赤吹雪~伊吹山編 16章~
要は、浅野を殺しに行った。
その時、浅野は、いったい何をしているのか。
浅野に訪れた惨劇を、目撃せよ!
2月16日(水)午後11時30分
僕は自分の部屋である7号室のベッドに戻りこれまでのことを振り返りつつ明確にするために紙にメモをとっていた。
粧裕は腕が見つかってから、ずっと寝込んでいる。もともと粧裕のためのスキー旅行だったのに、これでは粧裕が可哀想だ。
僕も粧裕も知らないうちに、母親がスキー場のホテルを予約してくれた。
僕はスキーは久しぶりだし、東大に合格したので、久しぶりの息抜きにどうだろうということ。
二人で一緒に行ってきなさいとのことだ。
全てを話した時に要さんが言っていたが、このホテルの中に氷柱がいるかもしれないこと。そして、個人情報不詳。つまり、男かも知れないということだ。
もしかしたら要くんかもしれないし、彩さんかもしれない。
……この二人は氷柱じゃない。
まず、あり得ない。
腕が見つかった。
小出ゲンドウを*したのは、氷柱だろう。
……コツ…コツ…コツ…カチャッ
その時、ドアが開いた。
廊下のドアがゆっくりと開けられた。
もうこんな時間だ。消灯しているし、
とてつもなく暗い。
そこにいる「誰か」は廊下を歩いている。
そして、リビングへと入って行った。
僕は、それが何をしたいのか、すぐに分かった。
何者かが、殺しにきている!!!!
僕は身の安全を確保するため、どこかに隠れることにした。
トイレの裏側のスペースなら、ギリギリ入ることができた。僕は、そこでじっと待っていた。
大石さんは元からここに住んでいる。殺しに来る必要はない。
恐らく……氷柱。
人をたくさん*した殺人鬼が今、この部屋にいる。
氷柱らしき人物は、再び廊下を歩き出した。
そして、トイレの前でピタッと止まった。
トイレの戸を開ける。その頃には僕の目も暗闇に慣れていた。今なら分かる。相手の位置も正確に分かる。
もちろん相手の顔も分かるだろう。
そう思った時、トイレの裏側に隠れている僕を、逆さ女の様な格好で見つめている氷柱がいた。
「浅野く~ん。見ぃ~つけたぁ~。
アハハハハハハハハハハハ……」
そこにいる人物は、氷柱とは思いたくない人物だった。
その手にあるナイフは、隠れている僕を正確に捉えていた。
「う…あ…うわあぁああぁあああ!!」
僕は誤ってリビングの方に逃げてしまった。こっちは行き止まりか…
さっきの攻撃で手を切られてしまったらしい。手が熱い。手が痛い。
氷柱はじりじりと僕に寄ってきている。そして、床にホースで水を撒いている。氷柱の手には……スタンガンと、ナイフ。この部屋の床にはマットが敷いてあるから、水は一気に浸透して、じきに僕の足元に来るだろう。そこで、スタンガン。スタンガンで僕を一時停止にして、ナイフで止めといったところか。
暗闇に慣れたから間違いない。
あれは……あの顔は……
「……君だったのか…氷柱ってのは。
でも、なんで僕を殺す必要がある!」
「君を殺す理由?
君こそどういうつもりだ?
お前こそが、氷柱じゃないか。」
なんだ!?
何を言っているのか全く理解できない!!!!
「まずは動かないようにしないとね。」
靴下には水が染み付いていた。気づいた時には、僕は足から床に倒れこんでいた。気を失うことは無かったものの、両足が全くといって良いほど動かない。
少しずつ、氷柱が歩いてくる。
……最後に、彩さんにのみメッセージを書こう。場所は僕の体の下だ。こんな暗闇の中なら、氷柱も気がつかない。今しかない。こいつの名前を時計の中に入れておこう。この紙の有りかを、僕の体の下に書くことにした。自分の血で。
もう、僕以外の被害者が出ない様に。
カーペットがぐしゃぐしゃという音をたてて、氷柱が来た。
「さようなら、浅野さん。
あははははははははははははは…」
その手にある包丁は、氷柱の手から僕の左胸に刺さり、僕はもう…動けな……。
「ちくしょ…う…ごめ…ん…粧裕…。」
頼む、誰か教えてくれ。
「あと*さなきゃダメなのは…妹さんだったかな?そうだな。兄弟別々なのは可哀想だからな。お前の隣で明日には粧裕ちゃんも寝転んでるよ。くくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」
なんで……………
要さんが…………
僕を殺しに来たんだ!!!!!!!!
赤吹雪~伊吹山編 16章~
要、精神の死。
もう、終わりが近い。
要も、この断然された世界も。
Thank you for reading!