たくさんの神話の物語の中で

♯1 夢の奥底の拾い神

 その日の朝のことだった。一人の少女は朝食を済ませる何処かへと出かける支度をしてから家を出るのであった。その少女の向かった先とはどうやら学校の様だ。校門の前に一人誰かを待つべく立っているがその少女は彼女に気づくと手を振る。
「お早う、夢狩。」そう言い夢狩の方を向くと夢狩の方も笑顔で返すのであった。
「ねえ、ねえ、今朝のニュース見た?」と夢狩は早速その少女に質問を掛ける。その夢狩の質問に頷くのであった。
「見たよ~、連続して起こった事件でしよう、最近物騒ね。」と。夢狩に対して少し怯えた表情で応えるとチャイムが学校から聞こえるのであった。二人は目を合わせると校門から学校内へと入って行くのであった。その後午前の授業が終わり、昼食を食べ始める生徒たちは何か一つ物騒な話題が教室中に食事を通し話題になっている様子なのであった。その様子を見た夢狩は辺りを見渡してからそんな物騒な話ばかりだと思うのであった。そこへ一人何処かのクラスからか夢狩の所へとやってくるのであった。
「お待たせ、夢狩。」と今朝のクラスメイトの様だ。彼女は飲み物と昼食の入った弁当箱をもう一つの机へ置き座るのであった。
「ねえ、カノ。」と一言質問をかけようと夢狩はそのクラスメイトのあだ名をよぶ。とそのカノと呼ばれた者は口を開くのであった。
「言わなくても解っているよ、最近物騒な事件でしよう?」と。夢狩はまさしくその通りだと首を縦に振るのであった。
「…ちょっと具合が悪い…な。」そう顔色が悪そうな表情で呟く(つぶや)とそのカノは微笑み(ほほえ)彼女の肩に手をぽんと置き頷くのであった。
「うん、そうだよ、ね。大丈夫。」そう言いながら夢狩は弁当の包みを開ける。
「…今日はちょっと遅くなるから先に帰ってて。」と食事を摂りながら言う。
「解った。カノ最近忙しいね?」夢狩はふと話題を変えようと話を振るのであった。
「図書カードの整理を頼まれちゃって…ま、仕方ないよ。」そう言い飲み物を飲み言うのであった。そして午後の授業も終わり皆帰ろうと学校を出るのであった。そんな中一人図書カードを整理するカノ。それなら仕方ないと早急に帰る夢狩はその帰り道に図書館へと足を運ぶ。図書館の内部には本棚の中の本が大量に置かれている。そんなとても大きな図書館の一角に置かれている本棚の本を一冊取るそこには〝ギリシャ神話″というタイトルの本だった。彼女は少し楽しそうにめくり見入るのであった。すると何処からか夢狩の頭の中に話しかけてくるのであった。
¬❘ この中に、お前の気になる事の原因がある… ― と。突然話しかけられた夢狩は辺りを見回すが誰もおらず彼女は再びその本を読むのであった。暫くして読み終わった夢狩は本を戻して図書館を後にするのであった。その帰りの道中のことであった。夢狩のカバンから携帯電話の着信音が聞こえてくるのであった。
「…カノ?はい。」誰から来たのか見ると《星降夏音》という名前が。夢狩は出るのであった。するとカノは震えた声で叫ぶのであった。それも何かに襲われている様子で。
「夢狩助けて、化け物が!?」とその台詞に夢狩はわけが解らずに口を開くのであった。
「ど、どうしたの?カノ?!」と。
「いやー!!!!!」その悲鳴と同時に切れてしまうのであった。電話の切れたツーツーという音を聞いたその後で夢狩は何処か異常だと感じ、その携帯電話から聞こえた周りの音を思い出しそこがどこなのかを考えるのであった。するとまた夢狩の頭の中に響く声。
 ― 西区、ここからすぐの所だ… ― とすると夢狩は駆けだしていたのであった。その一方で一人走り怪物に追われる少女の姿が。彼女はその怪物に襲われ逃げ場を失うのであった。彼女は気を失ってしまうのであった。そこへ駆けつけた夢狩は夏音に気づくのであった。
