馬鹿が廊下をやってくる。【1】
Twitterで『RTして下さった方を男子高校生にして自分とホモホモさせる』という業の深いタグに食いついた結果の産物。絵が描けないからSSで!
まずはみとさんのを消化ー。
みとさん:短髪ハネ気味の髪で冷ややかなバカ、押し倒してる話、とゆー感じで。
放課後の教室で、柄の悪そうな少年が、埃と日なたの匂いの入り交じった空気を吸い込み、そして大きく吐いた。ハネ気味の短髪を持て余すかのように指でいじる。
……と、廊下をドタバタ騒がしく走って来る音がして、ガラッと扉が開いた。顔を出した小柄な少年も柄が悪そうに見えるが、単に極端な三白眼が目つきを悪くしているだけだ。
「あれっ、もう補習終わってもうたん?」
「ねーよ、補習とか」
冷ややかな対応にめげる様子も無く、ぺらぺらと話し続ける。
「嘘ぉん。俺、顧問にめっちゃ嫌み言われながら部活抜けてきたのにぃ」
うっとおしい奴。
席も遠いし、だいたい部活の仲間とつるんでいる彼……桂との接点はほとんどない。
たった一つを除いて。
「そもそも最初に部活に顔出す方がおかしいだろ」
無い、というかすでに終わったのだ。補習は。
「……大丈夫や! そいでも次もクラス最下位はみとっちになると俺は予告したる!」
みとっち、と呼ばれた少年は眉間に力一杯皺を寄せて、いきなり肩を抱いて来た桂を蹴り上げた。
馴れ馴れしい奴。
たった一つの接点、それが、これだ。
クラスで最下位を争うおバカ仲間。それだけの関係なのに、やたらと懐いて、あだ名までつけて、まとわりついてくる。
イライラする奴。
間の抜けた悲鳴を上げてひっくり返った桂の上に馬乗りになった。上から思い切りぶん殴ってやれば、少しはこのイライラが解消されるだろうか。
「あいたぁ……。せっかく補習楽しみにしとったのに、これないわー、みとっち」
上から振り下ろした拳は、あっさり受け止められた。
あっ、と思う暇もなく視界が反転して、背中に固い床板が当たる。
「補習が楽しみな程勉強好きとは知らなかったぜ」
小柄なくせに、体育会系の桂は意外と重いし、みとが少しぐらい押してもビクともしない。
憎まれ口を叩くのがせいぜいだ。……イライラして、ムカついて、そして。
くだらない補習をサボらなかった理由を自分の中に見つけてしまった。
「楽しみなのはみとっちと二人になることやん」
へらへらと笑って言われれば、冗談だとすぐ、知れた。
(……っんだよ、これ!)
高校生になってから、泣いた事なんて一度も無いのに。酷く容易く視界がじわりと滲んで、みとは慌てて視界を両腕で遮った。
「……みとっち。なあ、みとっち」
泣かんといて。
「……せぇ! 泣いてねーよ!」
「ほんまやし?」
抗いようのない力の差で、両腕を解かれた。三白眼の真顔は少し怖い。そんなことをぼんやり考えて。
「俺、みとっちのこと好き。めっちゃ好き」
まだ、人気も残る、放課後の教室で、こんな風にみっともなく、どチビに組み敷かれて。本気の抵抗すらしないで、自分はどうするつもりだったのだろう。
「……ちゅーして、ええ?」
さあ。なんて答えてやろうか。
馬鹿が廊下をやってくる。【1】