大空

大空

ひらり ひらり
舞い散る 桃色の花弁をくぐって


僕は 再び ここに来た



大きな桜の木の枝を
ゆらり ゆらり

揺らしながら


春の風が 僕の隣を吹き抜けた



桜のじゅうたんを 踏みしめながら
舞い上がる桃色を追って そらを見上げる



ここは 初めて君に出会えた場所

ここは 初めて君と 口付けを交わした場所

ここは 君と僕の 思い出の場所


僕は 隣を見た

君が いるはずだった


幸せそうに 照れくさそうに
笑って
僕の隣に いるはずだった



もう 君とここに来ることはない
もう 君に出会うことは叶わない



そんなことは 分かっていても
いま 君はどこで 何をしているんだろう



いつも 君のことを考えてしまう


ひらり ひらり
桜が舞う

僕は 君が大好きだった そらを見上げる


好きだよ


もう会えなくなってしまった
君に向けて

僕は そう呟いた



ずっと ずっと
好きだった



ひらり ひらり


そっと 風に舞う桜の花弁に
口付けを落としてから


なんだ 君 そこにいたんだ


僕は うえを向いて
微笑んだ



春の 暖かな風が 駆けていき

そらが 幸せそうに 照れくさそうに
笑ってくれた 気がした

大空

大空

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-28

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