「…嘘…これって!」そう言い夢狩は考えるのであった。夢狩が読んでいた神話の本の中に登場していた怪物にそっくりなのであった。夢狩はとにかく気絶した夏音を何処か安全な場所へと移動させなければと考えた夢狩はそこらへんに落ちていた石を一つ取り怪物の背後目掛けて投げるのであった。怪物は後ろを振り向くのを確認すると夏音のもとへと走り安全な場所へと退避させると怪物は早くも気付いてしまうが夢狩はもう一度石を拾うと怪物目掛けて投げるのであった。怪物は夢狩と夏音を追いかける。するとまた夢狩の頭の中で響く声。
 ― そこの角を左に曲がれ。 ― と。夢狩は思わずその通りに動いてしまうと、移動しているうちに怪物を撒けたようであった。
「……夢、狩、あ、化け物は?!」気が付いた夏音を見た夢狩は首を横に振り答える。
「わからない…でもあの怪物は神話に登場するもの…。早く帰ろう、一緒に。」夢狩は言うと夏音も頷くと立ち上がるのであった。が、二人は未だ疑問を抱いたまま。夢狩は夏音を家まで送ると家へと帰る道中の事であった。先程の事が気になって仕方がないのであった。そして夢狩が頭の中で聞こえた声も気になり出し始めるのだった。そのことを考えたその瞬間、また声が聞こえるのであった。
 ― 私が何であるか知りたいか? ―とその男の声は夢狩に対して声を掛けてくる。夢狩は少し奇妙にも思うとその声に応じてみるのであった。
「だ、誰!?」周囲を見回すが誰もいない。夢狩はますます怖くなるのだった。しかし、その声は不気味にも静かに笑うと再び夢狩に話しかけるのであった。
― 両角夢狩、手のひらを見よ。 ―そう言われ、奇妙かつ更に不気味に思うがその声の通りに従って手のひらを見ると夢狩の手のひらには中の方では三角形や正三角形の多面体の物体を中心に、何やら奇妙にもまがまがしいオーラの様なものを発する中またその多面体の中には黒い塊が渦巻いているのであった。夢狩はそれを見ると不気味に思う。それを察したのかその物体はふわりと正面へと移動するのであった。
― 私を見てそう思うのも理解できる。君は〝私を拾った。〟―
「私は知らない…。」するとその物体は再び手のひらに戻ると浮き上がったまま答えるのであった。
― 君はその日に見た夢を覚えているであろう。あれは私。よってこれは私がヤドリし〝ミカケラ″。― と言われた夢狩はその幼い頃に見た夢でミカケラというものを拾った覚えがおるのであった。
― 私はこの五百年以上も待っていた…。私は誰にも拾われずにさ迷っておった。―
「そのミカケラって何なの、それにあんたの名前は?」そう夢狩は疑問を投げる。
― …名は覚えてはおらぬ…そうだ、君の前に拾った者の名は覚えておるな…名を〝バニルガ〟と呼んでもらおうか、ミカケラは数多の神話の神々が封じられた欠片。我々はそう呼んでいる。― 
「解った。でも何のためにあなた達の様な欠片が存在するの?」更に質問を投げる。
― 君も見ただろう、あの怪物を?君のお友達を先に帰らせたのは正解だ。数多の神話の神々の〝ミカケラ″を探して戦う。王者決定戦の様な感じ。―そう答えたバニルガに夢狩は呆れるとそれを見たバニルガは夢狩に質問を投げかけるのであった。
「…」
― ま、呆れるのも解る。数多の神話が故に沢山のミカケラが存在する。君もきっと自然とエントリーされていたのだろうと私は思う。あれは君の父親と母親… ―そう言われた途端、夢狩は幼き時を思い出すのであった。
「それ以上、言わなくていい…。」とそうバニルガに言うのであった。
― やっぱり今でも引きずっているのか?あれも、数多の神話にいるまだ君が私を拾う数か月前に察知した神がいたみたいだ。― 
「その姿は?」
― 私も知らない…だが、一つだけ、特徴的に炎を使うこと…。―
「……そうだ、さっきの怪物はあんた、知ってるの?」
― うーん、あれは私たちと同じものではない。が、君がよく読んでいる書物…君の世界の字は色々ありすぎて読めない…! ― と頭を抱えたような声を上げるのだった。
「〝ギリシャ神話″…あれは〝冥界の番犬ケルベロス″…。」と夢狩は答える。
「その通りだ。冥界への案内役か、冥界の王のミカケラが存在すると考えられる。」バニルガは答えると夢狩は信じられないと思うとバニルガは少しまがまがしく奇妙なオーラの中心で渦巻いている黒いものは静かにそんな夢狩の態度に察したのか黒く光るのだった。
