赤吹雪~伊吹山編 11章~

赤吹雪~伊吹山編 11章~

要は、もう助からない。
ただ、落ちて行くのみ。
それほど、断絶された世界は落としていく。

2月16日(水)午前7時00分

僕達は一階の談話室で朝食を待っていた。

しばらくすると大石さんがやって来た。手には何か大きな箱を持っている。

「おはようございます皆さん。今日はバスと電車の両方が運休、しかも
スキー場も雪崩の危険があるため、お休みするそうです。なので可哀想な皆さんのために、今日の宿泊費は無料となります。」

皆がほっとした表情を浮かべる。
「え~。まだこのホテルにいるの?」
咲里さんがそんなことをぼやいていた。

何てことだ。スキーどころかバスと電車まで使えないなんて。今日はこのホテルに一日中いることになる。

「ところで皆さん。こちらのホテルの
玄関にこんなものが置いてありましたが、心当たりはありませんか?」

大石さんが持っている箱は、ごく普通のダンボールで出来た、40センチ四方の箱だった。

「え~っと、店長さん。宛先とか、送った人の名前は書いてないんですか?」

そう質問したのは大久保さん(兄)。
もしかして、家族からのプレゼントという可能性でも考えたのだろうか。

「いえいえ、それがですねぇ。
宛先とか書いてないんですよ。これ。」

そのダンボール箱は、蓋が閉められてガムテープが張られただけ。

「ダンボールってことは、忘れ物って可能性は低いですね。そんなに大きい箱なのですし、忘れたら気がつくはずです。あと、そんなに大きい箱だったら誰でも気がつきますし、置かれたのは今日か、昨日の晩でしょうか。」

桂川さんが、携帯ゲーム機をいじりながら話している。
桂川さんは学校でもゲーム機を授業中にいじっているほどであるが、成績は体育以外はトップクラスらしい。
推理力も相当ありそうだ。
……ただ、校外学習のバスに乗り遅れるってなんだ。

「皆さんおはようございます~。」

莉奈さんが降りてきた。
また、莉奈さんのあとに続いて桐野。
そして浅野さんとその妹さん。この人達は一緒の部屋にいたみたいだ。

「要さん。おはようございます。」
霧絵が話しかけてきた。
「おはようございます。浅野さん達と何かしてたのですか?」

「え~っと、私は見てただけなんだけど、5番の部屋で一緒にトランプをしてたみたいですね~。
浅野さんがすごい神経衰弱がうまくて
、皆負けちゃってました~。」

さすが国公立主席合格者だ。暗記は得意なのかもしれない。

「おはようございます、皆さん。
ところで、店長さん。この箱は何ですか?」
浅野さんが尋ねる。

「ああ、それはですねえ。今朝ホテルの前に落ちてたんですよ。誰のものかわからないので、ひとまず全員集まって確認してから開けようかと。
ちなみに私の名前は大石です。気軽に話しかけてくれて良いですよ。元刑事とはいえ、定年退職した老いぼれですからねぇ。んっふっふっふ!!」

浅野さんは少し悩んでから、
「…時計などのカチカチ音はしませんでしたか?」と言った。

「カチカチ音……?」
思わず浅野さんに尋ねてしまった。

「はい。こういった場合の荷物には、爆弾が仕掛けられている可能性がありますので…。」
その言葉に皆が箱から身を離す。
僕も、つい恐れて大きく後ろに下がってしまった。

「ああ、それなら私が見つけたときにチェックしておきました。特に異常は無いですよ。それにしても浅野さん!
やりますねぇ。初めからそれを考えるとは!んっふっふっふ!」

「いえいえ、経験豊富な貴方ほどではないですよ。」

皆ではっはっはと笑っていると、他の人達も全員集まってきた。
僕は、どうしても笑えなかった。
彩は笑っていた。
何故かその時は嬉しくなかった。
そうだ。逆に腹がたったんだ。

赤吹雪~伊吹山編 11章~

要は完全に疑心暗鬼に取りつかれました。
例えるのなら、
ひぐら○の前原○一とかですかね。

この世界は雛見○症候群とかは無いんで、
喉は引っ掻きません!

それは保証します!

赤吹雪~伊吹山編 11章~

浅野の余計な一言で、 要はもう戻れなくなってしまった。 穴の上から戻れなくなったものは、 ただ落ちるしか無いように、 彼もまた、疑心暗鬼に突き進むしか 無かったのだ…

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-09

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