Sky's the Limit Online

ロボットは昔から少年達の夢である。時に戦い、ときに人を救い、ときに英雄となった。今自分がそれを操縦しているとしたら、みんなの夢であるならば、成すべきことはただ一つ。

翔べ! SFS!

第一話 オンラインゲーム

 杉村健一はゲームが好きであったが、ゲーム機を何一つ持っていなかった。親が買ってくれないというのもあったり、値段が高すぎたりと色々理由はあった。そんなときに夢のような商品が出た。パソコンに繋ぐだけで拡張現実を用いたゲームが出来る。ARGというサングラスのような機械をかければ、世界が広がる。少年たちはこれにとびつき、瞬く間にヒット商品となった。値段も安いことから、杉村健一も手に入れることができたが、肝心のゲームがまだ大したものが無く、机のすみの方に放置してあった。
 そんなある日の学校の事。下校時間をつげるチャイムがなり、健一も帰ろうとしていたとき、友人が話しかけてきた。
「なぁ健一、ARG持ってる?」
「あぁ、持ってるよ。一ヶ月ほど放置してるけど。」
「実は最近さ、俺がベータ版テストしてたゲームがあって、それが中々おもしろいんだよね。スカイズ・ザ・リミットオンラインっていうロボット戦闘ゲーなんだよ。」
健一はその話にとびついた。
「どんなゲーム。もっと教えてよ。」
「まあまあ、落ち着いて。ARのロボットの操縦桿を操って戦うんだよ。敵を倒して先に世界を征服した方の勝ち。」
「おもしろそう。今日早速アカウント作るわ。」
「OK。俺はA.I.Cっていう青色の旗の軍でショータって名前でいるから。アカウントとったらメールをよこしてくれ。」
「分かった。じゃまた今晩。」
 少年はうきうきが止らなかった。早速パソコンを開き、久しぶりにARGをつけた。やはり、世界が広がる感じはいつも心を刺激する。健一はアカウントをとり、チュートリアルを始めた。
「初めまして、エースさん。AIオーペレーターのペンドルトンです。これからチュートリアルを始めさせていただきます。」
「君は普通の人と会話もできるの?」
「はい。そのように作られております。まず、この世界の状況について説明させていただきす。現在地球はヨーロッパやアフリカ・アメリカを中心とした大陸連合(CU)とアジアや太平洋諸島を中心としたアジア諸島共同体(A.I.C)という二つの勢力にわかれて、勢力を争っております。あなたはA.I.Cのパイロットとして戦場を駆け巡っていただきます。」
「どうやって戦うの?」
「これからご説明いたします。戦闘シュミレーターに移行しますので、しばらくお待ちください。」
すると今まで自分のPC机だったのが急にコクピットに代わり始めた。椅子はがっちり固定され、自分の腰まわりにはベルトがかかっている。手のとどくところには操縦桿が作られ、足元にはアクセルペダルがある。はっ、と前を向けば広大な緑の大地が広がっているではないか。
「これは・・・・・・。」
「ARで、ロボットのコクピットを再現しています。またARGはあなたの脳とリンクしているので、操縦桿を握った感触や敵に攻撃されたときに振動を与えます。」
「えっ。それって危なくないですか。例えば椅子から落ちたりしたら。」
「心配なさらないでください。ARGはそのようなことも想定して作られてありますから、椅子から落ちたり、勢いよく操縦桿を前に飛ばして机を殴ったりすることはありません。」
 その後もエースはチュートリアルを続けた。なれない手つきでMCを動かしていた。
 ここでAIオーペレーターの言っていることを深いところまで話をしよう。石油がなくなり、水が不足し、食料が不足し始めた時代。アジアの各国々は日本を中心として世界の貧困層を守る活動を始めた。しかし、経済の関係や生活の工場のために大陸の国々は非協力的だった。ある日、EU軍が水資源を求めて南アジア地域に進行。そこを火種に世界各地で紛争が勃発。いつの間にか地球は、資源獲得と経済の安定を求めた大陸連合「CU」と貧困層の救済と平和を求めたアジア諸島共同体「A.I.C」にわかれていた。
 CUは巨大人型兵器、通称MC(マシンコマンダー)のスタルクを開発。量産され、アジア占領作戦を開始し、中国まで進行した。A.I.Cはこれに対抗するため、MCテトスを開発して防衛戦線をしいた。しかしスタルクに性能負けし、さらに戦闘機や爆撃機による爆雷の攻撃でじりじりと戦線を東に持っていかれた。
 そんな中、日本が世界最高峰のアーマー「スカイフレーム」を開発した。これはアジアでしかとれない特別な金属「スカイリウム」を用いた、硬いがとても軽いアーマーで、今まで30tもあったMCを5tまで軽くし、飛行・空中戦闘を可能にした。これにより、A.I.Cは反撃を始めた。
 一連のチュートリアルを終え、エースはショータにメールを送った。

