じもふ！ No,3

2013年夏休み最後の作品…かな？
…宿題も終わってないし(ただ事じゃない)。
今後は1ヶ月に一回出せればいいと思います。
なにぶん普通科なんでテストが多い…

始動

第5班集合場所「中庭」にて。
「糸井…あれって…」
部活の開始時刻に糸井は集合場所で武井と一緒に班長こと刈穂を待っていたのだが、
「まったく分からん。」
糸井より10cmほど低い武井の視線の先 には刈穂がこちらに向かって歩いているのだが、刈穂の全身が黒々しいオーラに覆われているのだ。顔には邪悪な笑みが張り付いている。近くを通る生徒は避けるように道を譲っていく。
「武井…今日の活動って…さ…」
「刈穂さんが決めるって…何も知らないよ？」
「あの人って…今危険なのか…」
「かもしれない…」
刈穂が近づくに連れ糸井と武井の恐怖心が高まっていく。そして、
「やぁ諸君。早いな。」
昨日よりやや声のトーンが低い。顔も邪悪な笑みなので何やら魔王のようにも見えた。糸井は虚勢にも笑い、
「だいぶ経ちますよ…あの…何か御用が？」
「あっ！彼氏さんとか？刈穂さんモテそうだから！そんなことなら前以て言ってくれればいいじゃないですか。」
場が明るくなるだろうとかで冗談を武井は言ったつもりだったのだろう。しかし、武井の発言で刈穂の黒々しいオーラがさらに大きくなった気がした。武井もそれにバカだが気づいたようだ。
彼氏の話で黒々しさが増す。つまりそれって…
どうやら武井は地雷を
「もしかしてフられました？」
踏み込んだ。やっぱりバカだったようです。
「武井⁉お前ってやつは…！」
糸井は武井の勇気と無謀の履き違えた部分に突っ込みつつ、
「刈穂さん！部活行きましょう！いや〜楽しみだな〜」
早めに切り上げここを離れようと試みる。が、
「フフフッ私も1年生に心配されるまでに落ちていたのか…フられて当然だな。」
フられたらしい。進級して2週間ほど。刈穂について何も知らない糸井はどうフォローを入れるべきか悩むが、
「刈穂さん。フられたならもう良くないっすか？もう終わったことですし。」
武井は気を遣って前向き発言をしたのか、はたまたただの無謀な行為の延長か。
「武井…だっけ？」
刈穂の目が武井を捉える。顔はもはや見てられない。糸井は何と無く2人から離れる。
「そうです！自分武井…」
途端に黒々しいオーラが武井に迫った。無謀な武井の行為。哀れかな…
「トイレ行ってきます…」
糸井は尿意を感じたわけではない。自分の目を疑いたかった。少しトイレで頭を冷やそう。断じて刈穂が武井を殺そうとしているなんて何かの錯覚だ。そして、武井が言葉では表せない叫びをあげているのもきっと…
中庭から学校中に誰かの叫びが響き渡った。

第2班集合場所「昇降口前」より。
「今のって…班長の…」
「まさか！怖いこと言うな！」
黒田と宮木は先程中庭から聞こえた叫び声について話し合っていた。
「今度は何をしでかすのかな…」
「大丈夫だ。香坂ちゃんがいる。俺らは遠巻きに眺めとけばいいんだ。」
黒田も宮木も、香坂の存在に感謝していた。部長には劣るが、部長がAだとすると古谷はその下のBだ。ほぼ部長に近いものを持っている。2年後には生徒会長にでもなってそうだ。そんな彼女がここの班にいるのだ。
「香坂ちゃんはいいな〜」
宮木が呟くので黒田も同意の意を込め頷く。
「確かに…面倒見良さそうだし、進んで班長連れてくるって言うし…」
今頃頑張っているのかな…
「バーカ、そこじゃねぇ！もっとあるだろ！思い出せ！あの美しき顔立ちを！」
「あー…部長は可愛い系だけど、香坂は美しい系だよな。…宮木…お前…何で力説？」
そのことで、黒田は少しあることが頭をかすめる。
「香坂のことが好きなんじゃないの？」
香坂の話になるとなぜか力説する宮木に対して「一目惚れ」という可能性を疑った黒田だが、
「かもしんねぇ…」
宮木は否定することはなかった。
「歳下かよ…それでも俺らよりはるか高みにいるんだぜ？」
「そこがいいんだよ。…黒田…俺頑張ってみるわ。」
黒田は古き良き友人の初恋に
「頑張ってみろ…」
ただただそうつぶやくのだった。

