大切なものはキミ。(仮)
「………?生まれ変わってもまた逢えるかしら」
「…当たり前だろ。必ず見つけるよ」
きっとお互いを想いあっているであろう男女が見つめ合いながら
会話をしている夢を私は最近よくみる。
「んー…よく寝たなぁ…」
まだ眠たい目をこすりながら私は洗面所へ向かった。
一階へ向うとトーストの良い匂いがして
お腹が音をたてた。
「杏!早く支度しなさいよ?」
「はいはい。分かってますって…」
「時間が無いのよ?9時からは式典始まっちゃうんだから…」
「はーい。」
私の家は代々、心通士(しんつうし)という
霊能者の一族であり霊と心を通わせ成仏させる
というのが私達の仕事なのだ。
私達一族は20歳になると心通士と認められ
その証として勾玉の首飾りを譲られる事になっている。
それが今回の式典というものなのだ。
そして、その勾玉には守護神が宿っておりその守護神と
共に活動していく事になっている。
10:00 式典が始まった。
現在一族の長である、お婆ちゃんが出てきた。
「杏。お前も無事成人を迎えた。だから今日これより式典を行う。」
「はい。ありがとうございます。」
「では、この四色の勾玉よりお前の守護神を選びなさい。」
そう言ってお婆ちゃんは箱に入った勾玉を出した。
中には赤、青、緑、透明の勾玉が入っていた。
(どれにしよう……)
「杏、この中で何か通じるものがあるはずだ。それを選びなさい。」
「はい…」
(通じるものがあるはずってなによ…。んー…どれにしよう)
(ミ……ト……)
「ん?」
何か声が聞こえた気がして当たりを見回すがやはり誰もいない。
「気のせいか…」
(な…ぜだ……ミ…ト。お前はおれを)
「え?あなたは誰なの?さっきから何を話しているの?」
「杏?どうしたんだい?」
「さっきからずっと誰かが私に話しかけているの。ミト…って」
「ミト……。その声は何処から聞こえる?」
「んー…」
もう一度耳をすませてみた。
「これだ。この透明の勾玉から聞こえる!」
「ほぉ……。あぁ、ミトとは美都さまの事か!」
「美都様?それって…」
「そう。初代心通士の美都様の事だ。この勾玉は初代が持ち、その後一切誰の守護神にもなること事がなかったと言われる透明の勾玉なのだ。」
「うん…」
「けど、お前はその透明の勾玉から声が聞こえると言った。…つまり杏、お前の守護神はその透明の勾玉なのだ。」
「はい…」
「偶然にも、お前は写真で見た美都様と面影も似ている…」
「はぁ…」
「これも何かの縁だ。その勾玉を選びなさい。」
「はい。それで、この守護神の名前は…」
「リクトだ。では、引き継ぎの言葉を」
「心通士一族である長に、神に誓います。私、仙道杏は今日よりこの透明の勾玉、守護神リクトと共に務め多くの物を救う事を誓います」
「よろしい、仙道杏。今日よりあなたを心通士として認めます。頑張りなさい。」
「ありがとうございます。」
こうして式典は終わり無事、心通士となった。
式典も終わり、数日経つがあの日以来、声は聞こえない。
「…なんでだろう。」
勾玉を月の光にかざしてみた。透明なので月の光色に変わる勾玉は綺麗だった。
「…リクト」
(ミト……)
その時勾玉が光を放った。
「…ちょっと…。なによ…眩しいなぁ…」
「…おい」
声がしたので目を開けるとそこには人が立っていた。
「……あの。どちら様ですか?」
「はぁ?美都、お前が呼んだんだろ」
「……もしかして、守護神のリクト?!」
「ふっ。お前、俺の名前まで忘れ…って、お前誰だ?」
「やっぱり…。私は、仙道杏。あなたの主になったの」
「主…?なに言ってんだ。俺に主なんていない。それより、あの裏切り女は何処行った?早くあいつを出せ」
「いや…」
「なんだ。早くしろ」
「…いないです」
「いないです?そんな訳はない、俺は美都の魂を見つけたから出てきたんだぞ?」
「けど、いないんです…」
「いくら美都に顔が似てるからってそれ以上嘘を言うとお前切るぞ?」
そう言うとリクトは剣を抜いた。
「……亡くなりました」
「は?(笑)」
「もうとっくの昔に亡くなりました…」
「…あの女、死んだのか……?いつだ…」
「知りません。私が生まれるずっと前です。少なくとも20年は経っています…」
「20年も前に死んだ……ふっ、ハハハハ!そうか、あの裏切り女は死んだのか!ざまあみろ。俺を裏切るからこうなるんだ…」
リクトは笑ってはいたけどその瞳はとても悲しそうで何故か見ていられなかった。
大切なものはキミ。(仮)