OLの血

OLとは、OLゆえに、OLしかり。

午後7時。あたりは暗くなり始めている。

オフィス街をそそくさと歩く女・大木貴子(28歳)の姿があった。
彼女は塚本商社で働く、いわゆる「OL」である。
今日も残業で帰る時間が遅くなってしまったようだ。
歩行者用の信号が赤になったので、貴子は立ち止まり、今日の出来事をなんとなく思い出していた。

会社に着くやいなや、中高年上司の口臭攻撃に始まり、間髪入れずセクハラ発言を受けたこと。
新入社員のミスにふりまわされ、自分の仕事がおろそかになってしまったこと。
先輩の厳しくも優しい姿に、憧れなのかトキメキなのか……おかしな感情が芽生えたこと。
……会社を出てすぐに100円玉を拾ったこと。

『今日も一日大変だったなぁ』
貴子は心の中でつぶやいた。

そうこうしているうちに、信号は青に変わった。
再び歩き出す貴子。

貴子はふと思い出した。
『そういえば、今日も……』
生理がこないのだ。
3年間付き合っていて、結婚も考えている恋人の直樹にこのことを告げるべきか、否か……。

普通なら、嬉しい「兆し」であるはずなのに、彼女が悩むのには理由があった。
同僚である幹央の存在である。
幹央とは半年ほど前から、体だけの関係なのだ。
時間軸的な事を考えると、この「兆し」は幹央の可能性が高いのである。

「どうしよう」
つい、貴子の本音が漏れた。

人気のない路地に入った貴子。
貴子は幼少のころから、人気のない道が好きなのである。
そして、なによりこの道は近道なのである。
早く家に帰って、お気に入りのバラエティ番組を見たいようである。

貴子は腕時計を確認し、歩くペースを上げはじめ、曲がり角を曲がろうとした。

ドン。

貴子は誰かとぶつかり、しりもちをついてしまった。
「いたた……すいませ」
貴子は驚愕した。

目の前にはなんと、あの暗黒魔神デスグロリアが立っていたのだ。
「あ、あ、あ、あ……!」
貴子は恐怖のあまり、動くことも声を出すこともできずにいた。
失禁もしている。
さらに、貴子のお気に入りのズボンの股の部分に変なシミができ始めた。
生理がきたようである。

めでたしめでたし、と思いきや、暗黒魔神デスグロリアがおもむろに右手をあげた。
貴子の顔は恐怖を通り越して幾分、笑っているようにも見える。
暗黒魔神デスグロリアの右手に闇エネルギーが集まる。
そして、貴子に向けて一気に闇エネルギーを放つ暗黒魔神デスグロリア。

「ぐっぎぎぎっぎぎぎぎーーにーーーーー」
貴子は断末魔を叫びながら体を木っ端微塵にされた。

ニヤッと笑い、消えていく暗黒魔神デスグロリア。
そこに残されたのは貴子の血や飛び散った肉片であった。
この血は果たして……。

OLの血


作:聖家十姉妹(黒パプリカ)

OLの血

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-03

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