第二話 出撃

数分してショータからメールが届いた。
『マイクと通信のスイッチを入れて。』
いわれるがままにスイッチを入れた。
「あー、あー、こちらマテリアル4。ショータ准尉でーす。エース君、応答してください。」
「ようショータ。何さっきの言い回し。」
エースは半分笑っていたが、ゲームの雰囲気にのまれるのもいいと思った。
「あいさつだよ。いづれ小隊に入ったら使うから覚えときな。さてと、チュートリアルは終わったようだし、早速実戦といきますか。」
「えっ、いきなり・・・・・・。」
「習うより慣れろ、だよ。」
昔からそうだが、健一はどうも翔太のペースにはついていけない。でも、あと一歩が足りない健一にはよい友だった。
「そういえば何でエースなんだ。」
「ああ。それは健一の『一』をとってエースだから。」
「なるほど。お前にしてはよく考えたな。」
「お前のまんまの名前よりましだ。馬鹿にしやがって。」

 いきなりの実戦ということで、手からでる汗を気にしながらミッション参戦の手続きをとっている時にエースは衝撃の事実を目にした。地球占領率、CUの85%に対し、A.I.Cはわずか15%しかない。
「ショータ。これどういうことだよ。」
「何のこと?」
「地球占領率。」
「ああ、このままだとあと二週間もすればシーズン1は終わりだろうな。」
「シーズン1が終わり?」
「このオンラインゲームには終わりがある。CUかA.I.Cのどちらかが地球占領率を100%にしたらシーズンがひとつ終わり、また新しいゲームが始まる。実はこのところA.I.Cは連戦連敗さ。」
「CUはそんなに強いの?」
ショータはちょっと黙り、悔しそうに口を開いた。
「ああ、強いぜ。やつらの量産機の性能はテトスの上をいく。それに機体も扱いやすい。初心者も多く流れるし、上級者はとてつもなく強い。俺たちがここまで追いつめられたのも、あっちにはヒーロー的存在がいるからだ。」
エースはこれを聞いて微笑した。
「いいね。おもしろそう。なんかそういうの聞くと燃えてくるわ。」
エースの目には何か輝くものがあった。
「えっ、何。萌え~って感じになるの。」
「違うわ!」

 いよいよ、発進三分前になった。操縦桿を握るエースの手がプルプル震えている。これが武者震いか、と一人で納得しているところにショータから通信が入った。
「調子はどうだ相棒。」
「何か、ゲームのくせにどきどきする。昔からロボット物は好きだったからな。こういうのやってみたかったんだ。ところで今回のマップは。」
「今回はプサン。ぼろぼろになった市街地での戦いだ。建物で滑って転ぶなよ。」
「またまたご冗談を。」
「おっ、司令官から指令がきたぞ。」
「指令?」
「画面の右に表示してあるやつ。読んでみな。」
「えっーと、『司令部Aより拠点1を占領後、敵司令部Xを攻撃』」
「む、こっちも同じだ。俺たちはマップの上のほうを東から西に攻めて行けばいい。そっちは何の機体で出るの。」
「先行量産型テトス。」
「先行量産型か。装甲がテトスより厚いが、そのぶん運動力がない。射撃武器を活かして使え。俺はテトススナイパー。強力な一撃必殺でお前の援護をするから背中は任しておけ。」
「OK。キャリア一ヶ月を信じるよ。」
「いよいよ発進だぜ。司令部の上にあるハッチから空母の戦闘機のように打ち出されるからな。」
「了解。」
「その調子その調子。」
「うるさい。」