第3班集合場所「ゴミ倉庫前」より。
「班長…やっぱりここは無理ですよ。他に変えません？」
反町が新部に訴えるのは、
「確かに若干無理があるかなと…私も迷いましたもの…」
この場所のことだ。元々大きかったこの学校は2つの4階建ての校舎「北校舎」と「南校舎」があり、今は「北校舎」のみ使っているという有様だ。「南校舎」は資金的にも苦しく、取り壊しや改築ができずにいた。「ゴミ倉庫」は南校舎の近くにあり、北校舎とは反対側にあるのだ。さらに「ゴミ倉庫」に行くためには、曲がりくねった道を行かなければならない。木々も生い茂り見通しも悪く、1年生はよく迷うらしい。実際、反町もまよっていた古谷を見かけ案内してあげたのだ。
「何のこと？アハハッ！」
班長の新部は楽しんでいるような感じだ。今だ来ていない班員が迷子になっているであろうに。
「結局先生を探さなきゃダメじゃないっすか。」
「高瀬先生がここにたどり着くのは…厳しいような…」
155cm古谷と同じくらいの身長で耳が少し大きく丸耳と言うよりは、若干尖った耳。イタズラ好きであり、周りからは小悪魔と呼ばれるこの新部は早速高瀬をいじり始めたのだった。
「あの人がたどり着くまで待機な〜」
ニヤニヤと笑うその顔はまさに小悪魔だった。
「「…了解。」」
結局2時間も待ったのだった。

第4班集合場所「体育館前」より。
「全員揃ったか？」
「「「はい！」」」
班長の大山が横一列に並ぶ班員達に問いかけると打てば響くような返事が返ってくる。
「お前らは良かったな。俺の班にはいれて。他の班は…まぁ。」
大山が苦笑する。他の3人もつられて笑う。
「今まともに動けるのは正直我々と1班の連中ぐらいだ。今のうちにチームワークを整えたい。」
こちらは全く問題なく進み出したのであった。

第1班集合場所「校門」より。
「さぁ準備完了？」
「あぁ…」
「はい…」
「出来ました…」
東田と杖本が暗いため流れで暗くなってしまうのは罪ではないと思ってしまう大介に小木が頭をはたく。
「大介までも暗くなったらダメでしょうが！」
「そんなこと…！東田先輩にも言ってくださいよ。」
「これに期待しろと？大介さぁ、これがニコニコ笑顔で出来ました〜なんて言うと思う？出来るのなら1万円出すぞ？」
「雫…俺だって…」
「ほぉ…出来るのか？」
「うっ…何でもない…」
「東田先輩…！」
「ほらぁ…ね？」
「だからって僕に振らないでもらえませんか？」
「さぁて始めますか〜」
「無視ですか⁉」
「うん無視。」
「意図的⁉」
「野木原…部長に遊ばれてるだけ…気付かないの？」
最後の杖本の一言で仕方なく身を引く。それでも、
「気付いてますよ。完全に遊ばれてることくらい…でも…」
「気付いてるならいいけど…私はただ…あなたが…いや…何でもない…」
杖本の瞳は見ていると人を引き込む不思議な力がある。見つめすぎたからだろうか。杖本は大介から視線を外すと軍手をはめ、ゴミ拾いをしようと動き出した。
「よーし。大介は裕子について行くように。1年生の指導は2年生の仕事。女を1人にさせるなよ。さ、拓馬いくよ。」
杖本は校門から出ると西へ、小木達は東へ歩いていく。大介は指示されたように杖本の後ろを追った。

