ホセ・ペンギン・(=^・^=)かかり
そこそこ、平和な国に生まれたホセさんは、ごくごく、普通に育ちました。
『大きくなったら、しあわせな人になる。』
漠然とした夢を持ち、のんびり大きくなりました。
◇ペンギンの国◇
そこそこ、平和な国に生まれたホセさんは、ごくごく、普通に育ちました。
『大きくなったら、しあわせな人になる。』
漠然とした夢を持ち、のんびり大きくなりました。
☆新月の前日☆
ホセさんのお父さんとお母さんは、ホセ家に代々伝わる夢の種を、
18回目のお誕生日の夜、ホセさんにプレゼントしました。
そして、代々伝わる夢の種のまき方を静かに話しました。
母 「18の年の新月の深夜、輝く北の星の真下に、
願いを込めてこの夢の種をまくのよ。
たった一つの願いを込めて、チャンスは、一度きり。」
父 「そして、満月の夜その場所に行ってごらん。
願いが叶えば、夢が咲いているはずだよ。」
ホセ「新月って……えー!明日じゃない。」
母 「そう明日の夜よ。大切な夢の種を早く渡すと無くしてしまうと思って。」
ホセ「でも、夢って? 願いって? 急に言われても、・・・」
父 「君の想いや願いが、君の夢。自分の夢は、自分自身で決めるものだよ。」
『僕が、決める? 僕のことだから、・・・。』
今日は、新月の前の日。明日は、新月。ホセさんは、眠れそうにありません。
なんとなく過ごしてきた日々、夢? 夢? 夢?
『あぁ!そうか、僕の夢は、しあわせな人になる事だった。
で、し・あ・わ・せって…何処にあるの?』
気がつけば空は、茜色のレースをまとい、ホセさんときたら、考え疲れて夢の中。
母 「大丈夫かしら・・・」
父 「心配ないよ。あの子はそれなりに成長しているよ。」
母 「でも、起こしてあげないと。大切なチャンスがなくなってしまうわ。」
父 「今日から私たちに出来ることは、
あの子を信じて静かに見守ってあげることだよ。」
母 「そうね。そう、あの子を信じて・・・」
そんな事とは露知れず、ホセさんは、グゥーグゥー夢の中。
☆新月の夜☆
『うっ、う・うっ・あぃたった、寝違えた。 は?ぁ
なんでこんな所で眠っていたのかな?
何か…大切な事を、忘れている気がする・・・んだけど・・・ぎゃ,そっ、そうだ!
今日は人生でたった一度のチャンスの日、
新月の夜だった。え・・・な、何時、まだ間に合う。』
ホセさんは大急ぎで新月の夜の中、北の星の真下を目指します。
むかしおじいちゃんと一緒に散歩した道。夢の丘へ向かう一本道。
『この道はな、北に続く一本道。この道は、まっすぐ伸びる一本道。
いいか、しっかり覚えておくんだよ。』
ホセさんは、なんだか懐かしい気持ちでいっぱいでした。
そして、天国のおじいちゃんに感謝しました。
おじいちゃんのおかげで北の方向だけは、確かに覚えていたからです。
新月の夜は、真の暗闇です。こんなに真っ暗な夜中に外に出るのは、初めての事。
でも何故か、怖くはありませんでした。
なんだかおじいちゃんが、傍にいるように感じられたからです。
輝く北の星の真下に着きました。丁度、深夜になる頃です。
ホセさんは、胸のポケットから夢の種を出して、願いを込めました。
そして、心静かにその種をまきました。
夢は、願いは、もちろん・・・たった一つ。
☆満月の夜☆
夢の種をまいた新月の日から、十五日が過ぎました。
ホセさんは夢の丘へ続く一本道を、明るく照らすお月様の下を、
おじいちゃんと歩いたこの道を、ゆっくり歩いて行きました。
もっと、ワクワク、すると思いました。
もっと、ドキドキ、すると思いました。
不思議なくらい落ち着いて、心が穏やかです。
輝く北の星の真下は、もう、目の前です。
見えました。
満月に照らされて、美しく七色に輝く木、
願いは胸の高さの一本の木になりました。
その木には、七色に輝く丸い実がたくさんなっています。
ホセさんの願いは、なんでもなる木、になりました。
なんでもなる木とは、輝く丸い実を採るときに、欲しいものを想像するだけで、
輝く実は、想像したものになる木です。とても不思議な木です。
『しあわせを、探しに行こう!』
ホセさんは、輝く北の星を見上げました。
ほんの少し背が、高くなったような気がしました。
☆南の島へ☆
『し・あ・わ・せ・・・・・そうだ、南の島に行こう!』
ホセさんがまだ小さかった頃、天国に旅立った、おじいちゃんの夢の風傘。
大好きなおじいちゃんを見送った後、天国に旅立った、おばあちゃんの夢のお話てるさん。
ホセさんは空を見上げて想いました。旅立つために、この素敵なアイテムがあるって事。
準備万端。やる気満々。『あ、船を作らなきゃ-。』
かなり不器用なホセさんは、ボサボサになった髪を気もにせず一生懸命、船を作りました。
船はなんとか出来ましたが、船というより限り無く筏に近い物です。
どうにか浮くものが出来ました。
おじいちゃんの夢の風傘。
おばあちゃんの夢のお話てるさん。
そして、僕の夢のなんでもなる木。
勇気、元気、根気、みんな船に乗せて。
さぁ!出発です。
なんでもなる木でおなかを満たし、風傘で船を走らせ、
お話てるさんに励まされて幾日、やっと南の島に着きました。
「ハッ!ハックション!! 南の島ってこんなに寒いの?」
《お知らせ》
ホセさんは、方向音痴なのです。
南は南でも行き過ぎてしまっています。
☆ペンギンの国☆
くらくらする意識の中で、どうにか島に上陸したホセさんは、
そのまま倒れるように、眠ってしまいました。
浜辺を朝の散歩中のペンギン達は、皆いっせいに足を止めました。
見たこともない長ひょろい物体が、目の前に横たわっています。
ペンギン達は、その長ひょろい物体をぐるりと囲みました。
南の島のもっと南は、ペンギンの国でした。
波打ち際に横たわる長ひょろい物体から奇妙な音が、聞こえてきました。
謎の物体「うっ、うぎゅ、うぎゃ…し・あ・わ・せ・・・・・」
ペンギン「???は???」
初めて見る物体にペンギンのお母さんは、『物体A』と名付けました。
そして、そーっと近づきのぞいてみると『物体A』が、生き物だと分かりました。
そして、苦しんでいることが判りました。
“困った者を助ける”ペンギンの国のたった一つのお約束です。
当然の事のように『物体A』は、ペンギンのおうちに運ばれて、
ふかふかの羽根布団の上に寝かされました。
ペンギンのお母さんは『物体A』の干草みたいな頭にそっと手を当てました。
「まあ。大変、お熱があるわ。Pタン急いであれを持ってきてちょうだい。」
子ペンギンのPタンは、大急ぎで浜辺に行きました。
浜辺に付くと気をつけの姿勢で両手をパン♪パン♪パン♪と鳴らしました。
ほんの少し待っていると、海の真ん中辺りからプクプクとまーるい者が現れてこっちに、近づいて来ました。
「どないしたん?」透明なゼーリーが、言いました。
Pタンは、答える間もなく透明なゼーリーを抱えて、大急ぎでおうちに帰りました。
ペンギンのお母さんは、透明なゼーリーを受け取ると、
「くらげさん、『物体A』が大変なお熱なの、どうかお願い助けてあげて。」
そう断りながらゼリーいや、くらげを『物体A』の頭に乗せました。
くらげは、「えらい熱やわ、よしゃ、わてにまかしとき。」
そう答えるとくらげは『物体A』の額の辺りにぺたりと張り付きました。
心配顔のペンギン達に囲まれて気を失っていたホセさんは、
そのひんやりとした心地よさの中しあわせな気分で、目が覚めました。
「あ。。。初めまして…僕は、ホセと申します。ここは、南の島ですか?」
『物体A』が、『ホセ』という名前がある事とホセさんが元気になった事が、
うれしくなったペンギン達は、一斉にパタパタと手を鳴らしました。
なにがなんだか、分からないホセさんも、なにがなんだか、分からないまま、みんなと一緒に喜びました。
元来、元気だけが取得のホセさんは、もう、すっかり元気です。
ペンギンのお母さんは、「はじめましてホセさん、ようこそペンギンの国へ、ゆっくりして下さいね。」と、微笑みました。
子ペンギン達は、浜辺でホセさんが気を失ってから今までの事を次々に話してあげました。
そして、ホセさんに次々に質問をしました。
ホセさんは、まずは感謝の気持ちとお世話になったお礼の気持ちを言葉にして、
何故、ここに辿り着いたのかどうやってここまで来られたのか、
ひとつ、ひとつ、ゆっくりと丁寧に質問に答えました。
「助けて頂いて、本当にありがとうございます。たくさんお世話になってしまって
…なんと申してよいことやら…ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございます。」
口下手なホセさんは精一杯、感謝の気持ちを言葉にしました。
それから、すーっと、深呼吸をして、
「ここに、し・あ・わ・せ・は、ありますか?」と、まじめな顔をして聞きました。
ペンギン達は、不思議な言葉にキョトンとして、
それぞれ仲間の顔を伺いながら、不思議そうに聞きました。
「し・あ・わ・せって何ですか?それは、甘ーい食べ物ですか?」
ホセさんは、これには、困ってしまいました。
『し・あ・わ・せ』は、探すものだと思っていたからです。
『し・あ・わ・せ』が、何かなんて考えたことがなかったからです。
そして、ホセさんとペンギン達は、思いっきり悩みました。
みんなの顔が、???????になってしまった頃、
空が静かに幕を引き夜空に満点の星が輝き始めました。
キラキラ輝く星たちの下で、みんなの顔が、☆☆☆☆☆☆☆になった頃、
もう考えるのはよそうと思いました。
『し・あ・わ・せ』は、
考えるものでも、悩むものでもないって事が、わかった夜でした。
ペンギンさん達と暮らす日々は、本当にしあわせな毎日でした。
ここには探さなくても、ちゃんと傍にしあわせが、いてくれる。
みんなは気付かないだけ、気付こうとしないだけ。
しあわせは君の傍にもちゃんと、いること。そう、気付いていないだけ。
風が、さらさらながれて夕空が、ゆっくりやってきました。
今日も一日終わりました。
☆星の国☆
しあわせが普通であたりまえのようになったある日、
ホセさんの頭の上からなにやら声が聞こえてきました。
くらげ「あのな、頭の上からですまんけど、星のお話聞いたことある?」
ホセ 「星のお話?で、何処?えっ、誰!?」
くらげ「くらげどす。」
ホセ 「え!?熱さましくらげ!? な、な、なんで僕の頭の上にいるの?」
くらげ「失礼なやつやな?ぁ。かれこれずっと張り付いておま。」
ホセ 「げぇ!気付かなかった。」
くらげ「気付けよ、いい加減。それよりここは居心地いいでぇ。」
ホセ 「で、星のお話って何?」
くらげ「え!いきなり、本題かよ。・・・・・あのな、 むかし、むかし、そんな昔でもない今日この頃・・・」
ホセ 「いつ頃かよ!!」
くらげ「あわてるでない、星の国の大じいさんが、星の子達に、悲しみに沈んでいった娘のお話をしたとさ。
それはな、悲しみをたくさん背負った娘が、『しあわせは、いらない・・・』と、ひとことつぶやいて、
海へ海へ入って行きそして、姿が見えなくなってしまったとさ。そのお話を聞いた星の子達は、
おいおいと、声を上げて泣きつづけ、その涙の雫がぽとぽとと空から落ちて、くらげになったとさ。
それで、くらげは、透明でお優しいのです。と、きたもんだ。」
ホセ 「それマジなお話なん?シビヤすぎる。」
くらげ「くらげが、透明でお優しいこと分かった?」
ホセ 「そこのくだりは、どうでもいいねん。あ、くらげ弁、移った。
それより悲しすぎるお話をなんで今、このタイミングでするねん。あ、くらげ弁、直らん。」
くらげ「このお話には、続きが、あるねん。」
ホセ 「くらげ国のお話なら、充分ですけど。」
くらげ「冷たい奴やな?。くらげ国のお話はこの次にして、東の島のお話やねん。」
ホセ 「東の島・・・僕が生まれ育った国のこと?」
くらげ「ちゃうちゃう、東は東でも、もっと東や。」
ホセ 「もっと東?」
☆ねこの島☆
東の島は、ねこたちの楽園。
ここには、困ったことも、悲しいことも、ない島です。
なぜなら・・・ここには、虹の魔法が使えるからです。
◇虹の魔法の使い方◇
* 用意するもの きれいな虹、望遠鏡、スコップ、ねこさん、白いハンカチ、
* 使い方
1、 美しい虹の裾を見つける。
2、 ねこさんを連れて行く。
3、 ねこさんに、掘ってもらう。
4、 虹玉を見つけたら、大切に白いハンカチに包む。
5、 願いを込めて、朝露の雫のしたに埋める。
6、 じっと待つ。
7、 ねこさんと、すべてのものに感謝する。
でも、この魔法は今まで誰も使ったことがなかったのです。
そう、あの美しい娘がこの島に流れ着くまでは……
それは、忘れもしない満月の夜。どこからともなく現れた細く小さな影。
泣きながら歩いてくる娘。ためらう事もなく海に向かう娘。
零れ落ちる涙が、ベールの様に娘を包みました。
星の国の大じいさんは、どうする事も出来ずに娘を見守りました。
星の国の大じいさんは、止めることが出来ませんでした。
なぜなら、むすめは、『しあわせは…いらない・・・』と願ったからです。
でも、『せめて生きていて欲しい。』それだけを祈り続けました。
祈りは、涙の泡となって娘を包み込みました。
悲しみの中沈んでいった娘は、涙の泡に助けられました。
そして、東の島に流れ着きました。
鈴の音 「ちりん♪ちりん♪」優しい鈴の音が、します。
娘 「あ…ぁん、よく寝た。あれ? ここは・・・?」
目覚めた娘の傍にいたのは、やわらかな茶色の毛に包まれた、丸い栗色の瞳のねこさんです。
(=^・^=)「にゃあおん?」=気がついた?=
娘 「わ?ぁ かわいいねこさん。こんにちわ。」
(=^・^=)「ふんごろごろ。。。すりすりごろごろ。。。」=良かったね。。。心配したよ。。。=
娘 「あれ?ぇ・・・わたし・・・ここは・・・?」
(=^・^=)「にゃ!にゃおん? にゃあおん。」=え!分らないの? 秘密のアイテムあげる。=
ねこさんは、娘の手のひらに赤い紐がついた銀色の鈴をわたしました。
娘 「素敵な鈴ね。この鈴を私にくれるの?ありがとう。ねこさん。」
(=^・^=)「どういたしまして、おねぼうさん。」
娘 「え!!!ねこさん今、しゃべった!!?」
(=^・^=)「当然だよ。やっと聞こえた?みんな分からないだけさ。
で、ようこそ、おねぼうさん。ところで、お腹すいた?」
娘 「うぅん…そういえば、なんとなく・・・」
ねこさんの茶色のしっぽの後を付いて行くと、小高い丘の上に着きました。
どこからともなくねこさんたちが、集まってきました。
縞々=誰だよ。猫の島に勝手に、来たのは=「にゃーん。にゃーん、にゃん」
水玉=あら、かわいい娘さん。=「にゃ、にゃわん。」
白色=こんにちは、あなたのお名前は?=「にゃおん、にゃにゃ?」
ぶち=ぼくは、まだら、よろしく。=「にゃ、にゃん、にゃあん。」
三毛=まだら、こわいよ。=「にゃん、にゃ。」
灰色=げ、人間じゃん。=「▽、にゃにゃ。」
娘 「ねこさんのお友達? お友達のねこさんたち、こんにちは。」
縞々=俺たちは、俺から、トラ、その横が、ポンポン、まんま、まだら、プチ、そして、
ちょっと離れてんのが、グレ。 ちゃちゃ、こいつ誰?=
「にゃーん、にゃん、・・、・・・、・・、・・、・・、・・、・・、・・・・、・・。・・、・・・にゃ?」
茶色「この子は、おねぼうさん。海岸で拾ってきたのさ。」
娘 「拾ったなんてー。それに、わたしは、おねぼうさんって名前じゃないわ。
わたしは、・・・・・わたしは、誰なの?」
茶色「え、君、自分の名前も忘れたの? どれだけ眠ってたの?
