。

 それからのことは、私はもう覚えていません。
この綺麗な星が、二度と荒れ果ててしまわぬようにと願っていたような気もします。

 これで、おしまいです。
え?知っているような気がする?
いえいえこれは作り話。
私のただの、戯言ですよ。

戯言

戯言

お暇なら、少し話していきませんか。 もしかしたらみんな知っているかもしれないお話。 ピクシブに上げたものを少し直したものです。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-06

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted