Lost Memory〜失った記憶

一作品目『扉の向こう』の登場人物『宮嶋 葛』の過去の物語。
幸せだった頃の話

扉の先の歪んだ世界

気が付いたら私は、扉の前に立っていた。
どうやら自分の家の玄関らしい。しかし周りには何もなく、あるのは目の前にある扉だけ。
私は、静かに扉を開けた…

Memory

カーテンの隙間から零れた日が顔をぬらす。その柔らかな日を浴びて目が覚めた。
今日は、土曜日。予定は未定。
私はあくびのした後、大きく伸びをした。
「ん…8:00か…」
いつもより起きる時間が遅いが休みの日だからたまにはいいか。
しばらくベットの上に座りながらぼーっとする。
「お腹すいた…」
と呟き寝室を出た。
部屋には、誰もいない。一人暮らしのため引っ越してきてまだ1年ちょっと、その為部屋は綺麗だ。
少し寝ぼけながら、簡単な朝食を済ませる。
「あー、今日ホント暇だな。」
11時頃電話がかかってきた。
「こんな時間に誰だろ…」
と呟きながら携帯を取る。
「おはよ、葛ちゃん」
「あ、あきちゃん。おはよ」
私があきちゃんと呼んだ男は、こう言った。
「今日暇かな?」
その彼の言葉に今日ついてるかもと思いながら私は彼の誘いに乗った。
それから出かける準備をして、彼を待った。

~~………~~

これが私の彼氏と過ごした最後である。

鏡に映る割れた月

……冬……

一人大学からの帰り道、私は俯きながら歩いている。
『あんたバカじゃないの!』『わ、私だってちゃんと考えてるんだよ!』
こんな記憶が蘇る。今日、友達と喧嘩してしまった。
「私はバカだな…」
この呟きは、静かに降る雪の中に消えていった。
その中私の泣き声だけが目立つ、願わくば私の泣き声、いや私自身もこの雪で真っ白に消えてしまえばいい
気付いたら家についていた。明日学校に行きづらい
「もう今日はいいや。寝よ」
色んな想いから逃げるようにベットに潜り込んだ。

明日、鏡の前には目の赤い自分の姿が映った。
今日学校行くのがつらい。でも仲直りしないともっとつらくなる。意を決して学校に向かう
教室に入ると友達の視線が突き刺さる。
「ご、ごめんなさい」
少し怯んでしまったが勇気を出して謝った。
「うちこそ、むきになってごめんな」
「ちょ、ま、お前なんで泣いてんだよ」
安心したのか気付いたら私は泣いていた。
こうして今日学校生活は、泣きに笑いで終わった。

……秋……

少し肌寒い日私はバイトを終えたあと家に帰る途中電話がかかってきた。
rrrrrrr…「はい、宮嶋です。」
「あ、宮嶋さん五十嵐だけどちょっと話があって電話したんだけど」
電話の相手は私と同じクラスの男子でちょっと気になっている人でもあった。
私は嬉しさを隠してこう聞いた。
「五十嵐くん?なに?」
「えーと、明日空いてる?ちょっと話したいんだけど…だめかな?」
「うん!大丈夫!」
嬉しさが漏れ出して大きな声が出てしまった。
「じゃ、明日の午後1時に公園で」
「じゃ、明日ね」
とお互いに挨拶をして電話を切る。
やった!!そう言って走って家に帰った。

明日11:00
落ち着かない
「どんな服着て行こうかなー」
そんなに種類もない服をクローゼットから引っ張り出し鏡の前に立つ
でもやっぱりいつも通り少し地味な服を選んでしまった。
13:00前くらい
例の公園で待っていると彼がやってきた。
「ごめん待った?」
「いや、私も今来たとこです。」
とザ・王道の会話の後お互い照れくさくなったの言葉が消えた。
「少し歩こうか」
楓の色づく並木道を歩く。
「僕と付き合ってくれませんか」
彼がそう言った瞬間、時間が止まったように感じた。
楓に染まる空の下で…

空に浮かぶ逆さ月

……夏……

「あづーい」そんな事を吐きながら二人歩く。
「ほら、頑張って」
と彼の声が聞こえる。
「うーん、待ってよーあきちゃーん」
前にいる晶となぜか元気な友達志乃
「志乃ーなんでそんな元気なのー」
と隣の友人瑠美が言う。全くその通りである。
「もうちょっとなんだから頑張りなよ。葛はともかく瑠美は」
「なんで私だけ」とこの暑さの中ふざけあっている。海までは、もう少しだ。
「「うおーー海きたー」」
海が見えた瞬間みんなの声がそろった。私たちは、瑠美の親の別荘に泊まりに来ていた。
海が近いため夏休みにピッタリだった。

「あー楽しかったーホントありがとね。瑠美」
「いやいや、一人で来ても仕方ないし、別にいいよ。」
「おーいバーベキューの準備出来たよー」
こうして今日が終わった。
0:00少し前
一通のメールが来た。届人は晶
『外に出てきてくれない』とのこと
「あきちゃんどしたの?」
「いや星がきれいだったから一緒に見たいなーなんて」
そんな感じで二人きり照れ喜び星を見た。
満点の星の下で

……春……

春の陽気が気持ちがいい
私一人家でまったりしている。
「・・・眠い・・・。」
今は、11時こんなのでいいのだろうか。全くやる気が出ない。
rrrr…
電話がかかってきた。
「んー誰ー」
めんどくさいなーと思いながら携帯を取ると、よく知っている声だった。
「あ、葛今何してる?」
それを聞くといきなり眠気が覚めた。
「いや何もしてないけど、あきちゃんこそどうしたの?」
少し期待しながら私は、返事を求める。
「今日暇なら車でどこかに行かないか聞こうと思って、でどう?」
「ドライブ‼暇です、とても暇です」
「じゃあ、昼ぐらいに迎えにいくわ。」
と少し笑いながら晶が言う。今日もいい一日になりそうだ。
外には、桜が舞っていた。

逆さ桜

ピンポーンとインターフォンの音がする。
「はーい」と言いながら扉を開ける。
扉を開けると「きたよ。準備出来てる?」と晶が言った。
「出来てるよ」と返す。今日は、張り切って服を選んだけど大丈夫だろうか。
綺麗に整っていて落ち着いた服装、派手ではなくどちらかというと少し地味だ。
それを晶は自然に褒めた。1時間かけて選んだ甲斐があった。
「じゃあ、行こっか。」
家の前に車に乗った。向かう先は、桜が見れて人のいないところ

少し山を登ると、はっきり桜が見えてきた。
「わー綺麗」
彼はその言葉に微笑みながら運転している。
いきなり目の前に黒い何かが現れた。その次に私たちは、強い衝撃を受けた。
気が付くと、車は木にぶつかっていた。
私は、運が良かったのか車から投げ出されていた。
私は、座ってボーっとしている。脳震盪や状況を把握出来ないからだろう。
我に返ると、気が付いた。
「あきちゃん!」
呼んでも彼は返事をしない。彼はまだ車の中にいた。車は大破している。
焦りながらも思い出したかのように、救急車を呼んだ。何も出来る事がなかった。
救急車が来て、彼を車から出した。傷が大きい。
辺りは、桜が止むことはなく降り続けている。
紅い桜が舞っていた。

Last Story

彼が死んでから、1年と少し。私の生活も落ち着いてきて、それでとても静かになった。
毎日が暇で、何もすることがない。
とあるSNSの友達にゲームに誘われた。
暇だしいいだろう。と思いゲームに参加した。

土曜日
『えーと、それじゃあ自己紹介から』…そんな感じで、ゲームが始まった。
プレイしていく内に奇妙な事がおきた。ゲームキーパーが落ちた。
次に私たちの玄関からノックとチャイムが鳴る。
インターフォンで外を確認すると、いないはずの彼が立っていた。
「…ッ!」
声さえ出なかったが、嬉しいと感じたかもしれない。
『葛さんは、何が見えましたか?』
とパソコンから声がする。
「…か、彼氏でした。ハハハ…」
思っていたより乾いた声が出た。
私は玄関に向かう。
予想だが、あれは彼に化けた何がだろう。あの時、彼の前に現れた黒いもの。
きっとそうだろうと思いドアノブに力が入る。静かに開けると、それが立っていた。
「…ありがとう…」
私はそれにそういうと、幕を下ろした。

Lost Memory〜失った記憶

なぜ彼女は扉を開けたのか、最後にあんな事を言ったのか。
一作品目で急に消えてしまった葛の気持ちを考えながら作りました。

Lost Memory〜失った記憶

なぜ彼女は扉を開けたのか、最後にあんな事を言ったのか。一作品目『扉の向こう』の登場人物『宮嶋 葛』の過去の物語。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-13

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 扉の先の歪んだ世界
  2. Memory
  3. 鏡に映る割れた月
  4. 空に浮かぶ逆さ月
  5. 逆さ桜
  6. Last Story