リバースゲーム

この世界に存在する種族。はるか昔から地上には人間がいた。そしてはるか天空には死神と呼ばれる種族がいた。その種族は皆のちに争う。十年程たった後で休戦した。後に死神の種族達は天空へと上がり、二つに分かれた種族となった。片方は善き種族、もう片方は悪しき種族に地上は争わなくなったのにもかかわらずその種族達は双方共に争っていた。
 善き種族の少年ガイは暫くの休暇で自宅へ帰るがその日の夜に再び戦争が起こるのであった。少年はその数時間前に奇妙な音…否、声を聞くことになる。その後姉アルテと再開し、そして共に兄シャルアスが母親を殺すところを目の当たりにする。

♯0 プロローグ

とある昔、ある天界との紛争がおきた。その戦火のなかで一人さ迷う(まよ)少年が銃を構え(かま)ながら震え打つ。
「何故(なぜ)…皆(みんな)…。」呟き(つぶや)周りを見渡(みわた)すと皆は我を忘れ、混乱し敵味方構(かま)わず撃って(う)いる。
「皆…。」と見て呟いていると背後から敵がやってくる。彼らは少年に襲い掛かる(か)、それに気づいた少年は、慌てて武器を構えた途端(とたん)、少年が目を開いた目の前で武器を取り戦う少女。また更に襲い掛かる者たち、少女は何一つ怖がることもなくそのものらに立ち向かう。少年は少女が倒し終わった直後。
「姉ちゃん…!!」その少年は言い叫ぶと少女は振り向き少年に言う。
「何をぼやぼやしている。軍の死神のくせをして、逃げるつもりであったのか?」と少々、冷たい表情でこちらを見ている。少年は情けないと思い沈んでしまうのであった。少女は一つ息を深く吸う。
「さて、早く母さんや兄さん達と合流しなくては、行くぞ。」また少年に背を向ける少女達の目的の地へと向かうのであった。少年は途中(とちゅう)、立ち止まってしまう。
「どうした?もたもたしている暇(ひま)はない。さもないとまた敵が襲ってくるかもしれないのだぞ。」そう呼びかける少女。
「なあ、姉ちゃん、皆おかしいよ…、どうして、味方まで化け物と化している。俺の後輩のやつや、同僚(りょう)までおかしくなっているんだ。」そう言い姉を見ると、姉は一呼吸置き、話す。
「……、数時間前に、奇妙な音、否、声を聞いた覚えはあるだろう。あの声は、人々を混乱に誘う声だ。」と姉は、とても冷たい顔をし、少年の問いかけに答え、そして、また歩き始める。少年は、姉の答えに対し、自分は、はっと思い出すのであった。
時間前には、この紛争がおこってはいなかった。とある施設を出る少年は、背伸びをした後空を見上げると。
「さてと、実家へ帰る(もど)かな…。」そう呟く少年、家へと向かうべく歩き出すのであった。とその時、一人の男が、少年の前に立っている。その男は、少年を見て、微笑(ほほえみ)を向ける。
「ガイ、明日から休暇かいな?」そう言い男は気安くガイという少年に近づくとガイはその男に返す。
「シャル兄、仕事、終わったのか?」こう言い、シャル兄という男はどうやら、この少年の兄弟の様だ。
「せや、上の人が毎日、毎日、仕事ご苦労さん言うて、休暇やと。」そう言って、返答。そしてガイは、笑いながら。
「ははは。まあ、シャル兄も、頑張って(がんば)いるし、御(お)偉(えら)いさんも、一つものごほうびってやつじゃないのか。」とそう言い、歩く二人は、橋の上を渡ろうとした時、ガイは一人の人物に気が付くとその者はどうやら女の子の様で、年齢は八歳くらいから十歳くらいの少女は手に買い物の帰りなのか、買い物袋を持っている。
「姉ちゃん。買い物かい?」そう声を掛けるガイは、その少女へと少し小走りで向かうと、その少女は気付くと少年の方へ顔を向ける。
「ガイ、兄さん。帰った(かえ)の?」と問い返す。シャルは、少女の持っている買い物袋を見て。
「アルテ、これ、ここまで運んできたんか?」そう問いかけるそのアルテという少女はシャルを見上げて口を開く。
「そんなところ。そうそう昨日、また夢を見たんだ。今日のような夢を。」そう言うアルテに、シャルが返す。
「そうかぁ。それはいい夢を見たな。夢が本当になったな。」と。微笑むシャル。
「母さんったら、言った途端。じゃあ、今日は沢山(たくさん)お料理作らなくちゃね。って、私に買い出しを任せたんだ。」と言いつつ、買い物袋を持つのであった。
「姉ちゃん、俺持つよ。」そう言いアルテの持っている買い物袋を取るガイ。進んでシャルも一つ取る。
「ここまで運んで来たんや、俺らに後は任せときや。」と言って。
そして三人は、夕日を前にし、家へと帰る。
やがて家へ到着、一人の女性が三人を出迎える。
「シャルアス、ガイ、アルテ。三人ともお帰りなさい。アルテごくろうさま。」そう笑顔で出迎える。
「母さん、明日から二人とも休暇だって。」そう言われた母は少し嬉しそうに笑顔を見せると調理台へと向かう母はやはり楽しそうであった。