あ、言い忘れてた僕は、ちゃちゃよろしくね。」
娘 「ちゃちゃ、かわいいお名前。茶色の瞳に、茶色の毛並みで、ちゃちゃってぴったりなお名前ね。」
茶色「まーそんなとこかな。それより、食事にしようよ。」
白色=そういえば、もうこんな時間ね。=「にゃん、にゃーにゃ。」
水玉=こんなものしかないけどー。結構おいしいわよ。何味がいい?=「にゃんにゃー。にゃ。にゃん?」
灰色=今日も、キットキャットかよ。=「にゃん、にゃんご。」
三毛=みんなで、食べようね。=「にゃんに、にゃん。」
娘 「ねーちゃちゃ、他のねこさんたちは、何をお話しているの?」
茶色「え、分からないの?僕の言葉しか?」
娘 「うん、にゃーとか、にゃんにゃんとしか聞こえないの。」
水玉=にゃんって、いえるの?=「にゃ、にゃ?」
茶色「ま、いいや。食べようよ。これミルク味これはまぐろ味どれにする?」
ぶち=たくさんあるから、たくさん食べてね。僕、くじら味好きなんだ。
=「にゃんにゃん、にゃおん。に、にゃおんおん。」
目の前に出されたのは、いろいろな形をしたビスケットみたいなものでした。
ひとつ手に取って食べてみました。それは、それなりにそれぞれの味で、中でもおにぎり形のねこまんま味は、なんだか、
懐かしいおかかご飯の味がして結構いけています。ねこ草味は芝生の香りで、味は草そのものでした。
茶色「さっきから、ねこまんま味ばっかり食べているね。
好き嫌いはだめだよ。ねこ草味食べて。これ、お腹にいいんだよ。」
娘 「ねこ草味だけは、勘弁して。ミルク味食べるから。」
縞々=ちゃちゃ、この娘さっきからお前とだけ話している気がするんだけど、もしかして、
俺たちの言葉は分からないとか?=「にゃにゃ、・・・・・・・、・・・、・・・・・・・・・・・・・・うんにゃ?」
茶色「銀の鈴の調子が悪いんだよ。僕の言葉は分かっているみたいなんだけど。」
娘 「え?銀の鈴?この鈴で、ちゃちゃとお話できるの?」
茶色「あ、秘密だったのに。でもみんなの言葉が分からないのは、どうしてなのかなぁ?。」
娘 「大丈夫よ。わたしは、ちゃちゃとお話できれば、それで充分よ。」
縞々=何だよ。わたしは、ちゃちゃとお話できれば、充分てっか、
俺たちの声は、にゃんにゃん語のままでいいてっか。
ちゃちゃ、かわいいお名前、茶色の瞳に、茶色の毛並みでちゃちゃなわけねぇーだろ!
おもちゃみたいに小さくてころころしてたから“おもちゃのちゃちゃちゃ”の“ちゃちゃ”!!
=「にゃお。ぐにゃ、・・・、・・・・、・・・!・・・、・・・、・・・“・・・・・”・“・・”!!」
茶色「え?。君たちはおねぼうさんの言葉、分かるんだ。やばいよー。」
娘 「なんだかトラ柄のねこさん怒っているみたいね。ちゃちゃ、けんかはよしてね。」
◇(=^・^=)の楽園◇
☆風傘とお話てるさん☆
ホセ 「東の島の娘さんは、それからどうしているの? 心の傷は、消えたの?」
くらげ「そこやね問題は、風が運んだ話では元気にはなったけどな、記憶が無くなってしもうてな。
自分が誰だか、どこから来たのか分からんそうや。」
ホセ 「そうか・・・・・僕、東の島へ行く。」
くらげ「安意やなーぁ。」
ホセ 「僕、その娘さんに会いに行く。」
くらげ「美しい娘ってとこ、ひっかかってんの?」
ホセ 「違う。『しあわせは、いらない』って願う人に会ってみたいんだ。」
くらげ「戦うつもり?」
ホセ 「違う!違う!分かり合いたいんだ。」
くらげ「そうきたか・・・」
早速、ホセさんは東の島に行く準備を始めました。
でも、東の島の方向が分かりません。とりあえず、風傘を開いてみました。
お話てるさんが、大きなあくびをしながら出てきました。
てる 「ふぁん…ホセさん、久しぶり。やっと、帰る準備?」
ホセ 「ううん、東の島に行きたいんだ。でも東の方向が分からなくて・・・」
てる 「そう、それだったら風傘を逆さに開いて、海の方向に向けてみて。」
ホセ 「風傘をひっくりかえすの?」
てる 「そうよ。パラボラアンテナになるのよ。」
ホセ 「風傘って、そんな使い方もあるんだ。」
てる 「ひょっとして、知らなかったの? おじいちゃんの夢。」
ホセ 「おじいちゃんの夢って、風の様に大空を飛びたかったんじゃないの?」
てる 「エーッ。大空を風の様に飛んでなにするつもり?
おじいちゃんの夢は、世界中の人と自由に会話する事よ。
まったくー。もういいから、風傘を海に向けてみて。」
ホセさんは、自分の国の方向の東だろうと思う方向へ、風傘を向けました。
てる 「違うわよ。そっちは北、東は、右、右手の方。」
ホセ 「え!方向まで分かるの?」
てる 「当然でしょ。わたしは、方位磁石よ。今で言う、GPS機能付き。
…ってことは、おばあちゃんの夢も、知らないんじゃ・・・」
ホセ 「おばあちゃんの夢って、毎日、お天気がよくて、なんでも話せるお友達が欲しいのだと思ってた。」
てる 「わたしの、どこら辺が、てるてる坊主に見える? 失礼ね。
わたしとおばあちゃんは、なんでも話せる親友だったのよ。
そして、おばあちゃんの夢は、世界中を旅する事よ。おばあちゃんと一緒に色々な国へ行ったわ。
ここだけのお話、おばあちゃんも方向音痴だったの。」
ホセ 「変なところ、似ちゃったな?。」
てる 「だけど、方向音痴のおかげで、おじいちゃんと出会えたのよ。」
ホセ 「方向音痴のおかげ?」
てる 「そう、旅の途中にわたしとおばあちゃんが離れ離れになった時、世界中にSOSを送ったの。
その信号をキャッチして助けてくれたのは、あなたのおじいちゃんと風傘なのよ。」
ホセ 「え?そうだったの。それで、方向音痴のおかげって事か。」
てる 「・・・・・ねぇねぇ。何か聞こえない。ほら、・・・・・」
途切れ途切れに聞こえてくるのは、柔らかな娘の声とかわいい猫の鳴き声、
……「にゃん、にゃおん、にゃにゃにゃ。」
……「雨が降ってきたわ。早くおうちに帰ろうね。」
……「にゃーん。にゃおぉん。」
……「みんな、濡れなかった?」
……「にゃにゃにゃにゃにゃん」
「もしかして、娘さんはねことお話ししているの???」
ホセさんは、ますます、東の島に行きたくなりました。
☆Pタンの願い☆
東の島へ、大忙しで旅立ちの準備をしているホセさんに、
いつものように甘えてきたPタンが、もじもじしながら言いました。
Pタン「ぼく…まだ小さいけど…けっこう…ちからになれるとおもうんだ。」
ホセさんは、それどころじゃないのでPタンにかまってられません。
Pタン「ぼく・・・ぼく・・・ぼくもつれていって。」
ホセ 「え?」
Pタン「ぼくは、だめ・・・?」
ホセ 「東の島に行けば、いつ帰えれるか分からないんだよ。」
Pタン「ぼく、平気。大丈夫。ぼく、ねこさんに会いたいんだ。
ねこさんって、あったかい国にしかいないって。
ねこさんって、お日様のにおいがするって。ねこさんの事、たくさん知ってるよ。
だから、ぼくも、一緒につれてってお願い。」
ホセさんは、Pタンの真剣なお願いに考え込みました。
何故って? Pタンは、まだ小さな子ペンギンだったからです。
準備は、着々と出来ました。
頭の上に住み着いた、くらげが言いました。
くらげ「ほな、お別れのあいさつに行きましょか。」
ホセ 「もしかして・・・ひょとして・・・くらげ付き。」
くらげ「もう少し気使って言ってや、くらげ付きとは、どう言う事?
