決意

あるどこかの世界の、ひとりの男の子の物語。

幸せな男の子でした。

家族、友達、先生、隣人……男の子は、皆から愛されていました。

しかし、男の子は自分が幸せであることに気付いていませんでした。

なにせ男の子には不幸を体験したことがないのですから…。

悲しみ、怒り、憎しみ、それと……どれも男の子には無縁でした。

ーーーその年までは。

でも、男の子にもひとつだけあったのです。

それは、恐怖です。

『今の生活を壊さないで。』

『みんなと離れたくない。』

『この日がいつまでも、いつまでも続けばいいのに……。』

男の子は、心の奥底では気づいていたのです。今が幸せであると…。

しかし、男の子はその考えに至るにありませんでした。

だから、この恐怖の正体が分からない男の子は、ひたすら願い続けました。

毎日、毎日……。

その祈りは、いつしか世界を少しずつ歪めていきました。

そして願いに懸ける想いの強さが増すにつれ、しだいに男の子自身にも異変が起きていました。

男の子は次第に「今」ではなく「過ぎ去った日々」だけをみるようになってしまいました。

怖くなってしまったのです。

男の子にとっては、みんながいなくなってしまう世界などいらないのです。

未来なんて希望などではなく絶望の闇でしかなかったのです。

男の子の願いによって歪みきった世界はもう限界でした。


ーーーそして、世界はーーー

決意

決意

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-18

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