赤吹雪~伊吹山編 12章~

赤吹雪~伊吹山編 12章~

要、彩に敵対心を持つ。
要、自分を正常者と感じる。
要、周囲から差別されていると感じる。



要、堕ちる。

2月16日(水)午前7時50分

「おはようございます皆さん。
突然ですが、この箱に何か覚えのある人はいますか?」
大石さんが皆に尋ねる。

しかし、誰も手を挙げようとはしなかった。

「……わかりました。では、朝ごはんにしましょうか。皆さん、食堂に移ってください。
この箱は、後で皆さんの前で開けてみましょう。」

そして僕達は食堂に向かった。

朝ごはんはイワナの塩焼きや、またもや山菜料理が並んでいた。

「よかったね、彩。山菜料理だよ。」
喜んでくれるだろうか。

「イワナは骨があって少し嫌いなんだけど。」

……ぐすん。

そういえば鮮花にバラバラ事件のことを……今言うと殴られそうだ。

そんな調子で朝ごはんは終わった。

僕と彩と浅野さんは早く食べ終わり、談話室でゆっくりと待つことにした。

……この人になら、バラバラ事件のことを話しても大丈夫な気がする。
「浅野さん、少し良いですか?」

「……どうしましたか?」

「愛知県で起こったバラバラ事件、
……どう思いますか?」

浅野さんは、少し以外そうな顔をしてから、

「僕も気になっています。しかし、今の状態では何とも言えません。
とにかく、自分に関係の無いことを
願うのみです。」

……この人に、全てを話そう。
彩も、そういう顔をしてこちらを見ている。

「あの…今の話とは関係ない話かもしれませんが、良いですか?」

「……まぁ良いですが…何ですか?」

「僕達は、ここに来る時にラジオと
ケータイテレビを見ていたんです。
でも、大垣市でいきなりラジオとテレビが切れたんです。初めはテレビが切れたんだと思います。そのあと、ラジオが砂嵐になったんです。
……ラジオの切れかたは異常でした。
徐々に切れるのではなく、いきなり
ブツッと切れたんです。
……次に、ここのスキー場で僕と鮮花
が手袋を2つ拾ったんですけど、両方とも重なって、しかも左右揃って落ちてたんです。」

「そんなことがあったんですか。」

「…彩は今日になれば分かるって言ってたんですけど…どう?分かった?」

彩は首を左右に振った。
と思ったが、次の瞬間、彩はすぐに立ち上がり、スピーカーのそばに駆け寄った。
「……来る。」

※以下はスピーカーの内容。

「ーー……ー連絡します。
てぶ…ろのおと…ものです。こ……げん…う…ん、お…び……あかいて…くろのおと…ものがご…います…こ…ろあたりの…るかたは、いっかいの…けつ…までおこ…ださい。」

スピーカーの調子が悪いのか、カラッカラの大石さんの声が聞こえた。
内容はよく分からなかったから、後で鮮花に聞こう。

すると、彩がやって来て、周囲に誰もいないかの確認をした。
そして、
「今すぐにでも帰った方が良い。」
と言った。

……え?
「ああ、僕もそう思う。大石さんを含めた全員、帰った方が良い。」
浅野さんまでそんなことを言い出した。

どうなってるんだ?

何デ、
僕以外ノ皆ハ聞コエテ、
僕ダケ聞コエナインダ?

……………………………くそっ

なんで皆ばっかり聞こえるんだ
まさか、俺以外にしか聞こえないようにした!?
とすれば、僕は何らかに嵌められている
いや、大丈夫だ。僕は消えない。
そうだ。誰かによって消されるなんて、
僕にはあり得ない!
僕は……正常者だ!!!!
間違っているのは世界だ!!!!

赤吹雪~伊吹山編 12章~

要はもう、終わりだ。

要は疑心暗鬼に陥った。

「赤吹雪」はこれで大体5分の2位でしょうか。
疑心暗鬼に取りつかれた要を、最後まで見逃すな!

赤吹雪~伊吹山編 12章~

要は堕ちていった 堕ちて堕ちて堕ちて堕ちて、 いずれは穴の底へと堕ちるだろう。 穴から這い出そうとするが、 その穴からは決して出られない。 何故なら、異常者は自分が異常と 気がつかないまま、 死の穴へ堕ちたのだから。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-09

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