猫嫌い

猫嫌い

私の名前は、、伯爵とでも呼んでくれたまえ。私は世界で一番嫌いな物がある。それは『猫』である。それはそれは蕁麻疹が出るほど嫌いなもので、見ただけでアレルギーの発作が起こりそうだ。だがそれには深い訳があるトラウマというやつだ。子供の頃に猫を飼っていたことがあった。ブクブク膨れ上がった猫だ。要するに食の管理のなってない家猫というやつだ。だが突然いなくなってしまったのである。幼かった頃は動物が比較的好きなほうであった。だからその猫のために泣いた!そうこの私がたかがあいつ()がいなくなったがために涙を流したのである。そして、ふいに窓の外を見た。庭の大きな木の天辺に黒い塊が赤い涙目に映った。その瞬間、私は頭が可笑しくなったかのように庭に飛び出した。木を見上げてみるとそいつがこっちを見ながら一言『ダオ』さすが血統書付きのデブ猫である。余分な所に肉が付きすぎて『ニャー』が言えないのである。なるほど、そして木から猫が降りられなくなったことを悟った。私は登って捕まえようとした。それが失敗だった!もう少しで手が届きそうになる距離まで近づいたとき、猫が私の顔面目掛けて飛んで来た。そして、見事に私は木から手を滑らせ落下した。地面に頭から叩きつけられ今も覚えているほど激痛が走った。私はもがき苦しみそのうち気を失った。目が覚めたのは4日後の午後だった。目を開けるとそこには心配そうに不安げな表情を浮かべる両親がいた。それから私には後遺症というものが残った。約10mという高さから落ちたため脳への影響は大きく、利き手が全くと言っていいほど動かなくなった。また口は閉じにくくなり、耳は難聴になった。あと、腰も打っていたようで腰痛も酷く、私にはこれと言った思春期の思い出がない。ほとんどを病院で過ごし退院しても毎日リハビリの日々だった。そんなある日、あいつ()がいた!家の中を楽しそうに駆け巡っている。それだけでイラっときた。そして、わざとなのか知らないが遊んでいたと思ったらこっちを1回、2回、3回、三度見して極めつけは『ダオ!』最悪であった。苛立ちが頂点に達した。プラス驚きも大きく、怒鳴ったり文句をいう前にまさかのぎっくり腰にあい情けない声が家中に響き渡った。
そして、それからもリハビリは続き今に至っている。という訳で猫が嫌いである。
今では後遺症も治ってきていて結婚もし不自由のない生活をしている。だが猫嫌いだけは治らないようだ。なぜ私がこのような話をしているかというと生まれて初めて世界一好きなものができたのだ。妻は確かに大切な人だ。だがそれと同じくらい好きな物、そう『アメ玉』だ!私は自分でも中毒なのではないかと実感するくらいアメ玉が好きで寝る時も舐めている。もちろん、紳士としてのエチケットとして歯磨きは怠らない。したがって、今まで虫歯にだけは悩まされたことがない。そう、それだけ『アメ玉』に惚れてしまっていた。
ある日、いつもの通りアメ玉を口の中で転がしていると電話が鳴った。R博士からだった。R博士とは今年のパーティーで出会ったばかりである。
「君の夢が叶うぞ」とまあ大凡見当はついていた。
丁度3ヶ月くらい前に私はR博士に頼んでいたものがあった。私はそれを取りに急いでR博士の研究所まで行った。お決まりのハグをし研究室にいくと私が待ち望んでいた『体内アメ玉製造薬』があった。一度その薬を飲めば無限にアメ玉が湧き出てくるという。それも口の中で。一度口の中で溶けて消滅してもまたアメ玉が現れる仕組みだ。R博士にその説明を受けて大金を支払ったあと、もう一度説明を聞き家に帰った。その説明とは一週間待つというものだった。しかも、その一週間はアメ玉を食べてはいけないのだという。私にとって一週間は1年にも感じられた。
そして、時が立ちついに永久にアメ玉を舐めることができるようになった!私は子供の頃に戻ったようにはしゃいだ。紳士も忘れベットで飛び跳ねるくらい嬉しかった。
だが、喜びは束の間だった。R博士から電話があったのだ。
「こんな大金をどうも。薬の効果は堪能して頂けただろうか?」と言って切れた。私は訳がわからなかった。
現状、アメ玉は堪能して...

「あれ...なんだこのアメ玉...」

その時、私は初めて違和感を感じた。

「私は...こんなにも舌がザラザラしていたであろうか...」

急いで洗面所に行きアメ玉を吐いた。

毛玉だった。

「嘘だ!」
「嘘だ!だ..だ...ダオ。」

私は鏡を見て
またあいつ()のために涙を流した。

猫嫌い

猫嫌い

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-23

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