じもふ! No,0

あくまでもフィクションですからね。
でも、都会に憧れるのもいいけど、田舎もいいなと思うよ。
自分の住んでいるのは、都会と田舎の間(?)なんだけどね。
by作者

〜大介中3の夏より〜

中学校3年生の夏祭り。野木原大介は、3日前に彼女と別れた少し残念な友達森谷哲彦と一緒に屋台を巡っていた。
「なぁ。あれ見ろよ。」
哲彦が指さす先を見ると、
「懲りないな。未練もくそもないんだな。フられたなら自重しろ。浴衣美人に気を取られるなんて…」
思わず最低な友達を軽蔑する。が、
「おうおうほっとけ!どうせ俺なんざ…」
どうやら、フられたことに少なからずダメージを受けたようで、
「にしても何でこんな田舎に美女がくるんだ!」
もう八つ当たりだ。
「祭りなんだから仕方ないじゃん。お前、人の楽しむという自由を否定するな。」
「けっ!俺は絶対にこんな地元から離れたいね。誰が自由時間にこんなところ…俺は平野部の学校に行くんだ。こんな山々に囲まれた街には懲り懲りだ。今や平野部こそ…」
みんなそういう。なんで平野部に憧れるのだろうか?ここも悪くないと思う。いや…悪くないじゃない…良いんだ。なのに…
「哲彦。そこまで平野部にこだわるのか?」
大介と哲彦は立ち止まる。
「ここじゃあダメなのか?」
「ダメなんだ。」
「どうして…」
大介は哲彦と今まで一緒だった。幼稚園からずっと。だから今まで通り一緒にいたい。でも哲彦は平野部の学校を希望し、大介は地元の中央高校を希望した。
哲彦は大介を呆れた眼差しで捉え、
「あのな〜大介〜…みんなお前の親父さんみたいに私営の自転車屋をやってるわけじゃねぇんだ。お前は親父さんの店を継げる。でもな?俺の親父はサラリーマンだ。継ぐなんてできない。だから自分でどうにかしなきゃいけない。」
大介もそれは分かっている。しかし、だから平野部に行くのか?そこが理解できず疑問だ。
「大介って本当に顔に出るな。理解できないなら教えてやる。知ってるか?ここってハイシャロウ社ぐらいしか求人がない。だけど、平野部に行けば多くの企業が軒を連ねてるんだ。選びたい放題だ!それにハイシャロウ社は年々赤字でいつ潰れるのかもわかんない。お前の店もハイシャロウ社の商品取り扱ってんならわかるだろ?」
分かっている。ハイシャロウ社とは、国内自転車メーカーの大手で本部をここにおいている企業。この街の住人の10人に1人はここの社員だ。うちの店も全商品の5割はハイシャロウ社の製品が占めている。それなのに売上高は海外企業の方が上だ。
「大介。俺と平野部に行こうぜ。お前と一緒に俺だって行きたいさ。親父さんの店を継ぐなら高校卒業したらここに帰ってこればいい。な?」
哲彦の思いも同じ。そのことに喜びを感じ、そして一度は大介も平野部の学校に行くことを考えた。…けど、
「ごめん哲彦。僕さ、あそこでしか叶えられないことがあるんだ。だから…」
そう、大介には中央高校へ行く目的があった。これだけは他校じゃ叶えられない。あそこでしか無理なのだ。
「地元復興部か?お前は…本当にここが好きなんだな…」
地元復興部。この地の者なら誰もが知っている中央高校の部活だ。地元を愛する者の集まりであり、大介の憧れである。憧れる理由には、いろいろとあるのだが、一番の理由はこの街を胸張って大好きだと言える彼らが眩しく感じたからだ。地元の若者はみんなしてここはダメだっていう中で堂々としている。大介もこの街が好きだから、いつか彼らと一緒に街を盛り上げたい。ずいぶん前からそう思っていた。
哲彦が歩き出す。今までずっと同じ道を歩いてきた友との別れのように大介は感じた。でもこの思いだけは、哲彦への思いよりも高みにあった。
「あぁ…僕はここが大好きだ。」
いつかまた友と一緒の道を歩けることを信じて哲彦の後を追うのだった。

夏祭りから幾分の時が流れ、同じ中学の友達の多くがこの街を離れていった。そして…
「1年2組の野木原大介です。精一杯頑張りたいと思います。」
大介は憧れの地元復興部に足を踏み入れたのだった。

じもふ! No,0

初投稿作品です。
えーと…これは主人公の中3を少し書きました。
次回から高校生です。

じもふ! No,0

山に囲まれた街。この地の若者たちは都会に憧れ街を離れていき、過疎化が進んでいる。ただ進んでいるだけで深刻化はしていない。 街の北東部に位置する唯一の高等学校《中央高校》。全校生徒約360人ほどの普通科の学校だ。山々に囲まれているため地方からやってくる生徒はほとんどいなかった。しかし元々この高校は、30年前は全校生徒約1200人いた。地方からもたくさんの生徒がきていた。これはこの街がどれだけ栄えていたかは安易に想像できるだろう。そしてどれだけ落ちぶれたかも。いや、落ちぶれたというよりかは平野部が栄えていったのが原因かもしれない。 そんな高校にある時、この街を愛する者達がつくった部活がある。その名も《地元復興部》と言い、この街を盛り上げようとする部活である。 街の人々はその部を期待と親しみを込めて《じもふ》と呼んだ。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-08-07

CC BY
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