赤吹雪~伊吹山編 13章~
さぁ、要はどうなっていくと思う?
助かるか?
助からないか?
それは、誰にも分からない。
しかし、要以外の皆は分かるだろう。
もう、彼には破滅しかないと。
2月16日(水)午前8時30分
「あの……帰った方が良いって…
どういうことですか…?」
「あの放送の内容聞いてないのか?」
式が僕に尋ねる。
「うん…声がよく聞こえなかったんだよ。」
すると、浅野さんは一つのメモをくれた。紙には、さっきの放送の内容と思われるものが書かれていた。
「連絡します。てぶ・ろのおと・ものです。こ・・げん・う・ん、お・び・あかいて・くろのおと・ものがござ・・す・こ・ろあたりの・るかたは、いっかいの・けつ・までおこ・・ださい。」
これがヒントになるのだろうか。
ひとまず、メモだけってことは、
考えろってことなんだろう。
こうしてメモを眺めていると、鮮花達が集まってきた。
大石さんもいつの間にか帰ってきていて、手元にはあの箱が置いてある。
今からあの箱を開けるのだろう。
「では、せっかくなので開けてみましょうか。」
そう大石さんが言ったとたん、浅野さんと彩は、苦虫を噛み締めたような顔をしてこちらを見ている。
浅野さんは一歩前に出て、
「……大石さん…僕も一緒に開けて良いでしょうか?」
浅野さんが大石さんに尋ねている。
「ええ…良いですが…何かあったみたいですね。」
「はい。何が入っているのかすでに検討はついています。」
そして、二人は、その箱を開けた。
大石さんは一気に青ざめていた。
浅野は予想通りだったのか、顔色はあまり変わっていない。
そして静かにその箱を閉めた。
「何が入ってたの?☆」
鮮花が浅野さんと大石さんの間に乱入した。
「おいバカ!!見るな!!」
そんな浅野さんの忠告も聞かず、鮮花は箱を開けた。
「あ…う…うわぁあああぁあぁあ!!」
と叫んだ後、その箱を閉め、こちらに突き飛ばしてきた。鮮花は地面にうずくまり、むせこんでいる。
「ゲホッゲホォ…ハァ…うぇぇ……」
「あっ、鮮花!?大丈夫!?」
粧裕さんと莉奈が鮮花に駆け寄る。
鮮花に飛ばされた箱は僕の目の前で蓋を開けた。
その箱の中に入っていたのは…腕。
携帯電話を持ったまま、固まっている
腕。それは触るとひんやりとしていて、携帯電話には可愛らしい人形がくっついていた。その携帯電話は主人がもう居ないのを知らないように、メールの着信を知らせていた。
写真を入れるキーホルダーの中身は
その持ち主と思われる人の顔が塗りつぶされていた。
周りに敷いてあるクッションには血が付いており、さっきまで外にあったせいか、固まってしまっている。
僕は僕の日常の破壊を感じた。
でも、何でだろう。
僕には、ここにいる誰かが持ってきたとしか思えなくなってしまった。
そうだよ。僕じゃない。
僕は無関係だ!
やっぱりそうだ!
世界がおかしい!
俺は狂ってなんかない!
赤吹雪~伊吹山編 13章~
要の疑心暗鬼を
さらに加速させた腕。
要が電車内で聞いたラジオの、
「伊藤 誠」とは何か関係があるのでしょうか?
それについては、13章でお会いしましょう。
Thank you for reading!