万物流転
仕様もないナンセンスギャグ。ほんとに仕様もない。
文章も適当なら、内容もない。
ストレス発散に書いたものであるので、お許しください。
2013/1/12
万物流転
突然の地響き、轟く咆哮。巨大怪獣〝ぽっぽ〟がやって来た。無闇に街を破壊し、人を喰らうぽっぽは、一躍有名になった。
マスコミは話題性のあるいいネタだと追い回したが、街を破壊された人々にしてみれば、いい迷惑である。そんな人々を見兼ねた政府は、遂に、重い腰を上げた。しかし残念ながら、何日間にも及ぶ国会が開かれるも名案は浮かばず、最終的には衆議院を解散して一件落着と決め付けてしまった。
これではいけないと立ち上がったのは、最初にぽっぽがやって来た街の地元商店街の組合の会長の息子、太郎君だった。
「ぼくが、ぽっぽをやっつけてみせる」
これには、地元商店街の組合の構成員達も大喜び。早速、寂れた商店街の存続と活性化をかけたキャンペーンが始まった。ついでに、もし太郎君がぽっぽをやっつけてくれれば、文句は何もない。それをきっかけに観光客の誘致だって可能になるかも知れないのだ。
太郎君は街の人達に煽てられてぽっぽ退治の少年、第二の桃太郎として全国的に有名になった。なったはいいが、具体的にどうするというつもりはなかったし、何より桃太郎という称号はなんとも幼稚な感じがして好かなかった。そこで、長年ヒーローの研究をしているという科学者の知り合い、Xへ手紙を書いた。
>拝啓 今年も新たな巨大怪獣とそれに対応する新たなヒーローが生まれる季節となりましたが、如何お過ごしでしょうか。ぼくはテレビのバラエティー番組に出演するなど、このところ有名になりました。
さて、この度お手紙を書かせていただいたのは、決してぼくの活躍を自慢するためではなく、そんな意図はまるでなく、ある相談があったからです。その相談というのが、率直に申し上げますと、ぼくをヒーローにしていただきたいのです。桃太郎は確かに名前も被っていますし、ヒーローかもしれませんが、正直ダサいので、ぼくは納得いかないのです。ですから、ぼくをもっと近代的な、いや寧ろ前衛的なヒーローにして下さい。もしできないのであれば…できないのであれば、あれです。
是非、お願いします。 敬具
X様 時の人、太郎
追伸 …何か伝えることがあった気がしますが、忘れました。
この手紙は、科学者Xへ届く前に、あるバラエティー番組の企画で使われてしまったが為に、全国(一部の地域を除く)の人間に公開されてしまったが、最終的には科学者Xへ届き、幸い科学者Xはそのバラエティー番組を見ていなかったので、素直な返事が帰って来た。但し、科学者Xも後から取材を受けたので、後に手紙が公開されていた事を知ることになるが、知った後でも、これと言ったコメントはなかった。
>うん、いいよ。ヒーローにしちゃる。
太郎君の長い手紙に対して、あまりに短い手紙が返って来たのに、太郎君自身面食らってしまった。具体的な方法や返事を期待した太郎君は、いっその事、直接会って話す方が早いと見て、太郎君は科学者Xの元へ向かった。
科学者Xは相変わらず陽気な人物であった。
「やあやあ、太郎君。お久しぶり。君、ヒーローになりたいんだろ? 俺がしちゃる。安心しなさい」
なんだか、とても頼もしい心持ちがした。
「えぇ、是非ともお願いします」
「じゃあ、まずは俺の弟子になるんだな」
「へぇ、なるほど。ヒーローにも師弟関係があるんですか」
「勿論だ。俺はこの道35年のベテランだからな」
「そんなに! それは頼もしい。きっと数え切れない数のヒーローを研究なさったのでしょう」
「いや、2人だけだ」
「量より質、ですね」
「まぁそんなところだ」
こうして、太郎君は科学者Xの弟子になった。この事はマスコミに大きく取り上げられるも、地元では何の利益にもならないと、商店街の組合員らには不評だった。太郎君の父親は、会長という立場上、責任を持って、我が子を勘当した。しかし、これは太郎君には痛くも痒くもない出来事だった。
太郎君のヒーロー修行は難航を極めた。
「俺は最近気付いたんだが、ヒーローってのは悪いやつをやっつけて、人に感謝される存在なんだ」
「えぇ、そうでしょう」
「なんだ、太郎君は知ってたか。じゃあ、俺が教えてやれることはもうないな」
「そうですか。残念だなぁ」
「よし、これで君もヒーローだ」
その日だけで、72回目のやり取りだ。この傾向は、太郎君が弟子入りしてから、3ヶ月近く続けられた。マスコミに取り上げられることも少なくなり、ついにその日の73回目のやり取りの途中で、太郎君は痺れを切らしてこう言った。
「それ以外の講釈を願いたいのですが」
返事は簡単だった。
「ない」
それを聞いて、太郎君は別段落胆する気色もなく、
「お世話になりました」
と、飄々と科学者Xの元を去った。
地元に帰還した太郎君を待ち受けていたのは、報道陣の群れだった。商店街の人々は、太郎君が報道陣を引きつれて来たことを喜び、太郎君は歓迎された。父親との仲は至極当然のように修復され、周りの人々にも違和感なく受け入れられた。
「ヒーローにはなれたんですか?」
報道陣の問いかけに、太郎君は自信を持って答えた。
「えぇ、もちろんです」
「今後、どういった活躍をしてゆくつもりですか?」
「まずは、巨大怪獣ぽっぽの退治です」
ここで、報道陣は一様に子首を傾げた。
「ここ最近、ニュース等見られました?」
「いえ、修行に勤しんでおりましたので」
「ぽっぽはもう、帰りましたよ」
そう、太郎君が弟子入りしてヒーロー修行に勤しんでいる最中、衆議院議員選挙が行われ、発足した新内閣は平和的解決を最優先とし、話し合いの結果すんなりとぽっぽは故郷へ帰って行ったのだった。
「それじゃ、ぼくは平和的解決を第一に掲げた、前衛的なヒーローを目指し、日々精進して行きます」
ストロボの嵐が太郎君を取り巻いた。
世間の流行に即対応する事、これ即ちヒーローの極意なり。
万物流転
2013/1/12
ちゃーりー・けい
空虚な歌手、空虚な絵師、空虚な作曲家、空虚な作家。仕事のくせをして芸術的自己表現の追及を怠るプロの芸術家は一体何を考えているのだろうか。技法や、技術や、娯楽や、快楽に気をとられ、単に自己顕示欲のみに従い、自分なりの芸術性を追求しない芸術家は全く持って自分たちと同じに空虚である。そんなものは、今の世の中、何処にでもある。しかし、それだから自分は自分が無能だと、言いきることができるともいえる。