「……はあ…なんだかゲームの世界でいう日常が非日常になるの…か。」と夢狩やはり信じられぬという表情を見せるがしぶしぶと納得している様子。バニルガは答える。
「君は受け入れるのが少々早い様だが…。」
「…まあ、私はこれでも両親を亡くした時点でそれが〝序章″と思ったから。」そう返答する夢狩は家へと向かい帰りを急ぐのであった。
「…ならばよい、私がまだ君に拾われる前、沢山の者達を見てきたのだが…たいていはそんな非日常とやらは嫌だという者もおれば、やたらと非日常を望む者もおった…しかし君は何処か一つ違う何故だ、何故そんな考え方をもつ?」そう言うバニルガに対して夢狩は首を振るのであった。
「…私にも解らない。何となく、何となく考えて思いついた事と自分が見たものとかで言っているだけだから。あんたにとって不思議かもしれない、でも今とあんたがいた時代や世界と違ってこの今の人間の意識は違うと思う…。」そう答えると、バニルガはますます考えた様子で黒い光を秘かに小さくするのだった。
「…だから君の夢の中にいたのか…。」とバニルがは少し納得したようであった。
「ねえ、家に入りたいんだけど、どうしたらミカケラ、をしまえるの?」そう言い困った様子で答えるのだった。
「それには心配は要らない。意識をミカケラ、つまり私から離せばよい…手のひらをおろし、入り口の方を見よ。そうすれば私のミカケラの姿は消える。」と言われた通りにし家に入ってくるのであった。玄関で靴を脱ぎ二階へと上がろうとした時一人の二十代ぐらいの女性が奥の部屋から出てくるのであった。
「夢狩、お帰りなさい。今日は遅かったわね?」そう声を掛けられると少し驚く。
「あ、ただいま、志架さん…ちょっと図書館で読みふけっちゃって…。」そう答える夢狩なのであった。志架さんとは夢狩の叔母であるが、まだ若い歳の差のためか、夢狩は名前で呼んでいる様であった。
「そう、勉強熱心で結構、結構。夕食もうできているから着替えたら降りてきて。ちなみに今日はあんたが好きなハンバーグと付け合せで人参のグラッセよ。」と笑顔で答えるのであった。
「はい。」とそう夢狩は少し楽しみな表情で返事をし、二階へと上がってくのであった。自分の部屋へと着いた時バニルガから声を掛けてくるのであった。
❘ あの志架という女は何処か若々しいが…。❘ そう聞かれた夢狩は驚くと偶然見たのが机の上であった。
「脅かさないでよ!そっちからも話しかけることできたの?」と制服を脱ぎながら夢狩は言うのであった。
「それは済まないことをした…こちらから干渉できることができるのだ。緊急時には特に私から話しかけることがある。それだけは了承してもらいたい…。」そう奇妙にもまがまがしくもそのミカケラは黒い光を揺らめかせるのであった。
「というより、ひょっとしていつも一緒に持ち歩かなきゃならないの?」そう表情を曇らせ言うのであった。
「人間にしては察しがいいな…その通りだ。」そう言い肯定するのであった。
「まあ、いいや。」
「あと、ミカケラは他のミカケラをやどす者達と戦い、その宿り主のミカケラを破壊し王者となる事、自分以外のミカケラを全て破壊すれば終わる。さもなければ一生涯宿り主と共にある。」そう言い夢狩が机から目を逸らすとバニルガの声は聞こえなくなるのであった。夢狩はその後夕食を済ませ、その日の生活を終える。



                                                                                                        #1 End

たくさんの神話の物語の中で

たくさんの神話の物語の中で

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-09-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted