おじさんと少年 Ⅲ
「で?お前が俺に何の用だよ?」
「いや・・・その・・・頼みたいことがあるんだ・・・」
「ぁあん?お前が俺に頼みごとなんて、ずいぶん偉くなったもんだな」
「・・・お願いします、お兄様」
ここは、兄の家だ。
僕は今、兄に頼みごとをしている最中だ。
もちろん、少年の夢のために。
*
ー三日前ー
「おじさん、これ、アコースティックギターじゃない!?どうしておじさんが持ってるの?え、もしかして、おじさんもギター弾けるの?」
少年の目がキラキラ輝いている。
最近の少年はとてもイキイキしている。
笑顔もたくさん見せてくれるようになり、出会ってから一週間ほどが過ぎようとしていた。
「い、いや・・・それはね・・・僕のじゃなくって・・・えっと、何ていえばいいのかな・・・。えっと・・・それはね・・・僕の兄のものなんだ・・・」
「お兄さん!!」
うらやましいな~とでも思っているのだろう。
僕の兄は悪魔みたいな人だ。
怖いの一言に尽きる。
「そのギター勝手につかっていいよ」
「いいの!?」
「というかあげちゃう。兄さんはそのギター使わないから」
「・・・お兄さんって、何か音楽関係の仕事をしてるの?」
「・・・えっと・・・んと・・・その・・・」
「・・・?」
「"ハヤト"っていう・・・歌手・・・しってる?」
「うん!!僕、あの人ほんっとに好き!歌詞も本当に良い歌詞だし、歌声も透き通ってるし、僕の憧れ!!笑顔も素敵だよね!!」
笑顔が・・・素敵・・・?
あの・・・
あの"悪魔"の笑顔が・・・素敵・・・?
「ハヤトがどうかしたの?」
「ん、いや、なんでもないよ」
僕の兄は・・・ハヤトは・・・
悪魔だ。
*
「お願いします!!あいつをプロデュースしてあげてください!!」
「で、その小僧の実力はどうなんだよ?」
「実力って・・・?」
「だーかーらっ!そいつはどんぐらいできるやつなんだよ?俺の弟なんだからそんぐらいわかるだろ?」
「・・・聞いてないからわかんないや」
「・・・・・・わかった、俺が直接見てやる。お前はココにいろよ?すぐ帰ってくるから待ってろ」
「は?」
「だから、俺がお前んちに行って、そいつの実力見極めてやんよ」
「は!?今!?」
「お前は来るなよ?めんどくせえから」
「え、ちょ」
「じゃ、そゆことで」
「え、まっ・・・」
ガチャ。
・・・鍵を閉められた。
「大丈夫かな・・・あの子・・・」
兄が出て行ってから2時間が経過しようとしていた。
ガチャ、と扉の開く音がした。
「兄さん!あの子は・・・?」
「あー、もう家に帰っていいぜ、お前」
あれ?
「え」
「つーか早く帰れ」
「え、あ、う、うん・・・?で、でも・・・」
「帰れっつってんだよこのチビ」
「チッ・・・ビ!?」
よくわからないまま部屋を追い出された。
おじさんと少年 Ⅲ
今回は少年とおじさんⅢのほうがメインなのでこっちは短めです。
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