「母さん、今日は御機嫌(ごきげん)だね。」とガイはそんな母を見て言うのであった。それにアルテがわきから。
「母さん、とても楽しみでいたんだよ。今まで、私の夢を頼り(たよ)にしていたみたいなんだ。」そう言って、皿を出す母の手伝いをしている様子で話す。  
「さあ、できたわよ。食べましようか。」そう言い料理のった皿をテーブルの上へと置く母は、優しい表情で接する。そして夕飯を終えたガイとシャル。それぞれの部屋へと入る。そして、ガイはベットの上へ横になる。ガイは天井を見て思う。
 親父は何故、行方不明となったのか、幼い頃を思い出す。
そして、人々は一日の終わりを過ごす。暖かい日常、その時を過ごす者たち。人々はこの先何が起こるのかも知らずに…。その幸せな日常は、幕を降ろす。
そして、異変はおきた。人は混乱に陥り(おちい)、さ迷う者も。この者達とは感じの異なる者達が人々を襲う。ガイはその異変に気が付くと、窓を開けた直後、戦火に包(つつ)まれ、外は戦場と化していた。
「!!あっ、母さん達は!?」慌てて部屋を飛び出すガイその先でシャルに会う。
「ガイ!」そう言い叫ぶ。
「シャル兄、まさか、敵が攻めて来た様だよ。」そう言いシャルアスのもとへと駆け寄る。シャルアスは弟の安否を確認したのかほっと一安心するとまた誰かを捜し(さが)ている。
「母さんと姉ちゃんは?地下室に避難したのか。」そう言うシャルアスは心配な表情で、捜す。
「アルテが…、おらん。母さんはもう既(すで)に避難しとる。でも、アルテだけまだ避難しとらんって。」ガイは何か心当たりがあるのか家を飛び出し、その場を去っていく。
「ガイ!何処(どこ)行くん!?」そう言うシャルアスの声を背に…。その頃ガイはその場所へと急ぐ。その頃、アルテは、急ぎ向かう。何かを探しながら。
「あのカード、きっと、ねらっているに違いない。」そう言いつつ目的の地へと辿り着くと、そこは機材や、機械の部品等の物が大量に存在する。そこは立ち入り禁止と標示してあるのにも構わず入る。直後にガイがやって来る。人の気配を感じたのか、その立ち入り禁止区域に入って行ってしまう。その頃シャルアスは、そわそわしながら母と共に待つ。
「シャル、そんなに心配なら、二人を捜してらっしゃい。」その一言にシャルアスは、母の方を振り向き自分は迷っている表情を見せる。母は暖かい目でシャルアスのことを見ている。そんな母に対して、シャルアスは決心が付く。
「…。母さん、済まん。ここで待っていてや。」そう言い地下室を出ていく。母はとても暖かく、優しく見送る。その一方で、アルテは何処かへと向かい、その姉を追いかけるガイは、その施設の中を見て回る。数多くの機材いや、何らかの部品等、入り口と同じ物が転がっている。ガイはとても奇妙に思う。アルテを追い続ける。そしてようやくアルテに追いつく。
「姉ちゃん!!やっと追いついたぁ。」そう言い、アルテは振り向くと、とても冷たい、闇の奥底にいるような表情であった。
「ガイか…。何故ここにいる?」そのアルテの言葉にガイは不審に思うとその問いかけにガイはおそるおそる答える。
「姉ちゃんがいきなり飛び出してったんだもん。思わず追っかけて来ちゃったよ。」そう返答するガイ。そんなガイに対してアルテは冷たい瞳で話す。
「まあいい…。お前は即刻家へ帰れ、そして母さんの許(もと)へともどれ。」やはり不審なアルテの言葉にガイは、これはおかしいと思う。
「姉ちゃん、さっきからおかしいよ。どうしてしまったんだよ!!」そんなガイの言葉に何も感じないのか、何かに憑(と)りつかれたかのように、冷たい表情で話す。
「…、いいだろう。教えてやろう。ついてくるがよい」そう言い先へと行ってしまう。そう言われ付いていくガイ。やがてある地点へと辿り着いた。そこには、コンピュータの様な機材やクリスタル状の壁と床。アルテは何かを取る。どうやらその何かが目的の様だ。
「ガイ、昔、私達の祖先達が魔帝と善帝に別れる前、地上で暮らしていたらしい。この帝国と魔帝国がある時争いの火が着いた。そして地上の者達をも巻き込み、戦争が勃発(ぼっぱつ)した。地上の者達はただ、平和に暮らしたいのに闘わざるを負えなかった…。それをある者達は二つの帝国を何処か遠く地上の者達の目の届かぬ場所へと消した。その後地上の者達はその二つ国があった事実は忘れられ、何百年も経っていった。」そういうアルテにガイは何となく理解できた。これから姉の言っていることは起こりうるかもしれないと。
「私は、いずれその場から去り、そして禁止されている地上へと降りる。」そう言い、カードの様なものをポケットにしまう。
「姉ちゃん!!何言って…」その途端に、姉は消えて何処かへと行ってしまう。
「ガイ、次にあうときには、お前は私の弟と姉との関係では無い。無論(むろん)、シャルアスともだ。」そう言い残して…。その一方でシャルアスは二人を捜す。戦火の舞う街を。