当たり前、当然の事やろ。一心同体、って言う事。切っても切れない仲ちゅうことやね。」
ホセ 「切れるものなら、切りたい。」
くらげ「な、な、なんて残酷やねん。」
ホセさんは、しかたなくくらげ頭のままで、ペンギンさんのおうちに行きました。
ホセ 「長いような、短いような、本当にお世話になりました。ありがとうございます。
ペンギンさん達と、暮らした日々は、決して忘れません。とても楽しい日々でした。
本当にしあわせな日々でした。それから、この頭に張り付いているくらげは、
くらげ自身の希望により張り付いたままになりましたので、ご了解頂きたく・・・」
くらげ「そんなのどうでもいいねん。それより、Pタンの事どうするつもりやねん。」
くらげが、話を切って入ってきました。
さっきまでホセさんの後ろにいたPタンが、見当たりません。
Pタンのお母さんは、ホセさんを見上げながら言いました。
「ホセさん、Pタンをよろしくお願いします。あの子は、あなたに憧れています。
あなたを尊敬しています。Pタンには、あなたが必要なのです。
あの子は、兄弟の中でも一番小さくて、引っ込み思案で、気弱な子です。
その子が、はじめて自分の事を、自分で決めたのです。
どうかあの子を、東の島へ連れて行ってあげてください。」
ホセ 「・・・・・はい、承知しました。Pタンをお預かり致します。」
ホセさんは、しっかりと答えました。
そして、感謝の気持ちを込めてなんでもなる木を、ペンギンさんに渡しました。
さあ、出発です。
東の島へ。
☆後悔航海☆
お世話になったペンギン達に見送られて、船に乗り込んだホセさんは、
船のすみっこで、ボールになりきって固まっている、バレバレの子ペンギンに声をかけました。
ホセ 「Pタン。隠れていなくてもいいよ。」
Pタン「ごめんなさい。ぼく、絶対にホセさんと一緒にいたかったんだ。」
ホセ 「Pタンが決めたことだから、ってお母さんが、言っていたよ。」
Pタン「お母さん、ごめんなさい。ぼく、頑張ってホセさんのお役に立てるようになるよ。」
くらげ「珍しいもんやなぁ?。くらげが張り付いたまんまの妙な男を、尊敬するなんて。」
ホセ 「張り付いたくらげに、言われたくない。」
くらげ「ま、わしのおかげやな。くらげ張り付き男に、憧れてるんやから。」
ホセ 「絶対、そこでは無いと思う。」
くらげ「ま、その話は、置いといて。お腹ペコペコやわ。
なんか美味いもんでも食べよう。なんでもなる木は?」
ホセ 「あ、その木はあげたよ。ペンギンさんに感謝の気持ちとして。」
くらげ「え、えええ、どうするん? うちら何食ベるん?」
ホセ 「あ、あそうか。気付かなかった。」
くらげ「うぉん。気付けよ!詰めが甘いやっちゃなぁー。」
Pタン「あのーぉ。お取込み中すみませんが… ぼくが、海に入って魚など獲ってきましょうか?」
ホセ 「Pタンが、大丈夫?」
Pタン「一応、ペンギンなので、」
くらげ「頼むわ。わし、生魚苦手やねん。焼き魚お願いしますわ。」
ホセ 「どこぞの海に、焼き魚泳いどるねん。無茶苦茶や。」
Pタン「頑張って、いろんな魚を取ってきます。」
ジャポン.。o○
くらげ「素直な良い子や。あんた見習いなはれ。」
ホセ 「その言葉くらげだけには、言われたくない!!」
ブク、ブク.、o○、.。o○.。o○
Pタン「息が、・・・・・溺れる、た、た、たすけ・・・・・てぇー」
ホセ 「Pタン!Pタン!大丈夫、」
くらげ「ペンギンが溺れるところ、はじめて見たわ。なんや泳げんの。」
Pタン「グッシュン。ぼく、はじめて海に入ったの。海、怖い、嫌い。」
くらげ「なんのための、ペンギンやねん。」
Pタン「ぼくだって、ペンギンなら、泳げるって信じてた。ごめんなさい。」
ホセ 「いいんだよ。Pタン、はじめてなんだから失敗したって。
誰だってあるよ、失敗の一度や二度、気にしない。気にしない。」
くらげ「お取り込み中すいませんが、ところで今宵の夕食は、どうなってますの?」
ホセ 「どうしようか?」
テル 「釣りをすれば?」
ホセ 「釣りって言っても、道具もないし。」
テル 「それなら風傘の柄を抜いてみて、釣竿になるから。」
ホセ 「風傘の柄が、釣竿に? もしかしてこれも、おじいちゃんの夢?」
テル 「もちろん。おじいちゃんは、風傘でお話しながら、のんびり釣りをしていたのよ。」
くらげ「ほんまに、ありがたいじいちゃんやな。天国に行っても助けてくれてはる。」
ホセ 「おじちゃん、ありがとう。いつも見守っていてくれて・・・」
しばらく釣りをしましたが、本格的に不器用なホセさんにとって、釣りも例外ではありません。
くらげ「わかめ、こぶ、こぶ、わかめ、こぶ、…もはや、釣りの域を超えてへん?」
Pタン「ぼく、わかめ好きです。こぶは大好物です。ホセさん、ありがとうございます。」
くらげ「ありえない、師弟愛。泣けてくるわ。」
ホセ 「今晩は、これで我慢して。明日、頑張るから、ごめんねみんな。」
くらげ「しゃないな。新鮮なわかめ、活きのいいこぶ、いただきますわ。」
幾日も過ぎ、おじいちゃんの夢の風傘は、本来の使い方を大きく変え逆さに開いて、
雨水を溜めるものになってしまい。雨水は、飲み水にして食料は自給自足、ホセさん頼身です。
次の日もまた次の日も、釣れるものは、魚以外のものばかり。
くらげ「ベジタリアンも、呆れるわ。」
ホセ 「海藻って、野菜だったっけ?」
くらげ「なんや、緑色になってへん? 緑のくらげだけには、絶対、なりたくなかった。」
ホセ 「なんの、ポリシーやねん。」
くらげ「あ、とうとう開き直るつもり? わかめこぶとり名人さん。」
Pタン「ぼくは、なんだか元気になった気がします。」
ホセ 「ありがうPタン。そう言って貰えると僕も元気が出るよ。」
くらげ「東の島はまだかいな。緑のまんまで生きたえるのは、くらげとして不甲斐ない。」
テル 「ほら、向こうに見える緑の島。もうすぐよ、みんな頑張って。」
くらげ「緑の島に緑のくらげ。ある意味、透明やわ。」
緑の島に近づく頃、
ホセさんとくらげは、ぐったり、へとへとです。
☆東の島☆
東の島の昼下がり。
ねこさん達と娘さんは、いつもの様に暖かな丘の上でお昼寝中。
みんなとは、ちょっと離れた木の上でのんびり海を眺めていたグレが、
グレ =みんな、起きて、お日様が帰る方から変な舟が、こっちに近づいて来るよ。=
ちゃちゃ「変な舟?おねぼうさん起きて、起きて。」
娘さん 「・・・う?ん・・・ちゃちゃ、もうご飯の時間なの?」
ちゃちゃ「違うよ。お日様が帰る方から変な舟が、こっちに来ているって。」
トラ =なんだ、なんだ、変な舟って。=
ポンポン=お客さんが、来るの?=
まだら =おねぼうさんのお友達かな?=
プチ =変な舟になんか乗って来ないで、怖いよ。=
まんま =この島に来る人に、悪い人は、いないから大丈夫よ。=
トラ =ちゃちゃ、出迎えは、頼んだぞ。=
ちゃちゃ「まかせて。僕が、確かめてくるよ。おねぼうさんを守ってあげてね。」
娘さん 「ちゃちゃ、わたしも行く。ちゃちゃに何かあったら生きていけない。」
