瓶
大切な人の記憶がなくなった時
瓶
こんな僕にも素敵な彼女ができた。
結婚を考えている。
とても優しく思慮深くなにより美人だ。
二人でキスなんかもした。アダルトビデオのような欲と利益だけのセックスじゃなくて。優しさに溢れたセックスをした。
初めてのデートは、湖だった。二人で湖のまわりを歩いた。手を繋ぎながら歩いた。
こんな幸せでいいのだろうかと悩んでしまうぐらい幸せだった。
そのことを彼女に話すと。
「考えすぎよ。大丈夫私は、ここにいますよ。」と優しく語りかけてくれる。ますます彼女を好きになった。
だが
僕が原因不明の病におかされた。
しかも今までに症例がない病だ。
その病とは、涙をながすと死んでしまうというものだった。
こんな不思議な病気あるんだなと思った。涙を流しては、いけないというだけでいたって体は、健康だ。
彼女にこのことを話すと。
「大丈夫。私がそばにいるから。きっとよくなるわ。」
嬉しかった。嬉し涙が出そうになったが、涙を流すといけないので頑張ってこらえた。
だがそんな彼女も不治の病におかされた。
彼女の病というのは、僕と出会った時からの記憶がなくなるというものだった。ちょうど僕と付き合い始めた時からの記憶だけがきれいになかった。
僕は、とても泣きそうになった。だがこらえた。なぜなら死んでしまうから。
彼女は、僕に会うたび。
「あなたは、誰ですか?中学時代のお友達かしら?思い出せないわ。」
寂しかった。切なかった。泣きそうになった。でも泣かないようこらえた。
そんな中、記憶のことを研究している研究者にあった。彼女をみてもらうことにした。
なんでもその研究者の発明品は、記憶を液体化できるものらしい。
彼女の記憶を液体化してその中から僕達の記憶を見つけだす。ということをしようということになった。
彼女をみてもらい。ある一つの瓶を渡された。
その瓶の中には、彼女の記憶が液体で入っている。
僕は、それを覗いた。
覗いた僕は、愕然とした。真っ暗だった。黒の中にさらに深い黒があるようで僕は、震えた。とても気色が悪いものだった。
そう彼女は、僕と出会う前、両親に捨てられ、受け取り手の親戚からも煙たがられ。虐待を繰り返されるなどといった不幸にあっていた。
彼女は、僕とあってからようやく幸せになれたのだ。だが病気でその幸せをなくしてしまった。
僕は、瓶の中の記憶をみて。怒りがわいてきた。彼女のされた仕打ちをみて。
怒りで瓶を叩き割って。しまった。
彼女の記憶がながれだす。
彼女の記憶がながれだす。
これで彼女は、幸せだ。
ふと彼女を見ると。
口をあけてよだれをだらだらたらしている。
彼女は、すべての記憶がなくなったせいで何も考えられない人形になってしまった。
僕は、すごいあやまちをおかしてしまった。
涙があふれでた。
泣いてしまった。
僕の手に垂れた涙を覗いてみると僕と彼女の楽しい記憶があった。
僕は、溢れる涙を手ですくい。彼女に飲ませた。
彼女に記憶がもどった。
僕は、一安心した。だが涙をながしてしまうので死んでしまう。
最後に彼女のおでこにキスをして息を引き取った。
彼女は、正気を取り戻し。幸せな記憶だけになった。
そしてその新しい彼女の初めての辛い記憶は、僕の死だった。
彼女は、今でも僕のことを無意識によんでしまうそうだ。
瓶