24日当日。
まさかオタ友が本気でレイナを好きだったなんてな〜。
でも友達の幸せを願わず親友の名は語れないか。

でも春兎の足取りは自然と図書室へと向かって行った。

図書室。

「始めて会ったのはここか」
思えばあの時既に俺は冷奈に一目惚れしてたんだな。
オタ友の奴。上手く行ったら絶対幸せにしてやれよな。
あー見えても繊細な心の持ち主なんだぞ冷奈は。
口が悪くて。
素っ気なくて。
でもたまに天然で。
笑顔が可愛くて。
愛おしくて。

あれ、おかしいな。
どうして俺泣いてるんだろ。
あぁそうか。
もう冷奈と今までみたいな距離感でいられなくなるからか。
オタ友、上手く告白出来てるかな〜・・・

「・・・ッ⁈」

「なん・・・で?なんでここにいるんだよ・・・!」

俺の目の前には今頃オタ友から愛の告白を受けているはずの冷奈がいた。

「あれ急用は?どうしたの」
「急用は?じゃねーよ!オタ友はどうしたんだよ!」
「あぁ。オタ友君からの誘いは受け入れられないわ」
「何言って・・・!今すぐ行ってやれよ!」
「先に私を誘ったのは春兎じゃない。行ってもいいけどその前にあなたの話は何だったの?」

何を考えてるんだ冷奈は。
今はダメだ。ダメなんだよ。
この気持ちのまま冷奈と話してたら俺は・・・。
俺の気持ちが止まらなくなる。

「いいから・・・行ってやってくれよ。俺の大事な友達が冷奈を待ってるんだ」

「優しいのね。でも。私だってここへ来た理由があるの」

淡々と。でも真っ直ぐ俺の顔を見つめながら冷奈は言う。

「昨日メールが来た時悲しかった。最近春兎とあまり話せていなかったから久々に話せるんだって思ったから」

辞めてくれ。

「春兎からあまり誘われなくなってたから、やっと話せるって思って」

お願いだからやめてくれ。

「それなのに急用が出来たって言うから、来ないって分かっててもここへ来てしまったの」



もう無理だ。限界だ。
今の俺は傷つきすぎてる。
何千本の矢を受け、尚もトドメに心臓を剣でヒトツキされてるようだ。
心臓が痛い。

今、来てくれるかも分からず待ちぼうけているであろう友人を想うと心が痛い。
自分の。俺の想い人が目の前で悲しそうに俯いている事が心が痛い。

俺は一体どうすれば・・・。

突然の携帯の着信音で静まり返った空間に響き渡った。

宛先はオタ友
内容
「話は夏花に聞いた。悔しいけどお前は俺の親友だ。親友の幸せの為なら自分を犠牲にするよ。
頑張れ!春兎!

PS.ラーメンおごりだぞ(泣)」

オタ友・・・
ありがとう。
高校に入って今まで友人がいなかった俺に始めてできた俺の大事な親友。
今回ばかりはお前に甘えてさせて貰うよ。

「冷奈」

「・・・え?」

突然名前を呼ばれ、ビクッと体を震えながら冷奈は俺の方を振り向く。

「あのさ、冷奈は歳上なのに俺と対等の立場で居てくれてさ」
「うん」
「最初は俺と同じアニオタだと思って急接近したけどただの勘違いでさ」
「うん」
「なのに俺に合わせて話してくれたり嬉しかった」
「うん」
「夏祭りも学園祭も色々あったけど一緒にいられて楽しかった」
「うん。私も」
「そしたらさ気づいたんだ。自分の気持ちに。俺は・・・俺は。冷奈の事が本当に」

「待って」
冷奈が言葉を遮る。

「私からも言いたい事があるから言わせて」
「話せば長くなるから割合するわ、春兎」

「あなたが好き」

「え?」
突然の告白に思わず腑抜けた声を発してしまう。

「春兎の事が好き」

「え、いや、あ、え?」

「だから付き合ってください」

「は、あ、っ・・・」

「だめ?」
俺は今にも泣き出してしまいそうな。始めてみる表情と、告白を未だ理解できずにいた。

「だめな訳ないよ。俺だって冷奈が好きだ。本当に。付き合ってほしい」

言うと同時に唇に違和感を感じだ。
何だかほのかに甘い香りが顔全体を覆い尽くしてる気がする。
草原に咲く蜜の乗った花のような甘い香りが。

ハッと我に返ると唇の違和感はなくなっていた。

「い・・・今のは⁈」

「キスだよ」

先程とは真逆のいつも冷奈の声のトーンで返って来た。

「宜しくね、春兎」

言うと再び冷奈は唇を重ねて来た。
今度は俺もしっかりと意識を保ち唇から伝う温度を確かめる。

影が消えた窓の外には今年初となる雪がチラホラと降り出していた。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-21

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