 足場のセット完了。アナウンスが流れる。
『これから発進口まで移動します。』
足もびりびりしてきた。エースはこんなゲームを待っていた。長年何のゲーム機も持たなかった。やっとほしいものが手に入った。今自分が遊んでいることに感動していた。これから広がる世界にわくわくしながら。
『準備完了しました。』
「出力、バランスともに良好。異常なし。」
『ハッチ、開きます。出撃してください。』
「了解。」
発進信号が光る。赤・・・・・・赤・・・・・・赤・・・・・・青。
「エース二等兵、先行量産型テトス、行きます!」
おもいっきり、両レバーを前にたおす。今、エースは灰色の空に飛び込んでいった。

第三話 初陣

 ゲームのくせに恐ろしいほどGがかかる。ハッチを飛びだした先には煙で灰色になった空と崩れ落ちたビルや瓦礫の大地が広がっていた。
 ブースターをふかせながらゆっくり着地した。レーダーではすでにマップ上中央の拠点を占領した味方が端の敵司令部に向かって進軍しているのが分かる。状況を確認しながら前進する先行量産型テトスの乗り手はまだまわりを見渡しながらゆっくり前進していることに緊張していた。手から微量の汗が吹き出る。
「よっ、エース。調子はどうだ。」
「なんかわくわくする。味方の背中を追ってるだけでも楽しい。」
「まあ、最初はそんなもんだよ。あとで地獄を見ることになるがな。」
「えっ、どういうこと。」
「よそ見するなよ。あと300mもいったところは前線だ。」
「あっ、拠点の旗が変わりかけてる。」
「ちっ、早いな。開始一分でこれかよ。今日は多分『英雄』がいるぜ。早く拠点を奪取しに行ってこい。」
「えっ、そんな。すぐ戦えるわけ・・・・・・。」
「いいから行け。お前の半径500mにはいるから。ほら、あの崩れたビルを抜けたところが拠点だ。」
仕方ない。ここは腹をくくるところだ。思い切っていっきに拠点に突っ込んだ。途端、バズーカ弾がこっちに向いてまっすぐとんできた。ブースターをふかし、右の小路に走り込む。自分の後ろですぐ爆発があり、少々吹き飛んだ。
「大丈夫か、エース。」
「なんとか。アーマー値がちょっと減った。」
「すぐ後ろを向け。敵がくるぞ。」
「わかってる!」
振り向きざまに敵を視界に捉えたテトスはビームマガジンを構える。すかさずこっちに向かって来る敵にありったけ撃ち込んだ。が、威力が低いのか相手のスタルクのアーマー値が高いのか、中々ひるまない。それでもエースは撃ちつづけた。
「そのまま引きつけてろ!」
ショータの通信からすぐスタルクの横っ腹に弾丸が撃ち抜かれた。エース機の目の前にスタルクが倒れ、そのまま爆破した。
「た、助かった・・・・・・。」
「だからいっただろ。安心して戦えって。次はな、その角を曲がったら拠点のちょっと奥にたくさん敵がたまってる。そっちもバズーカ砲に切り替えて、敵を蹴散らせ。」
「分かった。やってみる。」
今度は落ち着いて味方拠点に降り注ぐ銃弾を交わしながら、前線に向かった。奥の敵機に狙いを定める。
「うぉーーー。くらえぇぇーーー。」
思いっきりバズーカを発射する。まっすぐ伸びていった弾はそのまま敵一機のアーマーをぶち壊し撃破した。
「やった。初撃破。」
「よそ見するなぁ。」
途端、飛び出してきたスタルクがマシンガンを連射。蜂の巣になったエースの機体は大破した。
「うわぁぁぁ・・・・・・。」
「だからいったのに。やられたら一分間待機だからな。」
「はい・・・・・・。次から気をつけます。」
何事も調子にのるものではない、特に戦場では。ということをエースは悟った。

