赤吹雪~伊吹山編 8章~
僕は、彩に頼まれたことを実行するのみ。
真実を、暴け。
2月15日(火)午後8時20分
「……ちょっと待て、要。少しだけ話がある。」
彩の方から話があるとは珍しい。
「どうしたの?」
「これから談話室にいくんだろ?
だったら、店長に二つお願いをしてきてくれ。」
「別にいいけど、どうして?」
「……これでやっとはっきりする。
まず、一つ目。
さっきの手袋に名前があるかどうかだけ調べてくれ。黒い方だ。
外を見てきたいんだけど、自分のは中が濡れている と言えば借りられるだろうな。この作戦が失敗したら、無理してとってきて貰わないで良い。
二つ目は、このあたりの電波局の電波の届く範囲の地図。これは出来るだけ詳しいものが良い。」
「二つ目は僕も気になるけど、一つ目はどうして?」
「……重要さで言えば二つ目の方が高いけど……あの手袋も鮮花が持ってきた時、中が濡れていたんだ。
説明は省くが、あの手袋も昨日から
落ちていたことになる。
……同じ様な場所で、しかも二つとも
落とし主は故意に落としたのなら、
あからさまにおかしい。
ってことで、よろしく頼む。
……そういえば、何で二つ目が重要かわかってる?」
「いや……何であそこで電波が切れたのかなって。」
彩は、(コイツ何もわかってないな…)
という目でこちらを見ている。
失敬な。
「…あの切れ方はさ、おかしすぎるんだよ。ラジオだったら普通は徐々に砂嵐が多くなって来るのに、いきなり
ブツッっと切れた。
だから、その地図が必要なんだ。
もし、隣のタワーが電波局だとして、大垣まで届いていたとしたら?」
もし、届いていたら……
「……あの時、誰かが電波局の回線を
切った……?」
「そうゆうこと。
あとは明日になればわかるぞ。」
「ん…じゃあ、なんで部屋のラジオは使えたんだろ?」
「あのラジオは有線だろ?
まぁ、あのラジオも回線が切られたせいで
ブツッと切れたんだろうが……
とりあえずよろしく頼むわ。
さっき外を見てみたんたけど、
すごい吹雪だったから、ひょっとしたら明日はスキーは出来ないかもな。
正直寝たいんだけど、一応お前が帰って来るまで待っててやるよ。」
そして僕はココアを持ってくるのを口実に、店長に尋ねてみることにした。
僕は、さっきそんなことを頼まれていた。
今僕が写しているのは、タワーの電波がどれくらい届いているのかを示した紙だ。
ようやく書き終わると、店長は
うとうとしていた。
「…あの…ありがとうございました。
ついでに名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
これは本当についで。
頼まれてはいない。
「ん……ええ、私の名前は、大石恭介と言います。元々は刑事でしたよ。
ふぁ~、眠い。」
これでホテルに泊まっている人全員の名前を調べられた。
「大石さん、今日はありがとうございました。」
「いえいえ、お客様が満足なさるのが一番ですよ。では、ゆっくりと。」
大石さんはニカッと笑うと、飲みかけのコーヒーを飲みほした。
「ああそれと、もうじき電気が消えますので、お早めに戻ってください。」
「ありがとうございます。」
こうして僕は、彩の待っている部屋へと帰った。
赤吹雪~伊吹山編 8章~
ガールフレンド(仮)がやっと本調子を出してきた、高校1年生です。
物語はやっと、「サスペンス」と言える所までせまって来ました。
今までは、序章って役割が無いだろ!って思っていた人、やっと役割が出てきました。
黒崎は、この物語の道筋で惨劇を避けられず、破滅してしまいます。
あなたはこの物語の一員なのです。
どうか、あなたに惨劇が訪れないように。
Thank you for reading!