「二人とも何処行ってもうたんや?!」そう二人の名を呼ぶ兄は捜す。すると、遠くからシャルアスを呼ぶ声、シャルアスはその声を知っているのか。
「ガイ!?何で飛び出して行ったんや?」シャルアスの問いに、何となく答えられなかった。自分の中の何かが『言うな』と言っていると感じたからだ。
「ところで、アルテは?見つかったんか!?」そう聞かれてガイは少し間を置き、黙って首を横に振るのだった。
「心当たりはあったけれど。ゴメン…。」そう言って、偽りの返答をするしかなかった。シャルアスはまた更に心配になってきたのか、辺りを探して回るのだった。
「!?」シャルアスは何かの気配を感じると振り向く。そこには黒髪の少女が立っている。不審に思う二人だが、ガイが声を掛けてみる。
「こんなところで何してるんだい?早く避難…!?」急に刃物が刺さったかの様な感触がし、その感触がする部位を見ると、一本のナイフがガイ自身の身体(からだ)を貫き、血が吹いている。ガイは体制を崩し倒れてしまう。
「ガイ!!!??」シャルアスはそのガイに急ぎ近付くと息はまだ息はあるが、とても荒く、苦しいということを訴えている様子であった。
「…、シャルアスよ。何故気付かぬか…。兄であるお前が…。」その少女はその真の姿を現す。赤茶色の髪に、ガイ、シャルアスと同じアメジスト色の瞳。それはアルテの姿であった。アルテは二人を冷たい瞳と視線を向けて言う。
「!!」ふとシャルアスは体の奥底から何らかの力が湧いてくる様な感覚になるが、その後、彼は人格(ひと)を変えてしまったのであった。その場にはアルテの姿は無かった。そしてガイの姿も…。シャルアスは何処かに消えて行ってしまう。そして、二人は、どこかの地点へ。ガイは目覚める。
「!!姉ちゃん!?…。夢?否(いや)違う…、刺された感触はちゃんとあった…。傷口は!?無い、というより、完治している…?」ガイはその時、アルテが治療したものだということがわかっていた。だが、そこにはアルテの姿がない。辺りを見るが、只(ただ)、戦火の焔(ほのお)の舞う中襲撃してきた兵達と、混乱した自軍や避難する住人達。ガイはひたすら走りさ迷い(まよ)ながら捜すその後の兄シャルアスの行方、姉アルテの奇妙な行為や言動、そして母の安否……。そこへ一人ガイと同じ軍服を着た者が呼ぶ。ガイを知っている者らしい。だが、それは偽り…。その者は狂気に満ちていて、化け物と化している。
「!!どうしたんだ!?くっ!!済まない。」そう言い銃を一発その者に撃つ相手はガイの同僚の様であったがためなのか、ガイは悔やむ(く)のであった。
そして、事態はまた変わる。帝国中に謎の音、否(いな)…、声が鳴り響くのであった。
「何だ!?この音…、否…、声…か?」ガイは頭を抱えて呟く。そこへまた敵がガイを襲う。ガイはまた銃口を向け撃ち続ける。そして息が上がる頃にまた襲ってくるのであった。そして、数時間後へと戻る。
「あの声が引き起こしているのか?停める(と)方法は?」と、問いかけるガイだが、アルテは、首を黙って振る。
「方法はない。それに、シャルアスはこの先いる。急いだ方が良い。」そして急ぐ一行。そこには、一人の男シャルアスと女。母が優しい瞳(め)でいう。
「来てはだめ!!」その途端、その女は息絶えてしまったのであった。
「!!母さん!!?」ガイはその母の亡骸(なきがら)を抱えて、言い叫ぶ。自分の兄のやったことを信じられずにシャルアスのことを睨む(にら)。
「…。ガイか…。ほう、アラルスよ…、目覚めていたのか…。」そう言いアルテのことを呼ぶ。アルテは黙り、消えて行ってしまうのであった。
「…フン…、私に逆らうことはできないぞ…。」そう言い残してシャルアス自身は倒れて意識を失ってしまう。
その後、幾年(いくとし)もの月日がたった。そして紛争も終わり、少年は大人になった。

                                                                                                  ♯0  プロローグ
                                                                                                          End

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  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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