~散歩偏~ 無名の丘にて
おひさしぶりです
ももいろです
実は大変申し上げにくいのですが
4回目あたりからシナリオを書き直しています
ご了承ください
今朝、萃香たちがやってきたのは涼しい風が吹き抜ける丘の上
奏香が幻想郷の地上に出るのはこれが初めてである
「どうだい奏香、心地いいだろ?」
そう聞くと、なぜか奏香はボーッと遠くを見つめていた
「奏香?どうかしたのかい?」
奏香の目線の先には山しかなかったが、奏香はその方向をじっと見ていた
というより、視覚をあまり働かせていなかったようだ
「はっ…あっち!」
不意に遠くの岩を指差した奏香
萃香には何のことかさっぱりだった
「あっち…?」
「うん…背の高い…すごく速い」
(背が高くて…速い…空…)
萃香は察した
(文か…ひそひそしてないで出て来ればいいのに…)
「風の当たり方がおかしい…風を操れるのかな…」
奏香はすこしおびえていた
「大丈夫だよ、奏香、正体はわかってる」
「だれなの?あの人…翼もあるのかな…」
「文!出てきな!ひそひそするなんて失礼だよ!」
萃香が大声で呼ぶと、奏香の言っていた人物がのこのこと現れた
「あややや…どうしてバレたんでしょうか…」
「私に会うのに挨拶の一言もないとは、いい度胸じゃないか」
「おおおお久しぶりですすす萃香さんっ!」
萃香がえらそうにして、知らない人がぺこぺこしてる
見る限りは知り合いみたいだけど…
「あやや…しかし…あの距離で私に気づくなんて…」
「私じゃない、この子が気づいたんだ」
「すっごく速いけど…音が聞こえたから…」
奏香の聴覚は異常なほど鋭かった
「あやや…」
「ま、今はあんたに用は無いんだよ文、ただ言っておくこととすれば…」
文は息を飲んで聞いていた
「文、山の天狗にも伝えてくれ、『鬼が地上にいても気にするな』ってね」
「は、はいっ!」
「よし、行きな」
「失礼しますっ」
そして文はすさまじいスピードで山の方へ飛んでいった
「さて、奏香」
萃香は気を取り直して奏香に手を取った
「里に下りるよ」
「里…?」
奏香は不思議そうな顔をしていたが、「里」という言葉に思いつく記憶が薄くもあった
里とは命、心ある者が集い、生活の場を気づく集落のことである
奏香の記憶の中にもそういったものがあったのだろうか
「里…人間がいるの?」
「そうさ……ん?」
萃香は一瞬頭がこんがらがった
なぜ地上に出たばかりの奏香が人間の里について知っているのか
直感か、あるいは地底で気を失う前に地上にいたのか
とりあえず人間の里に下りればわかると思った
「まぁ、行ってみようじゃないか」
「うん」
~散歩偏~ 無名の丘にて