トラ =ちぇっ。俺も、ちゃちゃに何かあったら生きていけねぇから付いてくよ。=
まんま =お客さんは、みんなでお出迎えするものよ。=
まだら =みんながいくなら、僕も行く。=
プチ =まだら、ちゃんと抱っこしててね。=
ポンポン=なんだか、わくわくしてきたわ。=
グレ =俺は、行かない。変な舟なんか興味ない。=
トラ =そんじゃ、行ってみるか。=
みんなで、西の海岸に着きました。
変な舟からPタン、その後ろからヘロヘロになったホセさんが、降りてきました。
ホセ 「・・こんに・ちわ・僕は・・ホセと申し・ます・・・ぅ」
目の前にありえないシュチュレーションで現れたホセさんに、おねぼうさんは、思わず
娘さん 「プ、プフッフ・・・あ、ごめんなさい。」
くらげ =自己紹介は・・後にして・ぇ なんか食べ物・・分けて・・貰えません・?・=
ちゃちゃ=あ、おねぼうさんが、笑った。頭の上の緑の団子が、お腹減ってるって。=
娘さん 「ちゃちゃ、草団子さんとお話できるの?」
くらげ =話す団子…見たことある…? ・・あ・ん・もう・・お腹ぺこぺこー=
娘さん 「わたしは、・・・ねこかかりと申します。
草団子さんが、お腹空いているみたいなので、お話は後にしてどうぞ、こちらへ。」
ちゃちゃ=ねこかかりって何だよーぉ。おねぼうさんのくせに。=
Pタン =こんにちは、はじめましてねこさん。いきなり来て申し訳ありません。=
ホセさんと緑のくらげは、究極の偏食のせいでこれ以上、力が出ないのでPタンがご挨拶。
まだら =キットキャットでよければ、たくさんあるよ。はい、どうぞ。=
Pタン =ご親切に、ありがとうございます。=
Pタンは、ヘロヘロのホセさんとくらげにキットキャットを食べさせてあげました。
もくもく、食べて、また、もくもく、食べて、
あっ、と言う間に大きなお皿いっぱいのキットキャットが、無くなってしまいました。
トラ =すげー。まだらよりたくさん食べる奴いるんだ。=
まんま =お代わりは、いかが?=
プチ =わたしは、食べ物じゃないからね。=
まだら =ぼくのお勧めの、くじら味おいしかったでしょ?=
ポンポン=こんにちわ。あなた達は、おねぼうさんのお友達なの?=
グレ =げ、ヘンな奴、頭にカビたおもち乗せてる。=
ちゃちゃ=あの草団子、キットキャット食べたよ。=
くらげ =ふ?ぅ 生き返った。こんなうまいもん初めて食べた。ごちそうさん。=
ホセ 「ねこかかりさん、おいしいご飯をありがとうございます。ご馳走様です。」
ねこ係り「どういたしまして。ホセさん、でも、どうしてこんな所へ来たの?」
ちゃちゃ=こんな所じゃないよ。ねこの島さ。=
ホセ 「僕は、君に会いに来ました。」
くらげ =えらい ド・ストレートやな。=
ねこ係り「え、?私に?私の事ご存じなんですか?」
ホセ 「話せば長くなるけど、君の事と東の島のこと少しは、存じています。」
くらげ =結構、知ってまっせ。で、戦うために来たんでっせ。=
ホセ 「さっきから、頭の上で失礼なことばかり言っている緑のくらげの言う事は、
気にしないで下さい。」
ねこ係り「緑のくらげ? え? 草団子さんの事? お話…出来るの? すごい!」
ホセ 「緑のくらげの言葉、聞こえていないのですか? それは良かった。
僕より君のほうがすごいよ。ねことお話が出来るなんて。」
ねこ係り「お話っていっても、ちゃちゃとしかお話できないのよ。あれ、ちゃちゃは、どこ?」
そのころ、Pタンは、ねこさん達の熱い視線に取り囲まれていました。
トラ 「あ、あなたは、二足歩行の進化系のねこさんですか?」
ポンポン「すごい!! かっこいい!!」
まだら 「お耳は、何処にあるのですか?」
まんま 「頭の上の王冠は、王子さまの証ですか?」
ちゃちゃ「僕たちに、直立二足歩行を教えて下さい。」
プチ 「わたしは、猫背だから無理しない。」
グレ 「猫背は、みんな一緒だろ。僕は、四足歩行でいい。」
Pタン 「ちょっと待ってよ。ぼくは、猫じゃないんだ。ペンギンって言うんだよ。」
ねこ一同「エーーーーェー!ペンギン!!! ペンギンって何科?」
Pタン 「何科?ってぼくは、・・・」
ねこ各自「イカ?、しか?、イルカ?、ジャマイカ?、閣下?、特価?、スーパーカー?、…?」
ねこ一同「カ―が、付いたから、負け。」
もはや、Pタンのことはどうでも良くなって『か』付きゲームになっています。
Pタン 「却下。」
ねこ一同「うまい!!」
Pタン 「ぼくは、Pタンって呼ばれているペンギン科のペンギン。
王冠みたいに見えるのは、飾り羽。ぼくは、鳥類なんだ。」
トラ 「すげぇー 鳥系なら、空も飛べるんだ。」
ポンポン「わたし、空を飛ぶウミネコさんに憧れているの。」
まだら 「ぼくより、太っているのに空を飛べるの?」
グレ 「そんな小さい羽で空は飛べねぇーよ。」
ちゃちゃ「ツルンツルンしてるから案外、飛べるんじゃない?」
Pタン 「ぼくは、まだ小さいから空は飛べないんだ。
でも、いつか必ずこの大空を飛んで、この自由な大空に羽ばたく日が、・・・」
緑くらげ=Pタンなに、張り切ってるん?=
ホセ 「Pタン、ねこさん達とすっかり仲良しだね。」
Pタン =ちょっと、熱くなってしまって。お恥ずかしいです。=
緑くらげ=無邪気な子供達は、仲良くなるのが早いからねー。=
ねこ係り「ペンギンさんともお話できるの? ホセさんって本当に、すごい!」
緑くらげ=他になんにも出来へん奴やけどな、くらげとペンギンとは、コミュニケーヨンばっちりやねん。
け どわての方がもっとすごいで、みんなの話ばっちり分かるで。バイリンガルって言う感じ。=
ホセ 「僕は、Pタンと緑のくらげと会話できて、君は、ねこのちゃちゃと会話できて、
Pタンは、ねこと緑のくらげと、僕と会話して、緑のくらげは、みんなの声は、聞こえて、
ねことPタンと僕と、会話できる。ってことは、緑のくらげが、一番すごいって事?」
緑くらげ=緑は、つけんといて。わては、好き好んで緑になったんじゃないさかい。
ほらみてみぃ、わてが一番でしゃろ。あらためて尊敬していいで。
この天才くらげに、なんでも聞いて。もっとくらげを大切にしいや。=
{注意・緑くらげとPタンは等しく一番です}
ホセ 「緑は緑。熱さましくらげから、進化したみたいで、いいと思うけど?」
ねこ係り「熱さましくらげって、緑くらげさんのお仕事なの?」
緑くらげ=ねこかかりちゅう娘に説明したって、熱を冷ましていたのは、透明で美しい頃のお話。
今じゃ、こんな緑にされてしまって草団子だの、カビ餅だの好き勝手に呼ばれて
どんなに傷つき、辛い思いをしているか・・・う、うう=
ホセ 「緑くらげが、『はい、そうです』って。」
緑くらげ=な、なんなん。通訳は、正確にしてや!わてのイメージが、だいなしや。=
ねこ係り「大変な、お仕事お疲れ様です。」
緑くらげ=まっ、いいか。そんな細かいところ。=
ホセさんと緑のくらげとPタンとねこかかりさんとねこさん達、みんな時間を忘れてたくさん語り合いました。そして、いつの間にか眠ってしまいました。
