じもふ! No,2

夏休み最後かな?
長い休みももう終わるのか…
終わる前に顎と肘がくっつくトレーニングをしなければ…!(無理だよね!うん…)

班決め

部員がそこそこ集まったところで小木が教卓から全体を見て、
「全員いますか?」
「部長!副部長がいません!」
「雄志は無視しなさい。あれは今頃空でも飛んでるんじゃないの?」
松下のことだ。彼は、何か大事なものが欠けている3年生で、初部活で堂々と「明日俺は鳥となる!みてろ!」そう全部員に明言したのだ。
「2年の今野が…!」
「あー彼なら今フランスにいるみたいよ。連絡がきた。」
2年の今野。学校トップの頭脳の持ち主とされていて、親も熱心な教育者。今は語学留学に近いことをしに行っているようだ。学校も彼の頭の良さには感服しており、比較的出席日数は甘くつけられているとのこと。
「我らのアイドルの高瀬先生が…!」
「奈々ならどこか迷子にでもなってるんじゃない?」
「自分さがしに行ってきます!いいですか!?」
「行ってきな。」
「「「俺らも…!」」」
「はいはい…人数多いんだから5分で連れて来い。遅れたらその分腕立て伏せを毎分100回増やす。」
「「「「御意!」」」」
教師生活1年目の高瀬は、緊張からか、または方向音痴かわからないがよく迷子になるそうな。性格もおとなしめでどの生徒に対してもあたりが良く、また20代の女性教師が高瀬のみのために男子からは学校のアイドルと呼ばれている。呼ばれるだけの可愛らしさもあるので文句はない。
「他は〜?」
「はい!もういませんが…質問いいですか!」
「何?えーと…2年の反町君?」
「なんで部長の隣に1年の野木原がいるんですか?」
それは大介も思っていた。真ん中に小木が立ち、右には小木の右腕にして最強の男である東田拓馬が姿勢良く立っている。身長は185cmでガッチガチの筋肉が身体を覆い、超シブみのある声に中央高校の男子は恐怖で悲鳴をあげ、女子は格好良さに惚れ惚れする。もう十分大人と言えるほどである。目は閉じてるのか開いてるの分からないが、そこから見える鋭い眼光は相手に絶対の恐怖と安心を与える。仲間にいれば嬉しいことこの上ないが、敵になるのならば最悪である。そして、左に何故か大介。大介も170cmあるが、顔にはまだ中学生の面影が残り、瞳に映るのは不安と強い意志が混ぜこぜになっている。ちなみに、小木の後ろには2年生代表の杖本裕子。160cmの小木をやや下回る女子で、いいように言えば鏡のような透き通った瞳、悪く言えば無感情な何もない瞳を持ち、何を考えているのかがわからない。存在感を出さない彼女は、黒板に黙々と綺麗な字で書き続けていた。
遠くから見れば、まるで女帝の右に将軍、左に小姓、後ろに忍びといった様子だ。
「1年の代表よ。他の1年生と比べた結果だけど?他に推薦でもいた?」
「あぁいえ…部長の目は確かでした。」
反町を含め部員達が頷き合う。大介としてはできれば誰かと代わってもらいたいのだが。
「部長…準備できた…」
小さい声。それでいて確かに耳に届く不思議な声。その声を背中で聞いた小木は大介を左に押しやりつつ、
「全員注目〜」
そういうと、どこから出てきたのか長い木の棒で杖本の書いた綺麗な字を叩く。
「じゃあ大介。これを読んで。もちろん大きな声で。」
「じゃあって…痛っ!」
大介の頭を小木は素早く棒で叩く。大介は仕方なく小木から渡された紙を見て内容を大きな声で読み上げる。
「えーと…第二回地元復興部。テーマは『班決め』。これは…この部活が始まり初めての試みで、今まで日程がかぶっているイベントに人を割り振るのに時間をかけた。…そこで今回は早めに班として行動を共にし、互いの連携を高め、より素晴らしい協力体制を整える。…とのことです。」
「まだ続きがあるでしょうが。全部読みなさい。」
「…班の構成は、顧問を含め20人で5つの班に分けます。メンバーについてはこちらで決めさせていただきました。発表については…」
「はいお疲れ。ここからは私が。」
大介から紙を返してもらうと別の…名簿らしい紙をだして、
「第1班は私と東田、野木原に杖本です。返事〜」
「…異論無し。」
「…部長に従います…」
東田と杖本は表情を変えず、落ち着いた声で答えた。その点、2人は通ずるものがある。
