握る

あなたは、大事なものしっかりと握っていますか?

握る

私には1人の妻と1人の娘が居た。

ある日、家族で森林浴に出掛けた。

水も空気も綺麗で、小鳥の鳴き声や川のせせらぎに癒やされていると、娘が突如こんなことを言い出した。

「父さん、手をつなごう。」

二十歳の娘と手をつなぐのは何だか恥ずかしく。

私は「え~。別につながなくていいだろう~。」

と答えた。

次の日の朝、ドドドドド! と大きな足跡が聞こえた。

娘を起こしに言った妻が慌てた様子で、「玲子がいない!」

私は驚いた、昨日まで楽しく家族で森林浴に行った後もあって、親子間は上手くいっているそう思っていた。

置き手紙には、「大切なものはしっかりと握っとかないと、離れちゃうよ・・・。」

と書いてあった。

私は昨日の娘の言葉を思い出した。
「父さん、手をつなごう。」

あの時、手をつながなかったことで何か娘を傷つけてしまったのか・・・。

警察にも捜索依頼を出して。娘を捜したが、娘は見つかることがなかった。

私は後悔していた。
あの時、なぜ手を握らなかった・・・。

娘は何かに苦しんでいた。なぜわかってやれなかった。

私の大切なものを思う甘さが、娘を傷つけた。

大切な人はしっかりと握っていなきゃいけないことを私は痛感していた・・・。

握る

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-09

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