こんなに楽しくてにぎやかな夜は、この島では初めての事でした。
☆さらさら滝☆
東の丘からゆっくりと朝がやって来ました。ねこかかりさんは、なんだかヘンな臭いのする方を見ました。
ホセさんが大口を開けてぐっすり眠っています。
ねこ係り「ねぇ、ちゃちゃ、ホセさんの方、なんだか臭わない。」
ちゃちゃ=うん、なんか臭いよ。=
緑くらげ=わては、カビてまへん。おいおい、君、臭ってるで。=
ホセ 「え、僕、ううん、そう言えばここんところお風呂入ってないやぁ。」
ねこ係り「この丘の向こうに、さらさら滝があるからシャワー浴びれて来たら? さっぱり、するわよ。
着替えは何処にあるの? 着ている服、洗濯しておくから。」
ホセ 「これしか無いよ。服が、乾くまで裸でいるわけいかないし。」
緑くらげ=お、大胆発言。=
ねこ係り「それなら、白い大きなシーツあるから、ちょっと待ってて。」
ねこ係りさんは、白いシーツを半分にたたんでその真ん中に、頭が通る位いの丸い穴を、切り抜きました。それと麻の紐を1本ホセさんに渡しました。ホセさんは、丸い穴の開いたシーツと麻の紐を受け取ってお礼を言いました。
ちゃちゃ=ぼくが、さらさら滝まで案内するよ。付いて来て。=
Pタン 「僕も付いて行く。さらさら滝ってきっとキラキラしている滝?」
緑くらげ「さらさら滝が、キラキラなら、さらさら、キラキラ滝って名前になると思うで。ちゃいまっか。」
ホセ 「どっちでもいいよ。久しぶりのシャワー。ウキウキするなぁ。」
Pタン 「さらさら、キラキラ、ウキウキ滝だね。」
ちゃちゃ=勝手に長たらしい名前に変えないでよ。=
お昼ね丘を下って行くと、緑の木々の間からキラキラ光るさらさらの滝が見えました。
ホセ 「本当にきれいな滝だね。では、早速、頭から。」
緑くらげ「え、水に濡れる? やめて水は、わてが、溶けたらどないするん?」
ホセ 「くらげが、水に溶ける? ありえません。」
緑くらげ「目に水が入ったら、どないするん? せめてシャワーキャップかぶって。」
ホセ 「パンツもシャワーキャップもありません。」
緑くらげ「パンツ無くてもシャワーキャップは、必要やろ。」
ホセ 「どんな優先順位なん。ひょっとしてぇ・・・ずーっと頭に張り付いていたから水が怖いとか?」
Pタン 「くらげさんも、お水怖いの? ぼくと一緒だ。」
ちゃちゃ=ぼくだって、お水に濡れるのは、いやだよ。=
緑くらげ「ちゃいます。ちゃいます。そんなんじゃありまへん。水が、怖い訳がない。」
ホセ 「それじゃー。」
言うや否やホセさんは、滝の下へ。
緑くらげ「ぐっあーぎがぁーぐはぁ――ぁー。」
緑くらげの叫び声が緑の森に響き渡り、儀式の様な水浴びが終わりました。
ホセ 「あ-ぁ気持ちいい!爽快。さっぱり。頭も軽くなって髪もさらさらしている。
あ、あれ? 緑くらげは・・・えーぇ。本当に溶けたの?」
くらげ 「ここ、ここ、あんたの足の下。ほんまにーぃ無茶苦茶や、ゴシゴシ洗って乱暴な事。」
ホセ 「え。どこ? どこにいるの? 見えないよ。」
Pタン 「わ。透明くらげさんに戻ってる。」
くらげ 「わぁ。ほんま、浄化されたみたいや。」
ホセ 「透明って言うより、すっごいピカピカになってる。」
ちゃちゃ=げぇ?透き通ったツルンツルンの団子。=
くらげ 「その団子の発想から抜けてくれはる。さあさあ早く、頭の上に乗せてや。」
ホセさんは、足元にいるツルンツルンくらげを探して、さらさらになった髪の上に乗せました。
そのとたんツルン、とすべり落ちてしまって何度試してもツルン、ツルン、とすべり落ちてしまいます。
くらげ 「虐待や。なんで髪さらさらやねん。わての居場所無くなってもうた。」
ちゃちゃ「くらげって頭の上が、おうちなの?」
Pタン 「ぼくでよければ、おんぶしますけど。」
くらげ 「なんなん、ひょっとして、赤ちゃん扱い?面目丸つぶれやわ。
ここは、百歩譲って、我慢して、仕方なく、ペンギンにおんぶされてあげる。」
ホセ 「Pタンお願いします。こんなくらげだけど、結構いい奴なんで。」
くらげ 「こんなんってどんなん? せっかくお美しいくらげに戻れたのに。」
仕方なくPタンにおぶわれたくらげは、はじめのうち落ち着きなくもそもそ、ぐにゃぐにゃしましたが、
しばらくするとおとなしくなりました。
ホセさんは、ねこかかりさんが用意してくれた白いシーツに頭を通して麻の紐をしっかり結びました。
そして今来た道をさっぱりした気分で戻って行きました。
丘を登って行くとねこさん達が、集まっていました。
まだら 「さっき、叫び声みたいな不気味な声、聞こえたけれど、なんかあったの?」
まんま 「みんな無事だったみたいね。良かった。」
トラ 「ホセって奴、ニセモンの神様みたいになってやんの。」
ポンポン「ホセさんって、さらさらの髪だったのね。」
グレ 「カビもち消えてる。」
プチ 「緑団子さん、食べられちゃったの?」
ちゃちゃ「くらげさんなら、Pタンの背中に張り付いているよ。」
ねこ一同「ピカピカ、ツルツル、テカテカ、団子が、ゼリーに変身した!!」
くらげ 「改めて言うけどよう聞いてや、わては、団子でも、ゼリーでもありません。くらげどす。」
トラ 「くらげなら海に浮かんでいるよ。」
くらげ 「そこは大人の事情ってもんで、…世の中は広いんやで個性豊かなくらげもいるちゅう事や。」
グレ 「大人の事情だってサ、都合がいい言葉。」
トラ 「俺たちと一緒で海が怖いんだ、きっと。」
ちゃちゃ「素直に怖いって言えないのも、大人の事情なの?」
(大人になるって事は、それぞれにいろーんな事情があって大人をやってるって感じなのです。
一生懸命、大人を頑張っているんです。そこんところ少しは多めに見てあげてね。
可愛い(=^・^=)ちゃん達?)
◇虹の魔法◇
☆Pタンの夢☆
それから平和すぎる毎日が、ふわふわ流れ過ぎてゆきました。
Pタンは、海を眺めてため息ばかり吐いています。
くらげ 「どないしたん? なんや最近、元気ないで。」
Pタン 「はぁ…ぁ。ホセさんは、ねこかかりさんとばっかり遊んでるし。
ねこさん達はお昼寝ばっかりしてるし。はぁー。」
くらげ 「わてが、ずっと傍にいるやん。」
Pタン 「傍にいるって言うより、張り付かれてるって感じする。
ホセさんの気持ち、ちょっと分かったかも。」
くらげ 「そんな言い方ないで。張り付いてあげてるのに。」
Pタン 「あーぁ、ぼく、ホセさんに空の飛び方教えて貰いたかったんだ。」
くらげ 「空? 空を飛びたい? またなんで?」
Pタン 「ぼくの夢なんだ。ぼく、海は苦手だけど、空なら飛べるって思うんだ。」
くらげ 「あのな。確かな自信をぶっ壊すけど、よう聞いてや。
まじめな話な。力学的、物理学的、総体的に絶対無理。」
Pタン 「あ!無理って言った!駄目って決め付けて。そうやって大人は、子供の夢をつぶしてゆくんだ。」
くらげ 「まーまー。暑くならんでよう聞いてや。今まで、ペンギンが空を飛んでる姿みたことある?