「僕も異論ありません…というより新入部員なんでよくわかんないです。」
大介も続く。第1班はどうやら各学年の代表を集めたようだ。大介はなぜ自分がここに入っいるのか不思議に思ってしまうが。
「続いて第2班。班長は副部長の松下。」
その言葉を聞いた瞬間、部室内の緊張感が一気に高まる。そして、誰もが思うのは、
「ここだけは勘弁だ。」
誰かが呟く。すると、みんなが頷く。高まる緊張感。
「1人目。」
ドックン…ドックン、と全員の心臓が鳴り響いているのだろう。小木は緊張した顔から2年の男子生徒を見つめ笑いかける。その彼は告げられる前に絶句した。
「2年の黒田翔平です。」
黒田は、162cmのガリガリの男子でメガネと坊主頭が特徴的な2年生だ。早速周りからその頭を撫でられている。
「学年順なら3年生はだれもいねぇー!」
歓喜に包まれる3年生を横に、
「ハハハッ黒田ドンマイ!」
「マジか…宮木〜俺やだよ〜」
黒田は友達の宮木にすがりつく。
「バーカ!精々がんば」
「2人目は2年の宮木武広。」
宮木の励ましの途中で2人目をサラッと小木が言う。宮木は黒田の頭を叩いていた手が固まり、そして震え始める。
「いやー!黒田ぁー!」
「うわーん!宮木ぃー!」
2人は涙を流し抱き合う。部員達はそれを見て笑う。が、1年生のみが笑えなかった。何故なら3年生は含まれていない。さらに残り1枠。2枠を2年生が埋めた今、バランスを考えれば1年生が入るのは必然的なのだ。大介以外の1年生4人は顔を強張らせる。
「最後の1人は…1年生の香坂恵。」
一同ビックリだ。あの松下に女子の香坂を入れたのだ。しかし、香坂は眉一つ動かすことなくそれを聞くと、
「分かりました。私はそれでいいですが。」
大介はなんとなく香坂を第2班にいれた意味がわかるような気がした。香坂は同じクラスの女子で、超真面目で面倒見はかなり良く、女子の室長だ。大方香坂に松下のフォローをさせるのだろう。さりげなく部員の特徴を調べ、小木はしっかり決めていたようだ。小木も満足そうに頷く。
「じゃあ次は第3班。班長は3年の新部助。他は…2年の反町圭吾と1年の古谷純。それから顧問の高瀬先生。」
「「「しゃぁー!」」」
女子の古谷以外の3人はここぞとばかりに吠えた。第1班の発表中に5人に連れられ戻ってきた高瀬は彼らがなぜ吠えているのか分からず苦笑するだけだった。
「第4班班長は顧問の大山先生。他は、3年の寺里英太に2年の栗畑一と…おてあらい…あっみたらい?和です。」
御手洗と書いて「みたらい」と読むらしい。彼も名前についてはよくいろんなことがあったらしく慣れた表情で訂正を求めていた。
「なんだ、先生のために動ける奴らを集めたのか?そりゃありがてぇ。」
大山隆司。地元復興部の初代顧問にして過去10年間顧問として活躍中の大ベテラン。40を越えてもその風貌は老けをとらず、初めて見る人なら30代前半を思わせることだろう。
大山は口元だけ笑い、他の3人を見る。寺里は1年生の時からタッグを組んでいたらしく、自信ありげに大山を見つめ返す。栗畑と御手洗は「動ける奴ら」に含まれたため緊張と自信が5分5分と言った顔持ちだ。
「まぁ最後はわかってると思うけど…」
「雫。もちろん私が班長だよね?」
そう言ったのは女子にしては長身の170cmもある刈穂鈴子だ。デカイと言ってもガッチリした体型ではなく、程よく痩せており、短く整えられた髪は活発な彼女の印象を際立たせる。小木とは旧知の仲らしい。一緒にいるところをよく目撃する。
「はいはい。鈴子が班長です。他は、2年の今野修に1年の武井雅人と糸井宇之数。今野は…7月に帰国予定なので、基本は鈴子に1年生2人の活動となります。」
「私は誰でもやれるよ。」
「俺も誰でもいいぜ!」
武井もニッと笑いながら言うが、誰でも、刈穂と武井の話す意味は違う。刈穂は性格上相手に合わせられる社交性がある。一方の武井は誰でも自分がバカなゆえに相手が仕方なく合わせてくれる。本人はそれに気づいていないからバカなのだ。
「自分もいいと思いますよ。」