ゴミ拾いを始めて30分。学校からもだいぶ離れて、大介と杖本は黙々と作業をするのだが、
「えーと…」
会話がな〜い！2年生の先輩だし、かなり静かな人だし…すっごく気まずい。さらに自分は女子自体得意ではな〜い！どうしよう…いい加減何か話さなくちゃ…
大介は手に持っているゴミ袋を軽くあげる…おや？
「意外とないんですね…その…ゴミが…」
そう。30分も拾っていれば結構あってもいいのと思うのだが、腰まであるその袋の半分も入っていない。ゴミの大きさもあるかもしれないが、数としては幾分少ないだろう。
「去年もやってたから…というよりは、毎年やってたらしいけど…今年は班活動を取り入れたからみんな別行動になったけど… 」
「え？じゃあ…」
「大丈夫…誰もやらないのは…まずいから…」
杖本は大介を見ることなくゴミを探している 。大介は杖本の横に立ち、彼女の拾ったゴミをゴミ袋に収めていく。なんとなく杖本の横顔を見ると、あることに気づく。
あっ…綺麗な人。今まで気づかなかったのはなぜだろう。正面に立つと瞳が鏡になるからだろうか。よくよく思うと鏡になってしまうほど純粋な瞳なのだ。
「何…？野木原…」
見つめていた視線に気づいたようで、ゴミ拾い開始後初めて大介を見る。
「えぇああ〜と…」
なんて言うべきか…考えてる暇がねぇ！
「先輩綺麗だなと思って…」
違う！何かがおかしい！焦れば焦るほど泥沼にはまっていく！
「…？面白いこと言うんだね…野木原…変わってる…」
クスッと笑う…始めて見た笑顔だが、女子から女性になりつつある大人っぽい美しい笑顔だ。杖本は大介の前に歩いて行ってしまう。が、お下げ髪の後ろ姿から見える耳が赤くなっているのを確認できた。
「…照れてるのか…案外可愛い人かもしれない…」
落ち着きを取り戻した大介は杖本のあとを追いかけるのだった。

「それでさ？武井がよぉ…」
部活が終わり、一緒に下校の約束をしていた糸井と歩いて帰る。家までは徒歩30分はかかるが、山々に囲まれた街のため坂が多く、中央高校は坂の上にあり、自転車はよっぽど脚力のある生徒じゃないと使わない。
「それで武井は？」
「あのバカでも流石に泣いてたな。思いっきり顔面蹴られて、倒れたところ関節技決めちゃうからな…中庭でなにやってんだか…俺怖くなってトイレに逃げたもん。まさか失恋をしてたとは…」
「宇之数…！まさか…！」
「気づいたか…大介…」
二チャリと笑う糸井と驚愕の顔の大介。お互い顔を合わせ、
「「スカートで顔面キック！」」
やはりそうか！そうとなれば！
「見たのか⁉先輩のあれを！」
やや興奮している大介を見て、糸井は大介の肩を叩きつつ、
「…さぁ？」
もったいぶること自体が楽しくて仕方がないと糸井は笑い出す。大介の顔は不満たらたらだ。
「わーったよ。言うよ。なんと…」
大介の顔が真剣になる。ここで真剣になるのが年頃男子なのだ。
「みーちゃった！」
「宇之数…！何色だった…？」
「…聞きたいか？」
「もったいぶんな！」
大介は糸井を叩く。糸井はもったいぶってしまう癖があるようだ。
「黒だよ。素材は…」
「何が黒いんだ？」
「そりゃパン…へ？」
後ろからどこかで聞いた声。若干の恐怖心を感じつつ、恐る恐る振り返ると、糸井の笑顔が固まる。視線の先はそこを見てなかったが、
「やぁ、糸井に野木。仲良いな。」
「野木原です。原が…そっちこそ仲いいじゃないっすか。」
そこにいたのは、小木と刈穂。小木が同じ中学だったのを最近知った。つまり通学路も近いところを通るのだろう。小木とは旧知の仲だったらしい刈穂もたぶん同じだろう。たぶん糸井も本人の登場に顔も向けられないのだろう。
「それで何が何色だったのだ？」
改めて聞いてくる小木に男子2人は困り顔だ。さすがに「刈穂先輩のパンツの色です。」なんて言えるわけがない。ましてや本人の前で。
「それは…お二人の髪の色ですよ。最近の女子は染めちゃう人多いですから…よくいません？小学校の頃は黒髪だったのに中学校になった途端薄く染めて「地毛」として通しちゃう人。それに比べてお二人は綺麗な黒髪で！惚れちゃいそうです！…なぁ大介！」
「お、おう…」
糸井の嘘に乗っておこう。糸井は嘘が苦手なくせにここぞという時は役に立つ。逆に追い込まれなきゃ役に立たないのだ。
「素材とか言ってたけど？ねぇ雫。」
「いやーそれに関しては、お二人の髪は本当に良くお手入れされておられる。まるで…シルクか何かのツヤツヤしている素材のようだと言いたかったのです。」
さりげなく糸井は大介にウインクを送る。中学の時、共にいくつもの危機を乗り越えてきた男。大介は糸井の訴えてきたことがわかった。
まさか刈穂先輩のパンツの素材についてさりげなく教えてくれたのか⁉だとすれば、刈穂先輩は…！そして、先輩の追求をかわし、相手を褒め、自分に話の続きを…恐ろしいやつだ…
見事男子としての危機を乗り越えた大介と糸井は流れで小木と刈穂について行くことにした。
「雫。私さぁもう彼氏できないのかな〜」
「できないできない。あれが最初で最後じゃないの？」
「一度も付き合ったことのない女に言われたくないわ〜」
「残念ね〜もういましたから。」
「拓馬のこと？あれを入れるなよ〜戦友じゃんか。」
「第一高校生の彼氏なんざしれてるよ。ね？宇之数。」
「え？あぁ…自分はまだ付き合ったこともないんで…なんとも…」
「僕も…ですね。」
「でも大介は告られてるんですよ？自分はからっきしですよ。」
「あれは…」
「なになに？詳しく教えて。」
「刈穂先輩！聞かんでください。」
「まぁまぁ部長権限として宇之数の発言を許可します。」
「小木先輩⁉そんな権限…！」
「えーゴホン…これはかれこれ…」
「貴様はしゃべるなー！」
笑い合ってしゃべり合う。決して大介は笑えないが…
「私こっちだから〜」
20分地点で刈穂が3人から離れた。
「あの…小木先輩。」
大介はなんとなくあることを聞いて見る。
「東田先輩ってどんな関係ですか？」
刈穂曰く、戦友なのだが、学校内ではいつも後ろにいるのではないだろうか。だからファンクラブができてもまともな活動ができてないらしい。
「拓馬はねぇ…」
どこか遠くを見て何か懐かしむような視線。ほんの一瞬だが、それは東田が特別な存在なのだということを大介は感じた。
「私の…大切な仲間よ。」
友達ではなく、仲間と称すところがよっぽど大切なのだろう。
「仲間…ですか…」
自分もそう呼べた人はいたのだろうか…
幼馴染の哲彦の顔がふと浮かんだ大介だった。
あいつ今何してんだろうか…

