なっちゃんと足し算引き算

なっちゃんと足し算引き算

今日はなっちゃんの通っている学校の算数の授業で宿題が出ました。
宿題の内容は、1桁の足し算と引き算、
でも、なっちゃんは算数が少し苦手、2+3も4-1も指を使わないと解けませんでした。

早く宿題を終わらせて、友達と遊びたいな、出掛けたいな、そんな心の中の誘惑がなおさら宿題を進めるスピードを遅くしてしまいました。

えーと5+3は・・・と左指をすべて折り曲げてグーの形を作り、右手のお父さん指、お母さん指、お兄さん指を折り曲げました。
折り曲げた指はいち、にい、さん・・・はち
答えは8か

なっちゃんの計算方法はこんな感じなので、7+2とかになるとお手上げ状態でした。
何故ならば、一気に7つの指を折り曲げるという考えが浮かばなかったからです。
お父さん、おとーさーん分からないとこがある。

日曜日のお昼前、居間でテレビを見ながら横になって居眠りをしているお父さんを、なっちゃんは起こしてきて、分からないところを教えてもらいました。
こっくりこっくり舟を漕いでいた、お父さんは嫌な顔一つ見せずになっちゃんに7+2の計算方法を教えてあげました。

ねえお父さんなんで足し算とか引き算があるの?なんで勉強しなくちゃならないの?なっちゃんはお父さんに尋ねました。

うん、なかなか鋭い質問だね
お父さんは答えました。
なっちゃんはテレビ番組好きかい?

うん大好き、アニメとね歌番組がとーっても好き、
と、なっちゃん

面白いもんなテレビは、お父さんはね車が大好きなんだ。
と、お父さん

そして、お父さんはこういいました。
なっちゃんは文章題の書いてあることが理解できるかい。
リンゴが3個みかんが4個合わせて何個かな?

えーと、となっちゃんは指を折り曲げて数え始めました。7個威勢のいい答えがお父さんに帰ってきました。

いい答えだ、合ってるね。でもなんで7個って分かったんだい?

え、なんでって言っても・・・なっちゃんはなんと答えていいか分からなくて黙ってしまいました。
お父さんは言いました。
なっちゃんはね学校で国語の勉強をしているだろ?

うん、となっちゃん
お父さんは続けました。
国語を学んだから、頭の中にリンゴを3個思い描けたし、みかんを4個思い描けたんだ。
つまり、リンゴやみかんがどういうものかなっちゃんは勉強して身に着けたんだ。だから7個という答えを出せた。

国語と算数はお互いにつながっているんだよ。
お父さんはなっちゃんにさとしました。

よく分からなーいと、なっちゃん

そうだね、ちょっと難しいね。じゃあアニメを見ていて、アニメの話についていけてるかい?
とお父さん。

うん、いっつもね悪い奴らが主人公を困らせるようなことしてね、でも、最後にはみんなで協力して、悪い奴らをやっつけるんだ。

主人公たちはみんないい人かい?
うーん、なっちゃんが好きな人もいれば、あんまり好きじゃない人もいる

なんでそんな風に考えられるか分かるかい?
それはね、国語を学んでいると登場人物の行動から、その登場人物がなぜそうしたのかという考えを先生に教えてもらっているからなんだよ。
つまりアニメと国語はつながっているんだ。
とお父さん。

何となく分かったような、分からないようななっちゃん
じゃあ、音楽番組はなんで好きなのかな?
と、なっちゃん

そうだね、好きなグループはいるかい?
とお父さん。
うんいるよ。
となっちゃん
なんで好きなんだいとお父さん。
それはね、内緒の話だよ絶対誰にも言わないでね。となっちゃん
男の約束だ、絶対誰にも話さないとお父さん。

実はねクラスにいる男の子の顔に良く似たグループがあるんだ、となっちゃん
お父さんは内心右ストレートを喰らいながらも、こう答えました。
じゃあ、音楽番組と学校はつながっているね。

うん、つながってる。となっちゃん

よし、学校と勉強とテレビはなっちゃんにとって生活の一部かな、つまりはなっちゃんにとって、あって当たり前のものかな?
とお父さん。

ああ、お父さんの言いたいことが分かった。
となっちゃん。

みんなつながっているんだね。

そういうことだ。とお父さん。
じゃあ、なんで足し算と引き算があるか教えてあげよう。

まず、足し算から教えるよ、いま、お父さんとなっちゃんは車に乗ってお出かけします。お父さんが運転手いいかな?

うん、どこ連れてってくれるの?

じゃあ、海に行こうか。とお父さん。
お父さんはさらに続けました。車のスピードを上げるにはどうしたらいいかな?

アクセルを踏むとねスピードが上がる。となっちゃん

そうだね、これって足し算に似ていないかい?とお父さん。

うーん?な、なっちゃん。

それじゃあ、海に行くかとお父さん。
やったーとなっちゃん。

二人は早速車に乗り海へと出発しました。

お父さんはなっちゃんに聞きました。今何キロだい?
30キロとなっちゃん。

ようし、アクセルを踏むぞいいかい?
うん
今何キロだい?
50キロとなっちゃん

これは、増えたかな、それとも減ったかな?とお父さん。
増えた―となっちゃん。
じゃあ、足し算かな引き算かな?とお父さん。

ああ、足し算だ‼となっちゃん

うん、その通り、さすがだねなっちゃんは

おや、赤信号だ、なっちゃんならどうする?とお父さん。
ブレーキを踏む。となっちゃん。

そうだね、じゃあブレーキを踏むと・・・今何キロだい?
0キロとなっちゃん、あっこれ引き算とさらになっちゃん

鋭いね、その通りだ。とお父さん。

どうだいなっちゃん足し算と引き算の理屈が分かったかい?
うん、となっちゃん。

よし、いい子だ。ここからは少し難しい話をするよ。足し算のことを難しく言うと「加」
引き算のことを難しく言うと「減」というんだよ。

勉強が何故大切か?これはねお父さんなりの考えなんだけど、世の中はいろいろな事が複雑に絡み合っているんだけど、一つ一つを紐解いていくと、簡単な者同士がつながり合って、ある一つの事象を作り上げているんだ。

アクセルやブレーキ・・・車を最初に考えた人だって、足し算引き算を知らなければ、こんなスマートな形には出来なかったとお父さんは思う。そればかりか、車が出来たかどうかも怪しいくらいだ。

そして、つながり合いは時として新しい考え方を生み出す。つまりは人間の進化だ、人間はね何千年と自然の中のつながり合いを探し出しては、さらにつなげていくという作業を時には失敗し、時には成功し積み上げていったんだ。勉強とはこの積み重ねであってね、そして、その積み重ねの先に、何があると思う?知的好奇心と呼ばれるものがあるんだ。
それは時として、世界をも動かす大発見につながるんだよ。
そして、ほかのひとびとは、その発見が確かなものか確かめたり、何かに利用出来やしないかと考えたり、はたまた、利用方法を教えてもらったりして、この世の中は繋がっているんだよ。

ああ、なっちゃん寝ちゃったかせっかく海に着いたのにな。

この波も一定の周期で動いている。飛行機を作り出した人も、もしかしたらこの周期から着想を得たのかもしれないなあと、なっちゃんのお父さんは一人タバコをふかしながら、そんなことを考えていました。

おおーいなっちゃん海に就いたぞー、起きろー、そういってお父さんはなっちゃんの眠る車へと歩いていきました。

なっちゃんと足し算引き算

なっちゃんと足し算引き算

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-22

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