最後に糸井。大介と同じ中学の出身で、中学時代に仲の良かった友人。高校で「やべぇ!何部にはいればいいんだ!」と言っていた糸井に大介が声をかけたのだ。大介より3cmほど大きく、高校生なのに口髭が生え、顎鬚も1cmほどのものが生えている。本人曰く、「よく親に怒られるけど、なんか…剃るのってめんどくさいじゃん。2週間でこの有様になるし。」とのこと。ちなみに彼も大介と同じく同世代の女子には免疫がない。彼の場合、歳上が好きなそうな。
「全員文句ないということでこれに」
「「大アリです!!」」
小木が打ち切ろうとした時に黒田と宮木が素早く手をあげる。
「なぜ俺らが…!」
「嫌ですよ!今頃、未知の世界に飛び立った人の班なんて!」
2人の抗議に小木は頬を掻きながら、
「仕方ないじゃん。あれに対抗できるのって去年のフォロー役だったあなた達しかいないんだから。それに八島先輩の意向よ。」
八島守。前年の部長だ。大介の近所に住んでいて、今はハイシャロウ社の社員だった気がする。
「八島先輩の意向に背けるのかしら?」
よっぽど八島が凄かったのか2人とも悔しそうに身を引いた。
「本日の部活は終了になりますが、明日からは、それぞれこの街のために動いてください。何をするのも自由です。もちろん班でね。以上!」
解散。と告げると皆がそれぞれの班に集まり、明日からの行動についての話し合いを始めた。大介たちも集まり、
「全てを雫に委任する。俺は雫に従おう。」
最初に東田がそう言うと早速聞きの態勢に入る。
「…私も部長に従います…」
杖本も同じ態勢をとる。
「あっ僕も…痛っ!」
大介も続こうと思った矢先に小木の細い指が大介の額を突き刺す。
「部長…痛いです。」
「痛くしているのだから当たり前。」
小木の指が離れると大介は額を触る。そこにはくっきりと爪のあとが残っていた。
「何のためにここにいれたと思ってるのよ。」
「えーと…こき使うために」
「違うわ!」
「だって…姉さんが…」
「それもあるが、他の1年生よりできそうだったからだ。」
小木にそう言われると無性に頑張る気がみなぎってくるのはなぜだろうか。
「とりあえず、今後の集合場所は校門。」
小木が宣言すると皆が頷く。
「やることは…はい大介。」
大介は特に手をあげたり発言を求めた覚えはない。が、そんなこと言ってもうまく丸め込まれるのだろうと2日部活で見た中で感じ取った。
「えーと…参考程度に過去何をやってました?」
決める役としては小木と大介となった。
「他者に囚われるな。やれるか、やれないかではない。やるか、やらないかそれが問題だ…ぞ?」
語尾だけ可愛かったが、言ったことはカッコ良かった。要は「自分のやりたいことを話せ」と言っているのだ。
「自分、ここに入って2日目なのですが…」
「関係ない。言ってみろ。」
小木は発言を促す。
何がある?街のため?ゴミ拾いとか?なんだ?この部活の活用内容は確か…街を盛り上げる。それ以外に何も…街の祭りとか小中学校の体育祭や文化祭なんかのデカイイベントしか見てなかった…普段なにやってんだ?
「すみません。ゴミ拾いしか思いつきません。」
大介は正直に話すと小木は満足そうに頷き、
「最初のうちはそんなもんね。じゃあ明日はゴミ拾い。各自ゴミ袋と軍手なんかを忘れないように。以上解散。」
何とも言えないまま小木と東田が他の解散した部員達と共に部室をあとにした。
「気にしないで…先輩方みんなが1年生の時…そこから始めたから。」
周りが部員同士の無駄話など騒がしくなっている中で、耳に溶け込んでくる小さいがはっきり聞こえる声。その主は姿を見せず消えて行った。
「地味だが良かったのか…明日から頑張ろう。」
最初は皆そうだったらしい。ならば、まだ先輩達に追いつける。
大介は部室の天井を見上げただ思うのだった。

じもふ! No,2

まぁ地元復興部の面々を知っていただければ…
今回は小木部長と一緒に考えさせていただきました。東田君みたいに自分も大きくなりたいぜ!残り15cm…無理かな?

じもふ! No,2

地元復興部。ついに班決め! 個性ある部員達。部長の左腕になった大介。 ここから動き出す地元復興部!

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-08-25

Public Domain
自由に複製、改変・翻案、配布することが出来ます。

Public Domain