帰り道

私は、片田舎の高校に通う女子高生で、今日は早めに授業が終わりました。
田園風景に真っ青な空と大きな入道雲が広がっていました。
私はその風景を見ていたいと思ったので、自転車を乗らずに押して歩いていました。

遠くから暑いのにハットとスーツを着て、ステッキを持った老人が見ている気がしました。
そうしているとだんだんと近づいてきて、何か言っていました。
だんだん声が聞えるようになってきて、聞いてみると、「お前は役立たずで、生きていてもなんの意味もない存在で、低能で、何も成し得ない」というようなことを真剣な表情で言っているようでした。
私は頭がおかしい人が来たと思って、自転車に乗って逃げました。
大分走ったあとで、後ろを振り返ってみると、もうその人は遠くなっていて、こっちも見ていませんでした。
私は安心したのと同時に、失望のような気持ちを覚えました。

家に帰ると誰もいませんでした。
夜になって母が帰ってきました。やさしい笑顔で「ただいま」と言われたとき、うれしくなったすぐあとで、私は誰とも繋がっていない孤立した人間のように感じられました。

帰り道

帰り道

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-03

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