チェス盤の王子とガラスの小鳥

詩、のようなもの。

 ここは小さな  子供のお部屋
 とても小さな  小さな王国
 王国の中  チェス盤の上
 なぜだかポツリ  王子が一人


 チェスには王も  女王もいるが
 王子の居場所  どこにもない


 私は小鳥  ガラス細工の
 歌も歌えぬ  ちっぽけな鳥


 ガラスののどは  声を出せない
 ガラスの羽じゃ  空も飛べない


 けれども王子  あなたは言った
 君はとても  とても綺麗と


 どこもかしこも  ただ透明の
 小鳥の胸に  ポツリと赤い
 小さな小さな  ルビーの心臓


 王子は言った  とても綺麗と
 私に言った  とても綺麗と


 私は小鳥  ガラス細工の
 あなたが好きよ  小さな王子


 チェス盤の上  居場所はなくて
 けれども他の  国にも行けず
 王子はいつも  たった一人で
 王子は泣くの  たった一人で


 だから砕くよ  私の体
 ガラスだからね  すぐに砕ける
 あなたにあげる  私の心臓
 小さな小さな  ルビーの心臓
 これであなたは  ハートのジャック
 トランプの国  さあお行きなさい


 ねえどうして  ああどうして
 どうして王子  あなたは泣くの
 ああどうして  ねえどうして
 どうして王子  泣きやまないの
 あなたの涙  とめるため
 この身砕いた  はずだったのに


 王子はおりる  そのチェス盤を
 王子は行くよ  どこへ行くの


 私の欠片  手に握りしめ
 あなたは今も  流浪の王子

チェス盤の王子とガラスの小鳥

チェス盤の王子とガラスの小鳥

チェスには王の駒も女王の駒もある。けれども王子の駒はない。チェス盤の王子とガラスの小鳥の物語。

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-15

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