物事には、適材適所ってもんがあって、ペンギンが空飛んでたら、くじらかて空飛びたがるで。
くじらが空飛んでみいうっとうしいで。」
Pタン 「じゃー、くらげはペンギンの背中に張り付いている事が、適材適所なの?」
くらげ 「厄介やな。わては、くらげでも特別なくらげ、そこら辺のくらげと一緒にせんといて。」
Pタン 「じゃー。ぼくも特別なペンギンになる。」
くらげ 「ほんじゃ、まぁ、ダイエットから始めてみる?」
Pタンは、何度か見ていたのです。ホセさんが、風傘で空を飛ぶ練習をしているところを。
ホセさんが、風傘を持って一気に浜辺を走るとふわっと浮いてまた、ふわっと浮く姿を、憧れの熱い眼差しで見ていたのです。ホセさんなら飛び方を知ってるって、そう信じたのです。
☆ねこかかりさんの秘密☆
くらげを背負ったPタンが黄昏ている夕焼けの砂浜に、しょんぼり元気のないちゃちゃが、
横に並ぶ様に座って、遠く水平線に眼を向けたままで言いました。
ちゃちゃ「…おねぼうさんときたら、ねこかかりってヘンな名前、名乗ってさ。
ここのところ、ぼくのことまでねこ扱いしてるし。
ぼくの存在なんかまるでねこになってるし。・・・・・・」
くらげ 「どこからどう見ても、ねこ、そのものでっせ。」
ちゃちゃ「そう言う意味じゃなくって、ぼくのこと、もう必要じゃないみたいなんだ。」
Pタン 「わかる、わかる、その気持ち。ぼくだってホセさんを取られたみたいだもん。」
ちゃちゃ「満月の日が近づいてるのに、おねぼうさんなんかもう知らない。グシュン。」
くらげ 「満月?もうすぐ満月やけど・・・ ねこかかりって娘さん? ひょっとして狼になるとか?」
ちゃちゃ「ありえないその発想。おねぼうさんは、満月の夜になると涙が止まらなくなって、
ずーと泣きつづけるんだ。おねぼうさんに聞いても何故かわからないって。
ただ、ただ、夜が明けるまで、泣き続けているんだ。ぼくは、おねぼうさんの傍にいて、
『涙の夜が、早く明けますように。』って願う事しか出来ないけど・・・・・。
ぼくは、あの日からまん丸お月様が、大嫌いになったんだ。」
くらげ 「そうか…、やっぱりな。記憶の中にしまっている大きすぎる悲しみが、あふれて涙になるんや。
可哀想に忘れてしまったわけじゃないんや。
この悲しみを消すためには、ちょっときついけど荒治療が必要や。」
Pタン 「荒治療って? お医者さんは? 誰が治すの?」
くらげ 「適任とは言えんけど、ホセさんしかおらん。
ホセさんは、しあわせを探してるおめでたい人やから、きっと涙の止め方も知ってるはずや。」
Pタン 「やっぱり、ホセさんってすごいんだ。なんだって出来るんだ。ホセさんについて来てよかった。」
ちゃちゃ「どう見たって、インチキ神様にしか見えないけど。」
くらげ 「人は見かけによらんもんや。」
満月が近づいたある日、Pタンとちゃちゃはホセさんを黄昏浜に連れてきました。
ちゃちゃ、Pタン、その横にホセさんが並んで座り
Pタンの背中のくらげがいつもとは違う様子で話し出しました。
くらげ 「重大な話がある。」
ホセ 「くらげが海に帰るとか?」
くらげ 「ちゃいます。ちゃんと聞いてや。ねこかかりって娘さんの事や。」
ホセ 「いい子だよ。優しくって大らかで。ねこかかりさんに何かあったの?」
ちゃちゃ=浅いよ。おねぼうさんの悲しみを見抜けないなんて。=
くらげ 「星の国のお話覚えとう? あの娘は記憶を失くしただけで今も悲しみの中で生きてるんやで。
ちゃちゃから聞いたけど、満月の夜になると理由もなく泣き続けるそうや。
そう、あの満月の夜の記憶がそうさせてるんや。
この深い悲しみから救い出せるとしたら、頼りないけど君しかいないんやで。」
ホセ 「・・・・・ねこかかりさんが、僕の知らないところで泣いていたなんて。
ぼくは大きな勘違いをしていたみたいだ。記憶を失くしたねこかかりさんに、
もう悲しみなんか無いって・・・・・。分からなかった。ごめんね。ねこかかりさん。
ぼくが、守る。ぼくが、悲しみから救ってみせる。ぼくが、しあわせにしてあげる。」
くらげ 「ほらな。結構、熱い奴でしゃろ。」
Pタン 「しあわせって、他の人にあげるものなんだね。プレゼントみたいなものなんだね。
…ってことは、ホセさんはプレゼントになるの?」
くらげ 「あのな。Pタンの夢も、空になりたいわけじゃないやろ? 空を飛ぶことやろ?
はやい話し夢は形じゃなくって、行動みたいなもんや。」
ホセ 「え? Pタンの夢って空を飛ぶ事なの?」
Pタン 「うん。ぼく空を飛びたいんだ。ホセさんなら風傘もってるから空を飛べるって、
飛び方を知ってるって、でも、ホセさんここのところ忙しいみたいで・・・言えなかった。」
ちゃちゃ=忙しいって・・・ おねぼうさんと遊びほうけてるだけなのに。=
ホセ 「Pタン見ていたの? 僕が、風傘で空を飛ぶ練習をしていたところ。
僕じゃちょっと重すぎて浮く事しか出来ないんだ。Pタンなら飛べるかもしれないよ。
おじいちゃんの風傘を渡すから頑張って練習して、おじいちゃんの様に空を飛んで。」
くらげ 「あれぇ風傘って、空を飛ぶものじゃ無いってお話てるさん言ってたで?」
ホセ 「これは秘密。男同士の秘密の話。」
☆おじいちゃんと風傘☆
晴れ渡った秋空の下でおじいちゃんが、風傘を干しながら小さなホセさんに話しました。
「この風傘が、おばあちゃんを連れて来てくれたんだよ。おばあちゃんと出会えた大切な風傘なんだよ。
おばちゃんと暮らし始めた頃、わたしが、風傘で空を飛んで大怪我でもしないかと、
心配するから『風傘で空を飛ぶ事は、もうしない。』って約束したんだ。
しばらくこの風傘で、空を飛んでないなぁ。もう一度だけ、空を飛んでみたいなぁ。
これは、男同士の秘密。おばあちゃんが心配するからね。」
そうおじいちゃんは、大空を飛んでいたのです。
おじいちゃんの夢は、風のように、空を飛ぶこと。
何のためにならなくても夢は夢。
夢は自分のためにあるんです。
☆虹の魔法☆
ホセさんは、あの日からずーっと考え込んでいました。
そんなホセさんを遠くから見ていたおねぼうさんは、心配でどうしていいかわかりません。
ねこ係り「ホセさん、近頃なんだか元気ないようだけど、なにか心配事でもあるのかしら?」
ちゃちゃ「・・・ごめんね。おねぼうさんの秘密、話ちゃった。」
ねこ係り「わたしの秘密って、満月の夜の事?」
ちゃちゃ「うん・・・ぼくの力じゃおねぼうさんの悲しみを消せそうにないから・・・」
ねこ係り「ごめんね。ちゃちゃ。こんなに心配させて。ホセさんも、わたしの事で心配しているのね。
わたしは、悲しいなんて感じないのに、ただ、涙が、止まらなくなるだけなのに。」
夜明け前に降った雨が、朝日に照らされてキラキラ七色のビーズになってお昼寝丘の上を飾っています。
ホセ 「とうとう、満月の日が来てしまった。悲しみを消す方法なんて・・・・・何も浮かばない。
ねこかかりさんの悲しみを消せるなら、ぼくは、何だってやるのに。」
遠くを見つめて、ため息を吐いているホセさんの横にちゃちゃが、擦り寄ってきました。
ちゃちゃ「にゃおん、にゃぁおん。」=銀の鈴、受け取って。=
