旅の始まり再び

宇宙は何に涙したのだろう
そのひと粒が零れて やがて星が生まれ
私たちの旅は始まった


人は何に涙するのだろう
悲しいときや 嬉しいときも
辛いときや 悔しいときも
お腹をかかえるくらい可笑しなときにも
涙は零れたり 滲んだり


私が命の底から涙したのは
身体の目は乾いてしまっていたから
心の目から溢れた涙だけど
死の際の枕元に小さな君を見たときだった


   ――おかーさん しんじゃうの?――
    みつめる君の瞳とかたことの言葉は
   ――生きなくちゃ!――
    という想いを起こさせてくれた


それは魂がどこかに墜ちてゆくような
収縮してゆく意識を感じていたとき
そのまま意識は一旦どこかへ消えてしまったけど
「生きなくちゃ!」という
その想いがきっと命を繋いでいた


なぜ生きるのか解らないままに歩いてきてしまった旅路を
再び踏みしめ始め やり直す機会を得たのか
今もあの時の君の瞳を思い出すと 涙は命のしずくのように溢れ
それが生きる力となっている


現実の水面下にどんな働きがあるのかは
人には知ることはできないけれど
人はあらゆることに生きる意味を見い出せる


そうやって私たちは
この星を旅する
この星とともに旅をする
宇宙の心を

旅の始まり再び

宇宙=そら、と読みます。

旅の始まり再び

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-08-20

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