25分地点。大介の家まであと5分。
小木がいなくなって、糸井と2人で帰るのだが、
「前方に3人。後方7人。全員1年生だ。それも文化部だ。」
いきなり糸井が前を向きながら話す。一体何を話しているのか。
「大方、嫉妬したモテないファンクラブの連中だ。分からんなら、次の曲がり角で後ろを注意せよ。」
曲がり角で曲がる。大介はさりげなく後ろをみると、確かにつけられていたようだった。
「ったく…変なやっかみ買われるから嫌なんだ。人気者と仲良くするのは…」
「お前…分かってたのか？いつから？」
「元々小木先輩らをつけてたらしい。下校中なら東田先輩もいないからな。俺は人の気配に敏感でな。」
まさか…あの時2人の顔を見なかったのは、つけてきている連中に気づいたからだったのか？本当に恐ろしいやつだ。
「さぁて…ゲームの始まりだ。どうする？殺気も感じるから襲う気満々だぜ？いい迷惑だ。」
「闘うのか？」
「悪くはない。見るからに俺らよりチビだからな。太ってるやつもいなさそうだから力押しでいけば、10人規模なら突破は可能。逆に俺らの力を見せつければ牽制にもなるだろうよ。」
相手の体格まで確認していたのか…
「でも…先制攻撃はできない。なら逃げるしかなくね？どうする大介？」
相手が攻撃しない限りこちらの攻撃理由が見つからない。相手の数が多いため先制攻撃を受ければ危険かもしれない。
「逃げるか…」
住宅街のブロック塀の曲がり角を曲がった瞬間、走ろうとしたが。
そこで大介の意識はブラックアウトした。

超ライブ派の自分が初めて事細かくキャラ設定を部員全員にして見ました。それなりにどいつを書いても主人公として機能したり…まぁそんなことを言ってたら、第1班の方々に怒られました…東田君の圧力は怖いですね(焦)。
自分個人としては、高瀬先生をもう少しいきたいななんて…
でも…ライブ派の自分はこの先を考えてません！なので自分の知らないストーリーを書いて行こうと思います。できれば他人のアイデアが欲しかったり…