ホセ 「ちゃちゃ、慰めてくれるんだね。ありがとう。
・・・・・あれ、これは、ねこかかりさんの大切な鈴、こんな所に落としてる。」
ホセさんが、銀の鈴を手にしたとたん、かわいい男の子の声が聞こえました。
ちゃちゃ「ホセさん、早く、早くしないと虹が、消えちゃうよ。」
ホセ 「えぇ、今話したのは、ちゃちゃ?」
ちゃちゃ「そう。銀の鈴で、ぼくの話が分かるんだよ。そんなことより虹のすそを探して。」
ホセ 「虹のすそ? あの大きな虹の? お昼寝丘のちょっと先の方にあると思うけど。」
ちゃちゃ「おうちにもどって、望遠鏡と、スコップと、白いハンカチ、取りに行かないと早く、早く。」
ホセ 「わけがわからないけど、うん、わかった。」
ちゃちゃ「虹のすそに着いたら、話すから。虹が消えないうちに、急いで。」
ホセさんは、ちゃちゃの言う通りに望遠鏡で虹のすそを確かめて、スコップと白いハンカチをもって虹のすそを目指しました。虹のすそに着くと、ちゃちゃは、一生懸命に土を掘り始めました。
ちゃちゃの小さな手の辺りに、七色にキラキラ光る綺麗な玉が出てきました。
ちゃちゃ「ホセさん、虹玉を白いハンカチで、包んで。」
ホセ 「虹玉? きれいな玉だね。ねこかかりさんにプレゼントするの?」
ちゃちゃ「違うよ。虹の魔法をかけてるんだよ。次は、朝露の雫の下に行ってこの虹玉を埋めるんだ。」
ホセ 「虹の魔法?あぁ、そうか。ねこかかりさんの悲しみを消すために、ちゃちゃ、ありがとう。」
ちゃちゃ「まだ終わってないよ。お礼は、後にして。」
ホセさんは、白いハンカチに包んだ虹玉を大切に持って、お昼寝丘に着きました。
お昼寝丘は、朝露に照らされてキラキラ輝いています。
ちゃちゃの言う通りにキラキラ雫の下に、願いを込めて虹玉を埋めました。
そして、静かな気持ちで待ちました。
ちゃちゃ「あのね。ぼく、ホセさんならおねぼうさんの涙、消せるって思ったんだ。
ホセさんにはじめて会った日、おねぼうさんが、はじめて笑ったんだ。
ぼく、はじめておねぼうさんの笑う声聞いたんだ。うれしかったんだ。
だから、ホセさんなら絶対にできるって。」
ホセ 「ちゃちゃ、ありがとう。ちゃちゃもずっと、心配していたんだね。
おねぼうさんって、ねこかかりさんのこと?ねこかかりさんって、そんなによく眠るの?」
ちゃちゃ「そうだよ。この島に着いた時、ずーと眠っていて死んでいるのかと思ったくらい。
目が覚めた突端、自分の名前まで忘れちゃてるし。だからぼくがおねぼうさんって名前付けたの。 なのにさぁ-ホセさんに会った途端に、自分の名前をねこかかりって、勝手に変えてさ。」
お昼寝丘で二人並んで楽しげに話していると、
後ろから、ねこかかりさんがあわてた様子で駆け寄ってきました。
ねこ係り「ホセさん、大変、大変なの、あ、おはようございます。あのね、」
ホセ 「はい、これでしょ。ここに落としてたよ。」
ねこ係り「わぁ。よかった。大切なものなのこの鈴。ありがとう。でも、珍しいわね。
ちゃちゃがホセさんの傍にいるなんて。 え、?もしかして、銀の鈴の秘密、知っちゃた?
やだーぁちゃちゃ、話しちゃった?」
ちゃちゃ=ねこかかりさんが、おねぼうさんってことなら話しちゃった。=
ねこ係り「あ、あれは、気を失ってただけで、わたしはおねぼうなんかじゃないわ。」
ホセ 「いいよ。おねぼうなねこかかりさん。」
ねこ係り「やだーぁ。おねぼうじゃありません。」
ちゃちゃ=おねぼうさん、もしかして、ホセさんの事、一目惚れだったりして?=
ねこ係り「ちゃちゃ、!そんなんじゃありません。」
ホセ 「そんなんってなんなの? ちゃちゃ、今なんって言ってるの?」
ねこ係り「・・・ホセさんはいいの。」
☆しあわせは…☆
お昼もすっかり過ぎて、夕焼けが綺麗にお昼寝丘を染めてゆきます。
ホセさんとねこかかりさんは、海の見える丘の上に並んで座りました。
のんびりと東の空からまん丸お月様が、やって来ました。
ホセ 「もうすぐ満月の夜がやって来るね。大丈夫だから、僕が、傍にいるよ。」
ねこ係り「うん。なんだか安心していられるわ。お月様が出ても平気。」
ホセ 「あのね。君に話しておきたい事があるんだ。僕が、東の島に来たわけを。」
ねこ係り「あ、はじめて会った日、私に会いに来たって言っていた事?」
ホセ 「そう。君に会いに来たんだ。『しあわせは、いらない・・・』って願った君の事が、知りたくて。」
ねこ係り「私が、そんなことを言ったの? 本当に? しあわせは、いらない・・・あ、あ、あ、」
しあわせと言う言葉が、ねこかかりさんの深い悲しみの扉を開けてしまったのです。
ねこかかりさんの、小さく細い肩が小刻みに震えだしました。ホセさんは、ねこかかりさんの震える肩を抱きしめたまま、話を続けました。はじめに、ペンギンの国のこと、くらげのこと、星の国の大じいさんの話、そして、悲しみに沈んでいった娘の話。
ホセ 「満月の夜は、僕の夢が叶った夜なんだ。そして、『しあわせを探しに行く。』って決めた夜なんだ。同じ満月の夜に君は、悲しみを抱えて、願った事は、僕と正反対の事・・・そんな君の事が気になって、どうしても君の気持ちを解りたかったんだ。」
ねこかかりさんは、記憶をたどる様に抱えきれない悲しみを、震える声で話ました。
ねこかかりさんのたくさんの悲しみを知ったホセさんは、ねこかかりさんの事が可哀そうでたまらなくなりました。そして、どうする事も出来なかった自分を責めました。涙になった感情は止めどなく溢れてゆきます。しばらく泣き続けたねこかかりさんは、ホセさんの腕の中で、落ち着いてきました。
ホセ 「ごめんね。君を守ってあげられなくって、君がこんなに苦しんでいる時に、傍にいてあげられなくって。」
ねこ係り「ホセさんって本当に優しい人。もっと早くあなたに出会っていれば、『しあわせは、いらない』なんて思わなかったのに・・・涙の理由が分かったわ・・・もう平気よ。私は、『しあわせは、いらない』って、
二度と思ったりしないから。」
ホセ 「ホッ。よかった。記憶を取り戻してまた海に入ちゃうんじゃないかと思ったよ。
ごめんね。きつく抱きしめて。」
ねこ係り「・・・きれいな、お月様ね。ホセさん、ちゃちゃ、みんな、ありがとう。」
☆それから☆
虹の魔法が、かかったかどうかは分かりませんが、あの日以来、ねこかかりさんは、満月の夜が来ても泣きませんでした。
それから、Pタンが、はじめたダイエットは、背負ったくらげを降ろす事からでした。
ちょと軽くなったPタンは、夢を叶えるために今日も全速力で、浜辺を走り続けています。
Pタンの背中から無理やり降ろされたくらげは、しばらくの間『理不尽や。』とすねていましたが、世話好きな、お話てるさんと仲良くなって『世界は、広いで。人生は長いで。のんびり行ったらええやん。』と結構、現状に満足している様子。
浜辺を全速力で走る太ったペンギンは、空を飛べたかって?
さぁ…どうでしょう。
ま、ともかくホセさんのしあわせ探しは、終わったようです。
何故って?
し・あ・わ・せは、ここ。
ここにあるよ。
おしまい。
ホセ・ペンギン・(=^・^=)かかり
お昼寝の時間、小さなあなた達に、話した物語。
あの頃のわくわくした気持ちを忘れないでね。