夏の淡歌集
大震災後の夏の短歌集です。
1 七夕祭り
いにしえの想いを辿る夏の夕
ひと踏み毎に下駄を鳴らして
カラコロと鳴る下駄の音。
馬車の鈴の音のようにゆっくりと心運ぶ。
2 七夕飾り
星と成る 御霊に祈る 夏祭り
千万の鶴 旅立ちは直
お盆に迎え送られる御霊は如何に多いことだろうか
敢えて小さな折り紙で沢山の鶴を折られた七夕飾りが心に残りました。
3 宴の空に
盆迎え 五月が過ぎ 祭らえる
宴の空に 散りゆく御霊
七夕祭りは仙台の活気を取り戻すかのように、波に呑まれた命を弔うように、賑わった。
明るく賑やかに照らす夜空。
人々の願いは深く、静かに、しかし脈々と復興を成して行く。
4 真夏の電子便
汗滲む 真夏の朝に *認める
空高く往く 電子の手紙
*認(したた)める
熱帯夜、そして真夏日となる朝。
寝不足の頭で朝一番に送る電子メール。
5 美しい雨
灼熱の 大地に天は 水を打つ
夕空渡す 虹の架け橋
暑くうだるような炎天下、上昇気流は雨雲を呼び香りと伴に夕立を降らす。
天からの打ち水
神様は虹の架け橋を渡って帰ってゆきました
とさ
6 本鐘の音
去ると決め ふと足停めた 木の下で
夕滲み入る あの鐘の音
待つことに耐えかねた家路の途、進まぬ足をとめた木陰は想い出の場所。
聞き馴染んだ鐘の音に夕焼けが滲む。
7 腹が決める
叶わぬと 決めるのは我 他では無く
全てが手中 腹に落とせば
出来ないことを思う。出来ない現実を創ってるのは意識、想念。
やると腹が決めれば、その通りになる。
8 おとぎの世界
目覚めては 開いて起こす 二枚貝
呪文を叩けば 魔法の鏡
日々当たり前のようにネットを通して繋がる仮想空間
手にしてるのは、子供の頃のお伽噺やSFの世界。
夏の淡歌集