冬のひまわり
大切な人は誰ですか?
今年から大学生だ。
念願だった大学に入学でき今まで以上にワクワクしている。
本当に嬉しかった。
親や学校の先生が合格するまで毎日、プレッシャーをかけられて憂鬱だった。
大学生活を楽しんでやると僕は意気込んでいた。
大学で友達ができた。
彼の名前はサトル。必須科目である中国語の授業で席が隣で知り合った。
桜が散り、ゴールデンウィークに入る前の季節は心地よい風が吹き、気持ちがいい。
お昼休み、大学の食堂で食事を食べた後、暖かい陽気に誘われて大学内にある池のベンチでサトルとアルバイトについて話をした。
「タクミ、やりたいバイト、見つかったか?」と気だるそうな表情を浮かべてサトルが聞いてきた。
「家に帰る途中にカフェがあるからそこでバイトをしようと思う。」
「へぇー、お前料理、作るの好きなの?」
「うん、好きだね。お金が貰えてカフェの料理をマスターすれば一石二鳥じゃん。」興奮しながら僕は言った。
「まあ、頑張れよ。目的があるんなら上手くいくだろう。」
「ああ、頑張るよ。サトルはバイト、どうするの?」
「俺は家庭教師をやる。三、四人位、受け持とうと思う。」
「まるで寺子屋だね。」
「おう、寺子屋だぜ。そろそろ午後の講義が始まるから行こうぜ。」
「食事後の講義は眠いけど頑張らないとね。」
ベンチから立ち上がり、二人は教室に向かった。
その日の授業が終わり、サトルと別れた後、バイトの面接を受けに行った。
僕が面接をしに行ったカフェは小さいが美味しいと評判のいいカフェだ。
面接が始まった。
面接官は笑顔が似合う若い男性だ。
志望動機や週何日、働けるか、交通手段とか聞かれてた。
面接が終わり、合否は後日、連絡すると言われて、僕はスクーターで家に帰った。
二日後の夕方に連絡がきて明日から働いてくれと言われた。
僕は小さな握りこぶしを作り、「やった」と呟いた。
明日からのバイトにワクワクしながら眠りについた。
大学の授業が終わり、バイト先のカフェに向かった。
カフェに着いたら、この前の笑顔が似合う若い男性が制服を渡してくれた。
「今日からよろしくね。最初は大変だけど慣れれば楽しいから。」と言い、地下にある男性用更衣室に案内してくれた。
「更衣室の入り口で待っているから。着替えたら声をかけて。」
「はい、分かりました。」
制服に着替えて、若い男性に声をかけた。
「着替え終わりました。遅くなりましたが今日からよろしくお願いします。」
「ああ、俺はここの店長で和久井って言うんだ。まあ、店長でも和久井さんでも呼びやすい方で呼んでくれ。」
「はい、取り敢えず店長と呼ばせてください。」
「俺は君のことをタクミと呼ぶからよろしくね。」
「はい、よろしくお願いします。」
「いい返事だ。じゃあ、スタッフを紹介するからついてきて。」
地下室から上がるとお店のフロアーに白髪混じりの渋いコックと目がくりくりしたポニーテールのウェイトレスがいる。
「今日から働く青井タクミ君だ。仲良くやってくれ。」和久井店長が言った。
「今日からお世話になります。青井タクミです。よろしくお願いします。」
「青井君、よろしく。私、工藤サオリね。私が君の教育係で色々教えてあげるからね。」
「工藤さん、よろしくお願いします。」
白髪混じりの渋い男性が
「ここのオーナーシェフで店長の親だ。しっかりと頼むぞ、青井君。仕込みがあるので詳しいことは息子やサオリちゃんにきいてくれ」と言い、厨房へ向かっていった。
「ここのお店はシェフの親父、フロアーリーダーのサオリちゃん。俺が全体を仕切っている。タクミにはフロアーや厨房での雑用中心にやってもらうから。分からないことは俺かサオリちゃんに聞いてくれ。」
「分かりました。」
「じゃあ、青井君、これからやっていこうか。」
「はい。」
カフェの仕事は思った以上に忙しく、雑用や接客等で働いている間、ずっと走り回っていた。
こうしてバイトの初日は過ぎていった。
バイトが終わり、スクーターで家路に帰りながら心の中で呟いた。
「少し舐めていたから改めて気を引き締めないとな。」
家に帰った僕は仕事に疲れたのか、風呂に入りすぐに寝てしまった。
翌日、大学でサトルと会い、近況を話した。
「タクミ、バイトどうよ。大変か?」
「ああ、思って以上に大変だね。正直、舐めていた。」
「だろうな、世の中そんなに甘くないよな。」
「サトルはバイト上手いことやっているの?」
「俺は上手いことやっているよ。とはいえ、まだ1人しか教えていないからな。あまり、偉そうなことは言えないな。」
「そっか、お互い頑張ろう。」
「そうだな」
次の講義まで時間があるのでサトルと別れた後、レポート作成用資料を探しに大学の近くにある図書館に向かった。
図書館はスクーターで10分位、走った所にある。
市が運営している小さな図書館で公園と隣接しており、桜がたくさん植えられているので花見としても利用されている。
図書館に着いた僕は資料用の本を探した。
本を見つけ出して受付で借りようとした。
電気が体に走った。体が熱くなり、心臓の鼓動が早まる。
僕はこの瞬間、恋に落ちた。
「借りるのはこの三冊でいいですか。カードを出して下さい。」とショートカットが似合い、目が凜としている受付の女性が言った。
僕は慌てて財布からカードを出して、受付の女性に渡した。
「期限は二週間なのでそれまでに返却して下さい。」
「はい、ありがとうございました。」
本を借り、終わった後も心臓がバクバクしている。
僕は初めての感情で戸惑っていて体が震えた。
冬のひまわり