無茶

 再出撃後レーダーを確認してみる。すでに真ん中の拠点はとられ、軍隊アリのように敵機が作戦本部に迫っている。すぐに防衛に向かった。
「エース、俺のところまでこい。」
すぐにショータのところに向かうと、狙撃系と救助系が集合していた。
「いいか、あの正面のビルのおくからスタルクがうじゃうじゃ出てくる。重撃系はビルの上からバズを打ち込み、前衛を援護するんだ。」
「了解。」
「いくらスナイパーでもあんなにいたらキリがない。まとめて撃破してしまえ。」
「よっしゃっ!」
すかさずビルの上にいき、他の機体と大群にパズを撃ち込む。にしても数が多すぎる。倒しても倒しても数は減らない。それどころか、前線は押し返されている。
「だめだ。もうちょつと前にでないとバズが避けられ始めている。前に出るから援護よろしく。」
「待て。今のお前じゃ、相手の射撃は愚か格闘も避けられないんだぞ。はっきり言って足手まといだ。」
「前の強襲系は押し返されてる。どのみちこのままなら危ない。それなら!」
エースはすぐしたの路地におりた。建物を挟んだ向こうは広場がある。そこにバズを撃ち込めば少しはなんとかなるかもしれない。左へまわり、相手の様子を伺う。広場に出てくることは分かるが、見通しが悪いため、どこから出てくるのか、分からない。頼りはレーダーのみ。前衛は全滅してしまったようだ。
「後退しろ。防衛ラインを下げて確実にしとめる。」
「今下げたら津波のように敵がやってくるぞ。すこしでもじかんを稼ぐ。」
爆発音がした。レーダーが消える。設置されていたレーダーが破壊された。敵はもうそこまで来ている。一か八かだ。三・・・・・・二・・・・・・一・・・・・・。
 エースののった初期テトスが広場に出る。しめた。向こう側の道は細い。くらえば10秒は稼げる。横殴りの雨を盾で必死にかばいながら
「バスーカ全弾発射!」
残り五つを向こうに打ち込む。
「急いで後退しろ。」
スラスターをふかしながら急いで後退する。マシンガンの雨は止まない。それでもわずかながら助かっているのは、ショータたちがしっかりスナイパーの仕事をしているからだろう。しかし、もうすぐスラスターのしよう時間ががきれる。盾も限界だ。間に合え。
 なんとか抜けて、作戦本部前までたどり着いた。細い路地と、不意なバスーカの攻撃で敵は十秒間の足止めをくらったようだ。
 川を挟んだ本部前には大勢集結している。
「大丈夫か。」
「盾が壊れた。・・・・・・危なかった。」
「バカ。そこは『大丈夫だ。問題ない。』だろ。」
冗談が言い合えるのもまた、生きていた証拠である。
「無茶しやがって。当初はここの最終防衛ラインで敵を袋叩きにするつもりだったんだ。」
川前の広場は多数の地雷で覆い尽くされ、修理トーチと引き下がった重撃系が揃っていた。
「あと40秒あれば、さっき全滅した前衛の機体が戻ってくる。それまでもたせるぞ。」
エースのおかげで準備は整ったようだ。

Sky's the Limit Online

Sky's the Limit Online

ARGと呼ばれる拡張現実を用いたゲーム機が開発され、少年たちはゲームに夢中。 その中に「SLO ~Sky's the Limit Online~」というリアルロボット戦闘オンラインゲームがあり、友人の誘いで杉村健一(ゲーム名:エース)もオンラインゲームを始める。 しかし、このゲームには世界の裏の陰謀が隠されていた。

  • 小説
  • 短編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-14

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 第一話 オンラインゲーム
  2. 第二話 出撃
  3. 第三話 初陣
  4. 無茶