憎しみの巡礼

憎しみの巡礼

1984年エリス・ピーターズ著

修道士カドフェルシリーズ第10作目。
とうとう2桁に来たか。
私のライフワークになりつつある、このカドフェルシリーズ。

今作はそのカドフェルシリーズの集大成ともいうべき作品になっています。
冒頭で語られる昔話。
第1作目 聖女の遺骨求む と第6作目 氷のなかの処女 に出てくるエピソードです。
氷のなかの処女ではカドフェルの家族である、東方の騎士が出てきます。
今作でその男が再び登場。
カドフェルとどうからむのか、楽しみですね。

今作が展開する時期は1141年の5月から6月にかけての、とても良い季節です。
緑が生い茂り、エンドウ豆の収穫などがあるようで。
カドフェルの畑もなにやら賑やかです。

前作で州執行長官のプレストコートが殺害されたため、今作ではヒューが執行長官となりました。おめでとう!w
しかし情勢は女帝モードの側に有利となり、スティーブン王側のヒューは気が気ではありません。

そんな中、開かれた聖ウィニフレッドの祭。
そこで起きた奇跡。
その内容はここでは書きませんが、カドフェルはその奇跡について、あまり意見を表明してません。
珍しいですね。
いろいろな事件にはすぐに口を出すカドフェルですが、聖職者としての仕事にはあまり口を出しません。
カドフェルの身の置き方がなんとなく垣間見れる出来事でした。

物語の鍵は本書のタイトルどおり、憎しみの巡礼です。
ふたりの若い巡礼者の秘密とはなんなのか…。
憎しみの巡礼の意味とは?
これがメインテーマです。
そしてカドフェルとオリヴィエの関係は進展するのか?

今作ではヒューに秘密を打ち明けてばかりのカドフェルです。
ヒューを信頼してのことですが、いままで黙ってたのにねぇ。
ヒューは今回はあまり活躍することもなく、淡々としてます。
オリヴィエとヒューの関係もおもしろい。

過去と現在が交錯する展開はさすがですね。
前作を読んでる読者は懐かしく楽しめるでしょう。

次回作は「秘跡」です。
スティーブンとモードがどうなるのか、楽しみです。
ヒューがどこまで出世するかも楽しみですね。
貴族は出世が許された身分ですので。

今作でヒューが「生まれが平民でもあなたみたいに非凡な人物が出ることもあるのだからな!」とカドフェルに言うシーンがありますが、平民か貴族かは進む道は違っても、人の質には関係のないことですからね。
平民でも幸せになれることをこの作品を読んでると思えます。

憎しみの巡礼

憎しみの巡礼

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-11

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